宇宙に浮かぶ惑星や衛星が、なぜ単なる岩石の塊ではなく、中心に核(コア)を持ち、その周囲をマントルや地殻が囲むという層状の構造をしているのでしょうか。この現象は惑星分化と呼ばれ、天体を構成する化学元素が、それぞれの物理的・化学的な特性に基づいて異なる領域に集積することで起こります。
このプロセスは、地球のような大きな惑星だけでなく、準惑星や月などの天然衛星、さらには小惑星(4ベスタなど)でも確認されています。天体が誕生し、内部が高温状態になることで、物質の「選別」が始まるのです。

Key Facts
- 分化の原動力: 主に物質の密度差による重力分離と、化学的な親和性によって進行する。
- 熱源: 放射性同位体の崩壊熱、天体衝突時の衝撃エネルギー、および重力圧力が物質を融解させる。
- 地球の構造: 高密度の鉄・ニッケル核、中密度のケイ酸塩マントル、低密度の地殻という層に分かれている。
- 化学的選別: 密度だけでなく、どの元素がどの物質と結びつきやすいか(親和性)によって分布が決まる。
物質を分ける物理的・化学的プロセス
重力による分離(物理的分化)
天体内部が高温になり、物質が液体(溶融状態)や可塑的な状態になると、密度による分離が加速します。鉄のように密度の高い物質は、より軽い物質をかき分けて中心部へと沈み込みます。この際、鉄と結びつきやすい親鉄元素(siderophile elements)も一緒に中心へ運ばれます。
一方で、密度の低い物質は表面へと上昇します。例えば、斜長石のような軽い鉱物は、ダイアピルと呼ばれるドーム状の塊となって上昇することがあります。地球では、地殻内の岩塩ドームや、上部地殻に見られる花崗岩質の溶融岩、あるいは沈み込み帯で形成された蛇紋岩などがこの挙動を示します。

化学的親和性による分化
単純な密度差だけでは説明できない現象もあります。元素は自身の密度に関わらず、化学的に結びつきやすい物質に「同乗」して移動します。例えば、ウランは純粋な状態では非常に高密度ですが、化学的な性質から、金属核よりも軽いケイ酸塩に富む地殻に留まりやすい特性を持っています。
天体を加熱するエネルギー源
惑星分化が起こるには、物質を溶かすための膨大な熱が必要です。初期の太陽系では、以下の要因が熱源となりました。
- 放射性崩壊: 初期天体に含まれていた短寿命の放射性同位体(特にアルミニウム26など)が崩壊する際に熱を放出しました。
- 衝突エネルギー: 微惑星同士が衝突して合体する際、その衝撃が局所的な加熱を引き起こしました。
- 重力圧: 天体が巨大化するにつれ、内部に強い圧力と温度が発生し、物質が融解しました。
- 潮汐加熱: 他の天体との重力相互作用による摩擦熱も影響を与えます。
高度な分化プロセスと特異な事例
分画結晶作用と熱拡散
マントルで発生したマグマが上昇すると、温度や圧力の変化に伴い、特定の鉱物が順番に結晶化して分離します。これを分画結晶作用と呼びます。また、温度勾配によって軽い物質が熱い方へ、重い物質が冷たい方へ移動する熱拡散(ソレ効果)も、マグマ溜まりなどの分化に寄与しています。
月のKREEPと衝突による分化
月には、カリウム(K)、希土類元素(REE)、リン(P)に富むKREEPと呼ばれる特殊な玄武岩が存在します。これらは初期のマグマオーシャンから地殻が結晶化する際に排除された「不適合元素」が集まったものです。
また、月自体の形成は、巨大衝突によって地球の表面付近にあった軽いケイ酸塩物質が弾き飛ばされ、それが集積したと考えられています。そのため、月は地球に比べて鉄の核が極めて小さく、全体の密度が低いという特徴を持っています。
コア形成のメカニズムと天体密度
金属が中心部に集まり核を形成する経路には、いくつかのメカニズムがあります。液体金属が岩石の隙間を縫って降りるパーコレーション、岩石の割れ目に沿って移動するダイキング、あるいは巨大な金属の塊が沈み込むダイアピリズムなどが挙げられます。
| 構成層 | 主な成分 | 密度 (kg/m³) |
|---|---|---|
| 地殻 | アルミニウム、ナトリウム、カルシウム等のケイ酸塩 | 約 2,700 |
| マントル | マグネシウム・ケイ酸塩 | 約 3,400 |
| 惑星全体(平均) | 鉄・ニッケル合金およびケイ酸塩 | 5,515 |
Frequently Asked Questions
惑星分化とは具体的にどのような現象ですか?
天体内部が高温になり物質が流動的になった際、密度や化学的性質の違いによって、重い物質が中心へ、軽い物質が表面へと分かれるプロセスを指します。
なぜ鉄は中心に集まるのですか?
鉄は非常に密度が高く、溶融状態で他のケイ酸塩鉱物よりも重いため、重力によって天体の中心方向へ沈み込む性質があるからです。
すべての天体で分化は起こりますか?
いいえ。分化には物質を溶かす十分な熱が必要です。大きな惑星や一部の小惑星(ベスタなど)では起こりましたが、熱源が不足していた小さな天体では分化が進まず、均質な組成のままのケースもあります。
KREEPとは何ですか?
月の地殻とマントルの境界付近に濃縮された、カリウム、希土類元素、リンなどの不適合元素に富む物質のことです。
月の密度が地球より低いのはなぜですか?
月は地球への巨大衝突によって、地球の表面に近い「軽い」物質が主に供給されて形成されたため、地球のような巨大な鉄の核を持たず、平均密度が低くなっています。
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