School for Advanced Research (SAR) の歴史と役割:人類学と芸術の世界的拠点

アメリカ合衆国ニューメキシコ州サンタフェに位置するSchool for Advanced Research (SAR)は、人類学、社会科学、そして人文学における高度な研究を推進する私立の研究センターです。1907年の創立以来、アメリカ南西部の文化遺産の保護から始まり、現在は世界的な視点から学術研究や芸術活動を支援する機関へと進化を遂げました。

SARは、学者やアーティスト向けのレジデンス・フェローシップの提供や、SAR Pressを通じた学術書の出版など、多角的なアプローチで知識の深化と文化の継承に寄与しています。

Key Facts

  • 創立年: 1907年(当初はSchool of American Archaeologyとして設立)
  • 所在地: アメリカ合衆国ニューメキシコ州サンタフェ
  • 主要目的: 人類学および関連する社会科学・人文学の高度な研究促進、およびネイティブアメリカンの学者・芸術家の支援
  • 主な活動: 研究フェローシップの提供、学術出版、専門的なセミナーの開催、文化遺産の保存
  • 重要拠点: 1973年より、かつての芸術家の集い場であった「El Delirio」をキャンパスとして利用

設立の背景と初期の歩み

20世紀初頭、考古学はまだ発展途上の分野でした。人類学者であり民族誌研究者のアリス・カニンガム・フレッチャーは、アメリカ南西部独自の文化遺産を研究し、専門的な考古学者の育成を行う「アメリカ主義」的なセンターの設立を構想しました。

この構想に共鳴したのが、教育者でありアマチュア考古学者のエドガー・リー・ヒューエットです。ヒューエットは、メサベルデ国立公園の創設や1906年の古物法(Antiquities Act)の成立に尽力した人物として知られています。1907年12月、アメリカ考古学研究所(AIA)の承認を得て「School of American Archaeology (SAA)」が誕生し、ヒューエットがディレクターに、フレッチャーが運営委員会の初代委員長に就任しました。

Edgar Lee Hewett, president of New Mexico Normal University in 1898

研究範囲の拡大と名称変更

当初、本校はニューメキシコ準州政府から提供された「総督の宮殿(Palace of the Governors)」に拠点を置き、ニューメキシコ博物館とも密接に連携していました。1917年には、考古学のみならず「人間科学」全般の研究や芸術の振興へと目的を広げるため、名称をSchool of American Researchへと変更しました。

初期の活動では、パハリート高原のプエブロ遺跡などの発掘調査に注力し、多くの著名な考古学者がここでのフィールドワークを通じて研鑽を積みました。また、メキシコやグアテマラ、南米での調査や、ニューメキシコ州内のスペイン伝道所(ミッション)の保存活動も主導しました。

Pueblo del Arroyo, Chaco Canyon, New Mexico

ネイティブアメリカン芸術への貢献

SARは、学術的な調査だけでなく、南西部の先住民による芸術的伝統の保存と振興に深く関わってきました。ヒューエットやケネス・M・チャップマンらは、先住民アーティストにスタジオ施設を提供し、彼らの作品を収集・展示することで、個々の才能と伝統的な美学を世に広めました。

マリア・マルティネスやフレッド・カボティなどの著名なアーティストがSARの支援を受け、1922年には現在の「サンタフェ・インディアンマーケット」の前身となる第1回南西部インディアンフェアを開催しました。

現代への転換とグローバル化

1946年のヒューエット没後、一時的に活動が停滞しましたが、1967年に就任したダグラス・W・シュワルツによって新たな時代が始まりました。シュワルツは、研究の視点を世界規模へと広げ、人文学全般へのアプローチを強化しました。

1973年には、芸術家や知識人の社交場であったアドベ造りの邸宅「El Delirio」を譲り受け、現在のキャンパスとして整備しました。これにより、1968年に始まった「高度セミナープログラム」や1972年からの「レジデント・スカラー・プログラム」などの体制が整い、世界中から研究者が集まる環境が構築されました。

Spiral at the School for Advanced Research, May 2007

21世紀の展開と現在の取り組み

2007年の創立100周年を機に、社会科学および人文学におけるグローバルな支援体制をより明確にするため、名称を現在のSchool for Advanced Research (SAR)に変更しました。近年の取り組みとしては、女性の経済的・社会的エンパワーメントを支援する「キャンベル・プログラム」や、先住民との共同研究・展示プロジェクトなどが挙げられます。

現在は、マイケル・F・ブラウン総裁のリーダーシップのもと、文化人類学的な視点から先住民の文化財保護や、不適切な流用(アプロプリエーション)の防止といった現代的な課題にも取り組んでいます。

SARの主要プログラム概要

SARが提供する主な学術・文化支援プログラム
プログラム名 概要 主な目的
レジデンス・フェローシップ 学者やネイティブアーティストへの滞在支援 集中した研究および創作活動の提供
高度セミナー / 短期セミナー 専門的な学術討論会の開催 最新の知見の共有と学術的成果の創出
SAR Press 学術書およびノンフィクションの出版 研究成果の普及と記録の保存
J.I. Staley Prize 優れた人類学書籍への年次賞 人類学分野における卓越した研究の表彰
インターンシップ ネイティブ学生向けのキャリア支援 博物館や学術界での専門職育成

Frequently Asked Questions

SARはどのような組織ですか?

ニューメキシコ州サンタフェにある私立の研究センターで、人類学、社会科学、人文学の高度な研究を支援し、特にネイティブアメリカンの文化と芸術の保存・振興に力を入れています。

名称が何度も変更されているのはなぜですか?

設立当初の「School of American Archaeology」から、研究範囲を広げて「School of American Research」へ、そして2007年には世界的な学術支援の役割を明確にするため「School for Advanced Research」へと変更されました。これは、組織の使命が地域的な考古学からグローバルな人文学へと拡大したことを反映しています。

どのような人がSARを利用できますか?

主に高度な研究を行う学者や、創作活動を行うネイティブアーティストがフェローシップを通じて利用しています。また、一般向けには講義やフィールドトリップ、教育用ウェブサイトなどのアウトリーチ活動も提供されています。

SAR Pressではどのような本が出版されていますか?

高度セミナーなどのプログラムから得られた学術的な成果や、人類学・社会科学に関する専門的なノンフィクション書籍を出版しています。

ネイティブアメリカンの芸術に対してどのような支援を行っていますか?

アーティストへのレジデンス提供、作品の収集・展示、そしてインディアンマーケットの先駆けとなるフェアの開催などを通じて、伝統的な美学の継承と現代的な表現活動を支援しています。