かつてオーストラリアの放送市場において、特定のニーズを持つ視聴者に特化したサービスを展開していたSelecTV。英語を第一言語としない移民の方々やリタイア世代に向けて、低コストで高品質なコンテンツを提供することを目指したこの企業の歩みは、市場競争の厳しさとニッチ戦略の難しさを物語っています。

Key Facts

  • 2003年にメルボルンでi-view Broadcastingとして設立され、後にSelecTVへ社名変更。
  • 非英語圏の住民や高齢者向けに低価格なプレミアムコンテンツを提供。
  • WIN Corporationが段階的に買収し、完全子会社化。
  • 最大で40以上のチャンネルを展開し、多言語パッケージを運用。
  • 2011年に多額の債務を抱え、自主管理手続きを経てサービス終了。

サービスの誕生と戦略的展開

SelecTVの原点は、2003年10月に元Foxtel CEOのジム・ブロムフィールド氏がメルボルンで設立した「i-view Broadcasting Pty, Ltd」にあります。その後、2005年10月に現在の「SelecTV Broadcasting Limited」へと名称を変更しました。

同社が掲げた戦略は、大手放送局がカバーしきれないスペシャリスト市場へのアプローチでした。具体的には、英語以外の言語を母国語とするオーストラリア居住者や、リタイア後の生活を楽しむ層に対し、比較的安価な料金体系でプレミアムコンテンツを提供することに注力しました。

資本提携と事業の拡大

急成長の可能性を見出したWIN Corporationは、2006年8月に2,300万ドルを投じて同社の株式50.1%を取得し、経営権を掌握しました。同年4月時点での加入者数は約2,000人と小規模でしたが、業界最大手のFoxtelに対抗すべく、WIN Corporationは同年10月に残りの株式49.9%をAccess Providersから買い取り、完全子会社化を完了させました。

この資本強化により、提供チャンネルは40以上に拡大。英語圏のチャンネルに加え、ギリシャ語、スペイン語、イタリア語、ドイツ語、ベトナム語といった多様な言語パッケージを展開し、多文化社会であるオーストラリアの需要を取り込もうと試みました。

衰退への転換点とサービスの縮小

しかし、多言語戦略は順調には進みませんでした。2009年までには、加入者の低迷によりドイツ語とベトナム語の番組提供を断念せざるを得なくなります。

2010年6月時点での加入者数は約45,000人に達していましたが、目標としていた80,000人には遠く及びませんでした。英語サービスの拡充を図ったものの状況は改善せず、同年8月には英語番組の放送を11月15日をもって終了することを発表しました。

他社への移行と資産売却

英語サービスの終了に伴い、2010年8月20日にはFoxtelおよびAustarとの合意に至り、約22,000人の英語サービス利用者が追加費用なしでこれらのサービスへ移行できるよう手配されました。また、言語パッケージの切り売りも始まり、イタリア語番組はWorld Media Internationalへ、スペイン語番組はUBI World TVへそれぞれ売却されました。

企業の終焉

最終的にギリシャ語のパッケージのみを提供し続けていたSelecTVでしたが、2011年2月4日に自主管理(voluntary administration)を申請しました。翌2月7日の債権者集会では、2,600万ドルという巨額の負債が明らかとなり、オーストラリアにおける同社のサブスクリプションサービスは完全に幕を閉じました。

項目 詳細
設立年 2003年10月(i-view Broadcastingとして)
主要ターゲット 非英語圏の住民、リタイア世代
最大展開言語 英語、ギリシャ語、スペイン語、イタリア語、ドイツ語、ベトナム語
最大加入者数 約45,000人(2010年6月時点)
最終的な負債額 2,600万ドル
サービス終了 2011年

Frequently Asked Questions

SelecTVはどのような目的で設立されましたか?

英語を第一言語としない人々やリタイア世代などの特定の市場セグメントに対し、低コストでプレミアムなコンテンツを提供することを目的として設立されました。

WIN Corporationはいつ、どのように関与しましたか?

2006年8月に50.1%の株式を2,300万ドルで取得して経営権を得て、同年10月には残りの株式をすべて取得し完全子会社化しました。

なぜ多くの言語チャンネルを廃止したのですか?

主に加入者数が目標に届かなかったためです。2009年にはドイツ語とベトナム語の放送を停止し、その後イタリア語やスペイン語の番組も他社へ売却されました。

サービス終了時の状況はどうでしたか?

2011年2月に自主管理手続きに入り、債権者集会で2,600万ドルの負債が判明したことで、サービスは完全に終了しました。

英語サービスの利用者はどうなったのでしょうか?

2010年8月の合意により、約22,000人の英語サービス加入者は、追加料金なしでFoxtelやAustarのサービスへ移行することが可能となりました。