Civil polar twilight in Ruka, Finland at noon in December
← ホームへ戻る

極夜(ポーラーナイト)のメカニズムと人間への影響

🗓 2026年8月11日

地球の最北端および最南端の地域では、太陽が24時間以上にわたって地平線の下に留まり続ける極夜という現象が発生します。これは北極圏や南極圏といった高緯度地域特有の現象であり、対照的に太陽が沈まない「白夜(極昼)」とは正反対の状態を指します。

極夜といっても、すべての地域が完全な暗闇に包まれるわけではありません。大気による光の屈折があるため、多くの場所では太陽が地平線の下にあっても、空にわずかな光が残る「薄明(はくめい)」の状態が続きます。

Key Facts

  • 定義:太陽が24時間以上、地平線の下に位置する現象。
  • 発生場所:北極圏および南極圏(緯度約66.5度以上の地域)。
  • 期間:緯度によって異なり、極圏の縁では24時間、極点では約半年間に及ぶ。
  • 光の状態:完全な暗闇だけでなく、太陽の角度に応じた3段階の「薄明」が存在する。
  • 非対称性:地球の楕円軌道の影響で、北極よりも南極の方が極夜の期間がわずかに長い。

薄明の定義と極夜の種類

太陽が地平線の下に隠れている間、その角度(度数)によって光の強さが変わり、薄明は以下の3つの段階に分類されます。極夜における「明るさ」はこの定義に基づいています。

1. 市民薄明(Civil Twilight)

太陽が地平線から0度から6度の間に位置する状態です。この時間帯は、金星やシリウスのような明るい星が見え始めますが、正午頃には屋外での一般的な活動が可能な程度の光が残っています。ただし、厚い雲に覆われると非常に暗くなり、日中でも街灯が必要な場合があります。

Civil polar twilight in Ruka, Finland at noon in December

ノルウェーのルカやフィンマーク沿岸などの地域では、冬至付近にこの市民薄明の状態を経験します。しかし、この程度の光量では、季節性感情障害(SAD)の治療に必要な高照度(約10,000ルクス)には達しないため、心理的な影響を避けるための人工光療法が用いられることがあります。

Early afternoon during civil polar twilight in Tromsø, Norway.

2. 航海薄明(Nautical Twilight)

太陽が地平線から6度から12度の間に位置する状態です。正午であっても地上の物体の概形を判別できる程度であり、詳細な屋外作業は困難になります。ヨーロッパ本土ではこの条件を満たす場所はありませんが、スヴァールバル諸島のロングイヤービエンなどで冬期に観測されます。

Civil polar twilight on Nordkinn Peninsula in Norway, mainland Europe's northernmost peninsula.

3. 天文薄明(Astronomical Twilight)

太陽が地平線から12度から18度の間に位置する状態です。正午でも空は十分に暗く、光害やオーロラなどの影響がなければ、点光源である星の観測が可能です。カナダのユーレカやロシアのフランツヨセフランドなどでこの状態になります。

完全な極夜(True Polar Night)

太陽が地平線から18度以上深く沈み込み、天文薄明さえも発生しない状態を完全な極夜と呼びます。この期間中は、24時間ずっと肉眼で見える最も暗い星(6等星)が観測可能です。この現象は、極点から約5.5度以内(緯度約84度34分以上)の極めて限定的な地域でしか起こりません。

南極点にあるアムンゼン・スコット基地のような施設では、冬の間、完全に外部から隔離された状態でこの深い闇を経験します。北極点では11月中旬から1月下旬、南極点では5月中旬から8月上旬にかけてこの状態が続きます。

At Earth's poles the Sun appears at the horizon only and all day around equinox, marking the change between the half year long polar night and polar day. The picture shows the South Pole right before March equinox, with the Sun appearing through refraction despite being still below the horizon.

極夜の期間と地域的な差異

極夜の長さは緯度が高くなるほど増していきます。また、地球の公転軌道が楕円であるため、北半球と南半球で期間に差が生じます。北極点での極夜は約179日間ですが、南極点では約186日間と、南半球の方が長くなる傾向にあります。

緯度別の極夜(日照がない期間)の目安
緯度(北半球) 期間(目安) 主な地域
北緯68度 12月9日 〜 1月2日 キルナ、ロフォーテン諸島
北緯69度 12月1日 〜 1月10日 トロムソ、ムルマンスク
北緯78度 10月27日 〜 2月14日 ロングイヤービエン
北緯90度 9月25日 〜 3月17日 北極点

心身への影響と健康リスク

極端な日照時間の減少は、人間の睡眠パターンや精神衛生に影響を及ぼすことが研究で示されています。

  • 睡眠への影響:ノルウェーのトロムソでの調査では、冬期に男性の不眠症の割合が高まる傾向が見られました。一方で、南極のベルグラノII基地での研究では、冬期に睡眠時間が短くなり、「社会的時差ぼけ(ソーシャルジェットラグ)」が増加することが報告されています。
  • 精神的健康:南極の韓国研究基地(キング・セジョン基地およびジャン・ボゴ基地)の調査では、冬の始まりとともに不眠症、うつ病、適応障害、アルコール使用障害などの精神疾患が診断された事例が確認されました。

ただし、現代の都市部では強力な人工照明が普及しているため、睡眠時間の絶対的な変動は抑えられる傾向にあります。それでも、生物学的なリズムの乱れによる不眠や精神的な不調は、高緯度地域で生活する人々にとって重要な課題となっています。

Frequently Asked Questions

極夜の間は完全に真っ暗なのですか?

いいえ、多くの地域では「薄明」と呼ばれる状態になり、正午頃にはわずかに空が明るくなります。完全に真っ暗な「完全な極夜」が発生するのは、極点に近い非常に高い緯度の地域だけです。

なぜ北極と南極で極夜の長さに違いがあるのですか?

地球の公転軌道が完全な円ではなく楕円であるため、ケプラーの法則に従い、地球の公転速度が場所によって異なります。その結果、南半球の方が極夜の期間が数日分長くなります。

極夜は健康にどのような影響を与えますか?

日照不足により、不眠症やうつ状態などの精神的な不調を招くことがあります。特に冬の始まりに睡眠パターンの乱れや気分低下が見られる傾向があります。

極夜が起こる条件は何ですか?

惑星の自転軸が傾いており、かつ自転周期(1日)が公転周期(1年)よりも十分に短い場合に発生します。地球の場合、北極圏と南極圏という特定の緯度範囲でこの現象が起こります。

白夜(極昼)との関係はどうなっていますか?

白夜は極夜の正反対の現象で、太陽が24時間以上にわたって地平線の上に留まる状態を指します。北半球で極夜が起こっているとき、南半球では白夜が起こっており、その逆も同様です。

References

  1. Burn, Chris. The Polar Night (PDF). The Aurora Research Institute. Retrieved 28 September 2015.
  2. , p. 86.
  3. , p. 690.
  4. .
  5. .
  6. , "In twilight".
  7. Mulvaney, Kieran (2024-02-01). "What is polar night?". Environment. Retrieved 2024-02-28.
  8. "Polar Night in Norway: What to Expect and How to Plan". Explore Finnmark. Retrieved 2025-05-28.
  9. "The Polar Night and the Polar Day - Aurora Labs Norway". 2023-01-12. Retrieved 2024-03-07.
  10. "Polar Night". Base Camp Explorer. Retrieved February 6, 2025.

📸 フォトギャラリー

Civil polar twilight in Ruka, Finland at noon in December
Early afternoon during civil polar twilight in Tromsø, Norway.
Civil polar twilight on Nordkinn Peninsula in Norway, mainland Europe's northernmost peninsula.
At Earth's poles the Sun appears at the horizon only and all day around equinox, marking the change between the half year long polar night and polar day. The picture shows the South Pole right before March equinox, with the Sun appearing through refraction despite being still below the horizon.