プロクルス・クレーター:月面でひときわ輝く若き衝撃跡
月の東端、危海(Mare Crisium)の西側に位置するプロクルスは、天体観測者の目を引く非常に明るいクレーターです。5世紀のギリシャの数学者であり哲学者でもあったプロクルスの名にちなんで命名されました。このクレーターは、その高い反射率と特徴的な放射状の模様で知られており、月面の地質学的歴史を解き明かす重要な手がかりとなっています。
主要な事実(Key Facts)
- 高い輝度:月面で2番目に明るいクレーターであり、アリスタルコスに次ぐ高アルベド(光反射率)を誇ります。
- 若き地質:地質学的に新しい「コペルニクス系」に分類されます。
- 特異な形状:縁(リム)が五角形に近い多角形をしているのが特徴です。
- 広大な光条:600km以上にわたって伸びる放射状の噴出物(レイシステム)を持っています。
地質学的特徴と構造
プロクルスの直径は約27km、深さは1.79kmに達します。最大の特徴は、その白く輝く外観です。北側の壁面からは、純粋な結晶質プラジオクラーゼ(斜長石)の赤外線スペクトルが検出されており、この成分が強い輝きに寄与していると考えられています。
クレーターの内部に目を向けると、壁面の一部に崩落(スランピング)が見られ、底面は平坦ではなく、崩落した岩塊による小さな盛り上がりが点在する不規則な地形となっています。

衝撃の角度とレイシステム
プロクルスの周囲には、衝撃時に飛び散った物質が形成した「レイ(光条)」が広がっています。しかし、この光条は均等ではなく、北西、北北東、北東方向へ強く伸びている一方で、南西方向には噴出物がほとんど見られないという非対称性があります。この偏りは、天体が非常に低い角度で衝突したことを示唆しています。


周辺環境と探査の歴史
プロクルスは、パルス・ソムニ(眠りの沼)の東岸に位置し、北側には段丘状の縁を持つマクロビウス、西北側には溶岩で満たされたヤーキスといった他のクレーターに囲まれています。
かつてアポロ計画では、プロクルスの北北東約100kmの地点が着陸候補地として検討されていました。最終的にアポロ17号は、より地質学的な多様性が期待できるタウルス・リトロー谷への着陸を選択しましたが、プロクルス周辺のデータは月面研究に大きく貢献しました。
プロクルスの基本データまとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 座標 | 北緯16.1° / 東経46.8° |
| 直径 | 27 km |
| 深さ | 1.79 km |
| 形成年代 | コペルニクス系(若年期) |
| 特徴的な形状 | 五角形のリム、非対称なレイシステム |
衛星クレーター
プロクルスの周囲には、多くの小さな衛星クレーターが存在します。これらは慣習的に「Proclus」にアルファベットを添えて識別されます。主なものとして、直径33kmのProclus Gや、30kmのProclus Pなどが挙げられます。なお、一部のクレーター(Proclus Fなど)は後に国際天文学連合(IAU)によって個別の名称(Crileなど)に変更されています。
よくある質問(FAQ)
プロクルスがなぜあんなに白く見えるのですか?
これは「アルベド(反射率)」が高いためです。特に北壁で検出された純粋な結晶質プラジオクラーゼなどの成分が、太陽光を強く反射しているため、他の地域よりも明るく見えます。
「コペルニクス系」とはどういう意味ですか?
月面のクレーターを年代別に分けた分類の一つで、地質学的に比較的最近に形成された「若い」クレーターを指します。一般的に、鮮明なレイシステム(光条)を持っていることが特徴です。
クレーターの形状が五角形なのはなぜですか?
詳細な理由は特定されていませんが、衝撃時のエネルギー伝播や、衝突した地点の地下構造の影響によって、完全な円ではなく多角形に近い形状になることがあります。
アポロ計画で実際に着陸しましたか?
いいえ、着陸はしていません。候補地の一つとして検討されましたが、最終的にアポロ17号は別の地点(タウルス・リトロー谷)に着陸しました。
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