生物多様性の研究において、種を定義し分類する「分類学」の文献は不可欠な基盤です。しかし、これらの膨大な知見をいかに効率的に共有し、次世代の研究に活用させるかが大きな課題となっていました。スイスに拠点を置く国際非営利団体Plaziは、生物分類学的な文献をデジタル化し、誰でも永続的にアクセス可能な形式で提供することで、この課題の解決に取り組んでいます。
Plaziの活動は、単なる電子化にとどまりません。科学的データの再利用性を高めるための国際的な原則であるFAIRデータ(見つけやすく、アクセス可能で、相互運用でき、再利用可能であること)に基づき、分類学的な記述を機械可読な形式へと変換し、世界中の研究者が活用できるエコシステムを構築しています。
Key Facts
- 目的: 生物分類学文献の永続的な保存とオープンアクセスの促進。
- 主要ツール: TreatmentBank(変換サービス)やGoldenGATE(マークアップツール)を運用。
- データ形式: TaxpubというXML形式を用いて、分類学的記述を構造化。
- 外部連携: GBIF(地球規模生物多様性情報機構)へ膨大なデータセットを提供。
- 理念: 分類学的記述は公有財産(パブリックドメイン)であるという立場を支持。
デジタル分類学(e-taxonomy)へのアプローチ
Plaziの取り組みは、生物多様性インフォマティクス(生物多様性に関する情報科学)の進化に寄与しています。その技術的基盤は、アメリカ自然史博物館とカールスルーエ大学による、米国国立科学財団(NSF)およびドイツ研究財団(DFG)の共同プログラムから始まりました。
構造化データへの変換プロセス
従来の論文形式の文献をデジタルデータとして活用するため、PlaziはTaxonXというXMLスキーマ(データの構造を定義するルール)を開発しました。このスキーマを用いて、過去の文献を半自動的に編集するツール「GoldenGATE」により、意味論的に強化されたデジタル文書へと変換します。これにより、単なるテキストデータではなく、種名や記述内容が明確に区別されたデータセットが作成されます。
TreatmentBankとTaxpubの役割
Plaziが提供するTreatmentBankサービスは、分類学的な記述をTaxpubというXML形式に変換し、Biodiversity Literature Repository(生物多様性文献リポジトリ)やZenodoなどのプラットフォームを通じて公開します。これにより、研究者は必要な分類情報に迅速にアクセスでき、データの一貫性が保たれます。
グローバルなデータ連携と普及
Plaziで構造化されたデータは、世界的な生物多様性データベースへと供給され、研究の効率を飛躍的に向上させています。
例えば、TAPIRサービスを通じて分布記録をGBIF(地球規模生物多様性情報機構)に提供しています。また、種ページモデル(SPM)という転送スキーマを用いることで、Encyclopedia of Life (EOL) などの外部サービスへのデータ提供も可能にしました。現在、Darwin Core Archives形式を用いてGBIFに提供されている33,623件のデータセットは、GBIF全体のデータセットの50%以上を占める重要なリソースとなっています。
さらに、これらのデータはGenBankやZooBank(動物名登録簿)、Hymenoptera Name Server(膜翅目名称サーバー)といった外部の専門データベースとリンクされており、情報の相互参照が容易になっています。
著作権に関する考え方
Plaziは、分類学的な記述(Treatment)は文学的または芸術的な著作物には当たらないという見解を持っています。したがって、これらの情報はパブリックドメインに属し、適切な引用を行うことを前提として、自由に利用および配布されるべきであると主張しています。この考え方が、科学的議論のオープンアクセスを維持するための根拠となっています。
Plaziの活動概要まとめ
| 項目 | 内容・ツール | 目的・連携先 |
|---|---|---|
| データ変換 | TreatmentBank / GoldenGATE | 文献をTaxpub (XML) 形式へ構造化 |
| データ保存 | Zenodo / Biodiversity Literature Repository | 永続的なオープンアクセス提供 |
| 外部配信 | TAPIR / Darwin Core Archives | GBIF, EOL へのデータ供給 |
| 外部参照 | 外部DBリンク | GenBank, ZooBank 等との連携 |
Frequently Asked Questions
Plaziとはどのような組織ですか?
スイスを拠点とする国際的な非営利団体で、生物分類学の文献をデジタル化し、誰でも利用可能なオープンアクセス形式で提供することを目的として活動しています。
Taxpubとは何ですか?
Plaziが採用しているXML形式のデータフォーマットです。生物分類学的な記述を構造化して記録することで、コンピュータによる処理や検索を容易にします。
GBIFとの関係はどのようなものですか?
Plaziは、構造化した分類データをGBIFに提供しています。提供された3万件以上のデータセットは、GBIF全体のデータセットの半数以上を占めるほど重要な役割を果たしています。
なぜ分類学の文献をデジタル化する必要があるのですか?
従来の紙ベースや単純なPDF形式の文献では、データの再利用や検索が困難であるためです。FAIR原則に基づいたデジタル化により、世界中の研究者が効率的にデータにアクセスし、生物多様性の研究を加速させることができます。
著作権の問題はどう扱われていますか?
Plaziは、分類学的な記述は芸術的な著作物ではなく、公有財産(パブリックドメイン)であると考えています。そのため、適切な引用があれば自由に配布・利用できるという方針を採っています。
References
- "TreatmentBank". plazi.org. Retrieved 2020-02-09.
- Catapano, Terry. "Taxpub". Plazi. Retrieved 27 October 2009.
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