サンフランシスコの美しい海岸線に位置するプレシディオは、かつての堅牢な軍事要塞から、現在は市民や観光客に開かれた広大な国立レクリエーションエリアへと姿を変えました。スペイン植民地時代にまで遡るその歴史は、アメリカの太平洋戦略の要としての役割を担い、時代の変遷とともにその機能を変えてきました。

現在は、歴史的な建築物の保存と自然環境の再生、そして現代的な商業利用が共存するユニークな空間となっており、都市部における持続可能な開発のモデルケースとしても注目されています。

An aerial view of the Presidio

Key Facts

  • 起源: 1776年にスペインのフアン・バウティスタ・デ・アンザによって設立された要塞。
  • 軍事拠点: 米西戦争や第二次世界大戦など、太平洋地域の主要な軍事作戦の拠点となった。
  • 管理体制: 現在は連邦政府機関であるプレシディオ・トラストと国立公園局が共同で管理。
  • 主要施設: ルーカスフィルム本社(レターマン・デジタル・アーツ・センター)やウォルト・ディズニー・ファミリー博物館などが所在。
  • 自然再生: 元飛行場のクリッシーフィールドの復元や、4つの渓流の生態系回復に取り組んでいる。

軍事要塞としての歩み

スペイン・メキシコ時代からアメリカ合衆国へ

プレシディオの歴史は1776年、スペインの遠征隊によって始まりました。建設には地元のオロニ族が採掘した石灰岩が使用され、当初は小規模な駐屯地として機能していました。1821年にメキシコが独立すると一時的にメキシコの要塞となりましたが、1846年の米墨戦争を機にアメリカ軍が接収し、1848年に正式に再開されました。

The Presidio in 1817

太平洋戦略の重要拠点

その後、ここはアメリカ軍の重要な司令部となり、ウィリアム・T・シャーマンやジョン・J・パーシングといった著名な将軍たちが居住しました。特に米西戦争の際は、フィリピン侵攻部隊の集結地となるなど、太平洋地域における軍事作戦の中心的役割を果たしました。

Street map of 1937 of the Army Base

医療と記憶の場所

1890年代からは、南北戦争の医療体制を整備したジョナサン・レターマンにちなんで名付けられた「レターマン陸軍医療センター」が設置され、20世紀のあらゆる紛争で負傷した兵士たちに高度な医療を提供しました。また、敷地内にはサンフランシスコ国立墓地があり、フレデリック・ファンストン将軍などの軍人が眠っています。かつては商船乗組員のための墓地も存在し、現在はその歴史を伝える散策路が整備されています。

第二次世界大戦とその後

第二次世界大戦中、プレシディオは西部防衛司令部の拠点となりました。1942年には、大統領令9066号に基づき、日系アメリカ人の強制収容を指示する排除令にジョン・L・デウィット中将が署名した場所でもあります。軍事施設としての役割は、1991年の湾岸戦争における予備役部隊の訓練・展開管理を最後に幕を閉じました。

The Old Coast Guard Station and Golden Gate Bridge

保存と再生への転換

プレシディオ・トラストによる管理

軍の撤退後、売却の危機を乗り越え、1996年の議会法に基づき「プレシディオ・トラスト」という政府法人が設立されました。トラストは国立公園局と連携し、歴史的建造物の保存と公共利用の両立を目指しています。特に2006年には、目標としていた財政的な自立を前倒しで達成しました。

Welcome sign

歴史的建築物の活用と環境再生

敷地内にある約800棟の建物のうち、多くが修復され、現在は住宅やオフィスとして貸し出されています。ここにはベイ・スクールやウォルト・ディズニー・ファミリー博物館、各種財団などが拠点を置いています。また、かつての飛行場であったクリッシーフィールドは広大なレクリエーションエリアへと生まれ変わり、4つの渓流(ロボス、ドラゴンフライ、エル・ポリン、コヨーテ・ガルチ)の自然復元プロジェクトも進行しています。

Presidio Parkway construction seen from Storey Avenue in October 2013

現代のプレシディオ:21世紀の展開

ルーカスフィルムの進出とインフラ整備

1999年、ジョージ・ルーカス率いるルーカスフィルムがレターマン病院跡地に「レターマン・デジタル・アーツ・センター」を建設しました。この大規模開発により、最新のオフィス機能とともに、一般に開放された「グレート・ローン(大芝生)」やハイテク博物館が整備されました。

都市インフラと芸術の融合

交通面では、耐震性の低かったドイル・ドライブを撤去し、2015年にトンネルを含む「プレシディオ・パークウェイ」が完成しました。また、歩行者向けのプロムナードや、合計約63kmに及ぶハイキングコースと自転車道が整備され、アクセス性が向上しました。芸術面では、アンディ・ゴールドスワージーによる「Spire」などの彫刻作品が設置され、植樹活動などの環境への意識を象徴しています。

管理体制の変動

直近の動きとして、2026年4月にはトランプ政権により、バイデン大統領が任命していたプレシディオ・トラストの理事6名全員が解任され、5月に新たな理事会が任命されるという政治的な体制変更がありました。

プレシディオの概要まとめ

プレシディオの歴史と現状のまとめ
項目 詳細
設立年 1776年(スペイン領として)
主な歴史的役割 スペイン・メキシコ・アメリカの軍事要塞、太平洋戦略拠点
現在の管理主体 プレシディオ・トラスト & 国立公園局
主要な施設 レターマン・デジタル・アーツ・センター、クリッシーフィールド
環境への取り組み 4つの渓流の復元、広大なトレイル網の整備

Frequently Asked Questions

プレシディオは現在誰が管理しているのですか?

主に連邦政府法人のプレシディオ・トラストが管理しており、歴史的建造物の多くを管轄しています。また、沿岸部は国立公園局が管理し、治安維持は合衆国パークポリスが担当しています。

ルーカスフィルムの施設は一般に見学できますか?

レターマン・デジタル・アーツ・センターの敷地内には、一般に開放されている「グレート・ローン(大芝生)」があり、公共のスペースとして利用可能です。

クリッシーフィールドとはどのような場所ですか?

かつては軍の飛行場として使用されていましたが、現在は大規模な復元工事を経て、サンフランシスコ・マリーナからゴールデンゲートブリッジにかけて広がる人気のレクリエーションエリアとなっています。

プレシディオにはどのような施設が入っていますか?

ウォルト・ディズニー・ファミリー博物館や、私立のベイ・スクール、各種財団、商業施設などが歴史的な建物をリノベーションして入居しています。

自然環境の保護についてどのような取り組みが行われていますか?

ロボス川やドラゴンフライ川など4つの渓流の河畔林生息地の復元が進められているほか、アンディ・ゴールドスワージーの彫刻作品を通じて植樹活動などの環境再生への意識を高めています。