プリマス:火山に飲み込まれたカリブ海のゴーストタウン
カリブ海の小アンティル諸島に位置するイギリス海外領土、モントセラト。この島には、かつての繁栄を留めたまま静まり返った不思議な街があります。それが、法的な首都でありながら現在は誰も住んでいない「ゴーストタウン」となったプリマスです。政治的な領土の首都が完全に放棄された街となっている例は、世界的に見ても極めて稀です。
かつては「カリブ海のエメラルド島」と称えられた美しい環境にあり、ジョージ王朝時代に建設されたこの街は、長らく島唯一の玄関口として機能していました。しかし、数百年の眠りについていた火山が目覚めたことで、街の運命は一変しました。
Key Facts
- 現状: 法的な首都だが、現在は人口0人のゴーストタウン。
- 原因: スフリエール・ヒルズ火山の噴火による火砕流と火山灰の堆積。
- 被害: 1997年の噴火で街の約80%が破壊され、厚さ1.4メートルの灰に埋没。
- 代替地: 実質的な首都機能はブレーズへ移り、リトルベイに新首都を建設中。
- 地理: 火山排除区域内に位置し、基本的には居住不能なエリア。
自然の猛威にさらされた歴史
初期の発展と試練
プリマスの歴史は古く、1632年の欧州植民地設立後、1636年には聖アンソニー教会が建てられました。この教会は、当時のアンソニー・ブリスケット知事の名にちなんで命名されたと言われています。しかし、街の歴史は常に自然災害との戦いでした。地震やハリケーンによって教会は何度も再建を余儀なくされ、2021年時点では深い火山灰の下に埋もれています。
ハリケーン・ヒューゴの衝撃
1989年9月17日に襲来したハリケーン・ヒューゴは、街に甚大な被害をもたらしました。港の55メートルに及ぶ石造りの突堤が破壊されたほか、学校や保健センター、そして島で唯一の総合病院が使用不能となりました。この災害を受け、将来的な嵐に耐えうる構造への再設計が検討されるなど、インフラの脆弱性が浮き彫りとなりました。
火山の覚醒と街の終焉
繰り返される避難指示
1995年7月18日、数百年間活動していなかったスフリエール・ヒルズ火山が突如として噴火を開始しました。大量の火山灰がプリマスを含む南部地域を覆い、住民は危険にさらされました。1995年8月から9月にかけての第1次避難に始まり、12月には2次避難が行われるなど、住民は不安定な生活を強いられました。
最終的な放棄へ
1996年3月、高温の火山灰放出と火砕流(高温のガスと火山砕屑物が高速で斜面を流れ下る現象)が発生し、状況は最悪へと向かいました。4月3日、プリマスから住民が完全に避難し、これが最後の脱出となりました。1997年6月には大規模な噴火により19名が犠牲となり、島東側の空港まで被害が及びました。

コンクリート化した街
1997年8月には、街の約80%を破壊する壊滅的な噴火が発生し、街全体が約1.4メートルの火山灰に埋め尽くされました。堆積した火山岩や泥はコンクリートのように硬く凝固したため、重機や爆薬を用いない限り除去は不可能と判断されました。また、猛烈な熱によって土壌が焼かれ、農地としての再生も絶望的となりました。

崩壊後のモントセラトと現在の姿
プリマスの喪失は、島に深刻な経済的打撃を与えました。人口約4,000人を抱えていた最大の集落であり、行政、商業、サービスの中心地だったためです。この災害により、1995年から2000年の間に島民の3分の2が国外へ脱出し、多くがイギリスへ移住しました。
現在は、北部のブレーズが実質的な首都として機能しており、北西海岸のリトルベイに新しい港と首都を建設するプロジェクトが進んでいます。2015年頃からは、建設資材としての砂利採取などの目的で、日中の限定的な立ち入りが許可されています。

プリマスの概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 現在の人口 | 0人(避難前は約4,000人) |
| 気候区分 | ホットセミアリッド(半乾燥気候 / BSh) |
| 主な災害 | ハリケーン・ヒューゴ、スフリエール・ヒルズ火山噴火 |
| 交通インフラ | 旧W.H.ブランブル空港(埋没)→ 新ジョン・A・オズボーン空港(2005年開港) |
| 法的地位 | モントセラトの法定首都(de jure) |
Frequently Asked Questions
なぜプリマスを再建せず、新しい首都を作るのですか?
火山灰や火砕流がコンクリートのように硬く固まっており、除去に膨大なコストがかかるためです。また、地盤が熱で焼かれ農業に適さなくなったことや、依然として火山排除区域内にあり居住が危険であるため、安全な北部に新都市を建設しています。
現在、プリマスに入ることはできますか?
基本的には居住不能な排除区域内ですが、2015年頃から建設資材の採取などの特定の活動目的で、日中の立ち入りが一部許可されています。
噴火による人口への影響はどうでしたか?
1995年から2000年の間に、島全体の人口の約3分の2が避難を余儀なくされました。多くの人々がイギリスへ移住しましたが、2016年までに人口は再び約5,000人にまで回復しています。
プリマスの気候はどのような特徴がありますか?
ケッペンの気候区分ではBSh(ホットセミアリッド)に分類される半乾燥気候です。年間を通じて気温が高く、平均最高気温は25度から28度程度で推移しています。
聖アンソニー教会はどうなりましたか?
1636年に設立され、歴史的に何度も再建されてきた教会ですが、一連の火山活動により現在は深い火山灰の下に完全に埋もれています。
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