プロフェッショナル・ホッケー記者協会(PHWA)の役割と歴史
北米のアイスホッケー界において、メディアの権利を守り、質の高い報道を支えている組織がプロフェッショナル・ホッケー記者協会(PHWA)です。新聞、雑誌、ウェブサイトなどで活動する専門記者たちで構成されるこの協会は、単なる親睦団体ではなく、NHL(ナショナルホッケーリーグ)の権威ある賞の選出や、記者の取材環境の改善に深く関わっています。
Key Facts
- 設立:1967年(当初はナショナルホッケーリーグ記者協会として発足)
- 規模:約180名の投票権を持つメンバーで構成
- 主な役割:NHLの主要個人賞の選出およびメディアの取材権の保護
- 目的:世界中でホッケーをカバーする北米メディアのアクセス向上と権利維持
NHLアワードにおける重要な役割
PHWAの最も象徴的な活動の一つが、NHLの個人賞を決定する投票権を持っていることです。彼らは以下の7つの主要なトロフィーの受賞者を決定します。
- ハート記念トロフィー(MVP)
- レディ・ビング記念トロフィー(紳士的プレー)
- カルダー記念トロフィー(新人王)
- ジェームズ・ノリス記念トロフィー(最優秀ディフェンスマン)
- コン・スミストロフィー(プレーオフMVP)
- ビル・マスターソン記念トロフィー(精神力・献身)
- フランク・J・セルケトロフィー(最優秀守備フォワード)
なお、すべての賞をPHWAが決定するわけではありません。例えば、ジャック・アダムス賞(最優秀コーチ)は放送記者協会が、ヴェジーナ賞(最優秀ゴールテンダー)は各チームのゼネラルマネージャーが、テッド・リンゼイ賞は選手会がそれぞれ投票を行います。
また、協会員自身の功績を称える賞として、ホッケー殿堂入り協会から贈られる「エルマー・ファーガソン記念賞」の選出もPHWAが行っています。
協会の歩みとジャーナリズムの権利拡大
1967年に設立された本協会は、1971年に現在の「プロフェッショナル・ホッケー記者協会」へと名称を変更しました。これは、NHLのチーム組織と明確に区別するためです。
歴史的に、PHWAは記者の尊厳と権利を守るために積極的に行動してきました。1975-76シーズンには、デトロイト・レッドウィングスのコーチが記者に暴行を働いた事件が発生し、当時のダン・ストーンキング会長はNHL会長に対し、激しい抗議とともに公式な謝罪を要求しました。この事件により、試合後のロッカールームへのアクセス権という、記者にとって不可欠な権利の重要性が改めて浮き彫りになりました。
さらに、ジェンダー平等の推進にも寄与しました。1976年のスタンレーカップ決勝の際、女性記者のロッカールーム入室を巡って議論が起きました。ストーンキング会長は、「男性に許可するなら女性にも許可すべきであり、そうでなければどちらも禁止すべきだ」と主張。この取り組みにより、1977-78シーズンには約半数のチームが、1980-81シーズンまでには4分の3のチームが女性記者の入室を認めるようになりました。
近年では、メディア環境の激変に直面しています。2015年当時、スコット・バーンサイド会長は、伝統的な新聞やラジオ記者が減少し、SNSや独立系ブロガー、チーム独自のコンテンツ制作に取って代わられているという新たな課題を指摘しました。
歴代会長の変遷
PHWA(および前身のNHL記者協会)を率いた歴代会長は、北米の主要メディアに所属する著名な記者たちです。以下にその変遷をまとめます。
| 任期 | 氏名 | 所属メディア |
|---|---|---|
| 1966–1968 | トム・フィッツジェラルド | ボストン・グローブ |
| 1968–1970 | レッド・フィッシャー | モントリオール・スター |
| 1970–1971 | ジョージ・グロス | トロント・テレグラム |
| 1971–1972 | ジャック・ベリー | デトロイト・フリープレス |
| 1972–1974 | レッド・バーネット | トロント・スター |
| 1974–1975 | ビル・ブレナン | デトロイト・ニュース |
| 1975–1977 | ダン・ストーンキング | ミネアポリス・スター |
| 1977–1979 | ボブ・ヴェルディ | シカゴ・トリビューン |
| 1979–1981 | ビル・フライシュマン | フィラデルフィア・デイリーニュース |
| 1981–1985 | フランシス・ローザ | ボストン・グローブ |
| 1985–1987 | ロッド・ビートン | USAトゥデイ |
| 1987–1993 | スコット・モリソン | トロント・サン |
| 1993–1999 | ジム・ケリー | バッファロー・ニュース |
| 1999–2001 | ヘレン・エリオット | ロサンゼルス・タイムズ |
| 2001–2003 | ラリー・ブルックス | ニューヨーク・ポスト |
| 2003–2013 | ケビン・アレン | USAトゥデイ |
| 2013–2017 | スコット・バーンサイド | ESPN |
| 2017–2018 | マーク・スペクター | スポーツネット |
| 2019–2025 | フランク・セラバリ | ザ・スポーツ・ネットワーク |
| 2025–現在 | スティーブン・ワイノ | AP通信 |
Frequently Asked Questions
PHWAはどのような組織ですか?
北米を拠点にアイスホッケーを専門に取材する記者たちのプロフェッショナル協会です。メディアの権利保護や、NHLの主要アワードの選出などを行っています。
NHLのすべての賞をPHWAが決定しているのですか?
いいえ。ハート記念トロフィーなどの主要7賞はPHWAが決定しますが、コーチ賞は放送記者協会、ゴールテンダー賞はGM、テッド・リンゼイ賞は選手会がそれぞれ投票します。
女性記者の権利向上にどのように貢献しましたか?
1970年代後半、男性記者と同様に女性記者にも試合後のロッカールームへのアクセス権を認めるようNHLに働きかけ、業界の慣習を改善させました。
現在のメディア環境の変化にどう対応していますか?
伝統的な新聞・ラジオメディアの減少と、SNSや独立系ブロガー、チーム自社メディアの台頭という新たな課題に直面しており、時代の変化に合わせた取材環境の維持に取り組んでいます。
PHWAのメンバーになるにはどうすればいいですか?
協会は北米を拠点とするホッケー専門メディアの記者で構成されており、現在は約180名の投票権を持つメンバーが活動しています。