冬の夜空を彩るおうし座の北西に、宝石を散りばめたように輝く小さな星の集まりがあります。日本では古くから「すばる」の名で親しまれているこの天体は、天文学的にプレアデス星団(メシエ45 / M45)と呼ばれています。地球から約444光年という、星団としては非常に近い距離に位置しているため、肉眼でもはっきりと確認できる最も代表的な散開星団(若く、緩やかに集まった星のグループ)の一つです。
この星団は、1,000個以上の星々で構成されており、その多くは高温で青白く輝くB型星という若い星たちです。視力が良い人であれば、最大で14個ほどの星を肉眼で見分けることができます。

Key Facts
- 正式名称:プレアデス星団(M45、NGC 1435など)
- 位置:おうし座の北西方向
- 平均距離:約444光年(135.74 ± 0.10 pc)
- 構成:1,000個以上の星(主として若いB型星)
- 総質量:太陽の約800倍
- 特徴:地球に最も近いメシエ天体であり、肉眼で容易に観測可能
歴史と文化に刻まれた「七姉妹」
プレアデス星団は、その美しさと視認性の高さから、世界中の多様な文化で重要な役割を果たしてきました。ギリシャ神話では「七姉妹」として知られ、多くの文明で暦の基準や航海の指標として利用されてきました。
紀元前1600年頃のものとされる「ネブラ空円盤」には、この星団を模したと思われる7つの点が描かれており、古代の人々がすでにこの星々の集まりを認識していたことを示しています。

また、オーストラリアの先住民の伝統的な物語においても、この星団は重要な意味を持っており、現代でもそれを記念したコインが発行されるなど、文化的な象徴として受け継がれています。
![Commemorative silver one dollar coin issued in 2020 by the Royal Australian Mint - on the reverse, the Seven Sisters (Pleiades) are represented as they are portrayed in an ancient story of Australian Indigenous tradition.[30]](/images/35/b4/35b4b31658d118b5cf99ea10275beaf97815f3cd7f0b21f9763799923e6a4722.jpg)
日本における「すばる」
日本では「集う」という意味から「すばる」と呼ばれています。この名称は現代でも親しまれており、ハワイのマウナケア天文台に設置された世界有数の大型望遠鏡「すばる望遠鏡」の名称の由来にもなっています。
天文学的な視点から見たプレアデス
かつて、これらの星が単に視線方向に並んでいるだけなのか、それとも物理的に結びついた集団なのかという議論がありました。しかし、1767年にジョン・ミシェルが確率論的に偶然の並びである可能性は極めて低いと指摘し、その後の観測で全ての星が同じ方向へ同じ速度で移動している(固有運動)ことが判明し、物理的な星団であることが証明されました。

ガリレオ・ガリレイもこの星団を詳細にスケッチしており、天文学の発展とともにその正体が明らかにされてきました。

距離測定を巡る論争
プレアデス星団までの距離の測定は、天文学における大きな議論の的となってきました。かつてのヒッパルコス衛星のデータでは約118パーセク(pc)とされていましたが、ハッブル宇宙望遠鏡やVLBI(超長基線電波干渉法)による測定では、より遠い135〜140pcという結果が出されました。
最新のガイア衛星(Gaia Data Release 3)によるデータでは、距離は135.74 ± 0.10 pcと極めて高い精度で決定されています。


星団の組成と環境
星団の内部には、星の光が周囲のガスに反射して光る反射星雲(NGC 1432やメロペ星雲など)が存在します。これは、星団がまだ若いガス雲の中に位置していることを示唆しています。

また、スピッツァー宇宙望遠鏡などの赤外線観測により、星団内の恒星「HD 23514」の周囲に大量の高温塵が発見されました。これは、この星の周りで惑星が形成されている可能性を示す重要な証拠と考えられています。
プレアデス星団の基本データまとめ
| 項目 | 詳細データ |
|---|---|
| 赤経 / 赤緯 | 03h 46m 38.0s / +24° 10′ 41″ |
| 平均距離 | 約444光年 (135.74 pc) |
| 視等級 (V) | 1.6 |
| 推定年齢 | 約1億2453万年 |
| 半径 | 約20.34光年 |
| 主要構成星 | B型主系列星(青色巨星など) |
主要な構成星の一覧
星団の中で特に明るく、観測しやすい主要な星々は以下の通りです。
- アルキオネ (Eta Tauri): 星団の中で最も明るい星(視等級 2.86)。
- アトラス (27 Tauri): 視等級 3.62。
- エレクトラ (17 Tauri): 視等級 3.70。
- マイア (20 Tauri): 視等級 3.86。
- メロペ (23 Tauri): 視等級 4.17。反射星雲を伴う。
- タイゲータ (19 Tauri): 視等級 4.29。
Frequently Asked Questions
プレアデス星団はなぜ「すばる」と呼ばれるのですか?
日本語の「すばる」は、多くの星が集まっている様子を意味しています。この星団が肉眼で見ても小さな星々が密集して見えることから、古くからこの名で呼ばれてきました。
肉眼で何個の星が見えますか?
一般的には6〜7個の星が見えますが、空の状態が非常に良く、視力が高い人であれば最大で14個ほどの星を識別することが可能です。
この星団の距離についてなぜ論争があったのですか?
初期のヒッパルコス衛星による視差測定の結果が、他の測定手法(分光視差や幾何学的測定)による結果よりも大幅に短い距離を示したためです。現在はガイア衛星の精密なデータにより、約136パーセクであることが確定しています。
プレアデス星団に惑星は存在しますか?
確定的な発見はされていませんが、恒星HD 23514の周囲に大量の塵が観測されており、惑星が形成されている可能性が高いと考えられています。
メシエカタログに登録されている理由は?
シャルル・メシエは主に彗星と見間違えやすい淡い天体を記録しましたが、プレアデス星団のような明るい天体も含まれています。これは、ライバルであったラカイユのカタログよりも項目数を増やしたかったためという説があります。
References
- Riccioli had previously used different names for the Pleiades in his of 1651, which referred to the brightest star as Maia after the eldest of the Pleiades sisters (it is now named Alcyone).
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