英国における看護職の地位向上と専門性の確立を担う王立看護大学(Royal College of Nursing, RCN)は、単なる学術機関ではなく、登録労働組合としての側面も持つ強力な専門職団体です。看護師のみならず、学生やヘルスケアアシスタント、退職者までを幅広く包摂し、英国全土の看護現場を支える基盤となっています。
現在はチャールズ3世国王がパトロンを務めており、その歴史的な権威と現代的な労働権利の保護という二つの役割を同時に果たしています。
Key Facts
- 設立: 1916年3月27日(前身はCollege of Nursing Ltd)
- 正体: 英国の登録労働組合および看護職の専門職団体
- 会員数: 589,717名(2024年時点)
- 本部: ロンドン、キャベンディッシュ・スクエア
- 主な活動: 看護教育の推進、労働条件の改善、専門性の認定、政策提言
RCNの歴史的展開と発展
創設期の理念と拡大
RCNは1916年、サラ・スウィフト夫人とアーサー・スタンレー氏らの主導により、34名のメンバーで発足しました。当時の主な目的は、看護教育の標準化、カリキュラムの統一、そして看護師の資格登録制度の確立にありました。当初は登録看護師のみに限定され、男性看護師や特定の専門分野(精神科や小児科など)の看護師は除外されていましたが、時代と共にその門戸を広げていきました。
特にスコットランドでの展開においては、アニー・ウォーレン・ギルが尽力し、地域支部を設立することで会員数を飛躍的に増加させました。また、第一次世界大戦後の看護師不足を見据え、既婚女性の会員資格を認めるなどの柔軟な対応も行われました。
組織の制度化と社会的影響
1928年に王室勅許状(Royal Charter)を授与されたことで、組織としての地位が強固になりました。1939年には現在の「王立看護大学(Royal College of Nursing)」へと名称を変更しています。20世紀半ばには、公的部門における男女同一賃金の実現に向けたキャンペーンを展開し、1955年には政府による段階的な導入合意を勝ち取るなど、社会的な権利獲得に大きく貢献しました。
1974年には、看護師の給与と労働条件に関する報告書をまとめ、政府に働きかけた結果、平均33%の賃金上昇を実現させた実績を持ちます。その後、1977年には正式に労働組合として登録されました。

現代における活動と課題
21世紀の組織運営と論争
現代のRCNは、専門職としての誇りと労働者の権利保護の間で複雑な舵取りを続けています。2018年には給与合意に関する説明不足から、最高責任者の辞任や評議会への不信任案が可決されるなどの混乱もありましたが、組織の刷新を図りながら運営を継続しています。
NHSストライキと賃金交渉
近年、最も注目されたのは2022年から2023年にかけてのNHS(国民保健サービス)ストライキへの参加です。RCNは、2010年からの緊縮財政により看護師の実質賃金が20%低下したと主張し、インフレ率に5%を上乗せした賃金引き上げを要求しました。これは組織の106年の歴史の中で、英国全土規模で実施された初のストライキ投票となりました。
組織構造と知的資産
ガバナンス体制
RCNの運営は、17名の選出メンバーで構成される評議会(Council)によって行われています。これには地域代表だけでなく、学生会員や看護サポートワーカーの代表も含まれており、多様な視点が反映される仕組みとなっています。
学術的リソースと栄誉
ロンドンの本部に併設された図書館は、ロンドン健康・医学博物館グループの一員であり、1950年代から2010年代までの看護論文を1,000本以上収蔵するスタインバーグ・コレクションなどの貴重な資料を保有しています。また、看護界への卓越した貢献を称え、厳選された少数の人物に「フェローシップ(特別会員)」を授与しています。

また、会員向けにオンライン出版物である『RCN Magazine』(旧RCN Bulletin)を発行し、最新の情報共有を行っています。
RCN 概要まとめ
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 設立年 | 1916年(王室勅許状授与は1928年) |
| 現在のパトロン | チャールズ3世国王 |
| 会員構成 | 登録看護師、学生看護師、ヘルスケアアシスタント、退職者 |
| 主要出版物 | RCN Magazine, Nursing Standard |
| 本部の所在地 | ロンドン、キャベンディッシュ・スクエア(グレードII指定建築物) |
Frequently Asked Questions
RCNは大学のような教育機関ですか?
名称に「大学(College)」と付いていますが、学位を授与する一般的な大学ではなく、看護職の専門性を高めるための専門職団体および労働組合です。教育基準の策定やトレーニングの推進を行っています。
誰が会員になることができますか?
主に登録看護師が中心ですが、看護学生やヘルスケアアシスタントも加入可能です。また、退職した看護職の方には、費用を抑えた退職者向け会員カテゴリーが用意されています。
労働組合としての役割は何ですか?
看護師の賃金交渉、労働時間の改善、職場環境の整備など、会員の権利を守るための活動を行っています。近年ではNHSの賃金改善を求めてストライキを主導したことでも知られています。
RCNのフェローシップとは何ですか?
看護職への極めて顕著な貢献が認められた人物にのみ授与される栄誉ある称号です。看護職以外や海外の専門家には「名誉フェローシップ」が授与されることがあります。
本部はどこにありますか?
ロンドンのキャベンディッシュ・スクエアにあり、歴史的なグレードII指定建築物を利用しています。ここには図書館やアーカイブなどの知的資産も集約されています。
References
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- "RCM AR21 Form for the year ending 31 December 2024" (PDF). gov.uk. Retrieved 12 September 2025.
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