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ピジョンナイト輝石単斜輝石火成岩結晶化温度

ピジョンナイト(Pigeonite)の特性と火成岩における地質学的意義

🗓 2026年8月10日

ピジョンナイトは、輝石グループの中でも単斜輝石(clinopyroxene)に分類されるケイ酸塩鉱物です。この鉱物は、単に希少な結晶であるだけでなく、その存在自体がマグマの冷却過程や温度履歴を解き明かす重要な「天然の温度計」としての役割を果たします。

化学組成としては、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)を含む(Ca, Mg, Fe)(Mg, Fe)Si2O6という組成式で表されます。特にカルシウムの含有量が5%から25%の範囲で変動するのが特徴で、残りの部分は鉄とマグネシウムが占めています。

Key Facts

  • 分類: 単鎖状のイノシリケート(連鎖ケイ酸塩)であり、単斜晶系に属する。
  • 指標としての価値: 結晶化温度の推定や、マグマ中の水分含有量の間接的な特定に利用される。
  • 分布: 地球上の火山岩のほか、月や火星から飛来した隕石の中にも見られる。
  • 安定性: 低温環境では不安定であり、輝石の一種である普通輝石(orthopyroxene)と輝石(augite)に分解する傾向がある。

物理的・光学的な識別特性

ピジョンナイトは外観上、茶色から緑がかった茶色、あるいは黒色を呈します。結晶の形態は柱状(最大1cm程度)または粒状、塊状として現れます。モース硬度は6であり、ガラス光沢から鈍い光沢を持ち、劈開(へきかい:一定の方向に割れやすい性質)は約87度の角度で良好に発達しています。

光学的な特徴としては、双屈折を示す二軸正の鉱物であり、多色性(見る方向によって色が変わる性質)は弱から中程度です。色の変化は、無色、淡緑色、茶色、あるいは淡いピンクがかった茶色など、観察方向(X, Y, Z軸)によって異なります。

地質学的背景と安定性のメカニズム

ピジョンナイトの最大の特徴は、その温度依存的な安定性にあります。この鉱物は高温下では安定していますが、温度が下がると普通輝石輝石(augite)に分離しようとする性質があります。この安定限界温度は、組成中の鉄とマグネシウムの比率(Fe/Mg比)に依存しており、マグネシウムが多いほどより低い温度まで安定します。例えば、Fe/Mg比が約1の場合、安定限界は約900℃とされています。

そのため、急冷された火山岩の中には斑晶として保存されやすい一方、ゆっくりと冷却される深成岩の中では、カルシウムが構造から分離して「離溶ラメラ(exsolution lamellae)」と呼ばれる薄い層を形成し、最終的にピジョンナイトとしての形態を失うことが一般的です。

このような分解プロセスは、顕微鏡観察によって詳細に記録されています。例えば、双晶を持つピジョンナイトが結晶化した後、輝石が離溶し、さらに普通輝石と輝石へと分解され、元の双晶面に沿って再び輝石が離溶するという多段階の履歴が、ブッシュフェルト火成複合体などの試料で確認されています。

ピジョンナイトの基本データまとめ

ピジョンナイトの物理的・化学的特性一覧
項目 詳細内容
化学組成式 (Ca, Mg, Fe)(Mg, Fe)Si2O6
結晶系 / 空間群 単斜晶系 / P 21/c
モース硬度 6
比重 3.17 – 3.46
劈開 {110} および (110) 方向に良好(約87°)
屈折率 (n) α: 1.683–1.722, β: 1.684–1.722, γ: 1.704–1.752

Frequently Asked Questions

ピジョンナイトという名前の由来は何ですか?

アメリカ合衆国ミネソタ州のスペリオル湖畔にある「ピジョン・ポイント(Pigeon Point)」というタイプ産地(基準産地)にちなんで名付けられました。1900年に初めて記載された鉱物です。

なぜ深成岩ではピジョンナイトが見つかりにくいのですか?

深成岩は冷却速度が非常に遅いため、カルシウムが結晶構造から分離して別の鉱物(カルシウムに富む単斜輝石)として析出する十分な時間があるためです。その結果、元のピジョンナイトは消失してしまいます。

この鉱物が地球以外で見つかることはありますか?

はい。地球上の火山岩だけでなく、火星や月から飛来した隕石の中からも結晶として発見されており、太陽系外の岩石の冷却履歴を研究する手がかりとなっています。

ピジョンナイトの存在から何が分かりますか?

岩石の中にピジョンナイトが保存されていれば、そのマグマが結晶化した際の温度を推定できます。また、この温度情報は間接的にマグマに含まれていた水分の量を示す指標にもなります。

References

  1. Warr, L.N. (2021). "IMA–CNMNC approved mineral symbols". Mineralogical Magazine. 85 (3): 291–320. :2021MinM...85..291W. :10.1180/mgm.2021.43.  235729616.
  2. http://rruff.geo.arizona.edu/doclib/hom/pigeonite.pdf Handbook of Mineralogy
  3. https://www.webmineral.com/data/Pigeonite.shtml Webmineral data
  4. http://www.mindat.org/min-3210.html Mindat.org
  5. "Calcic Clinopyroxene".
  6. Nesse, William (2012). Introduction to Mineralogy (Second ed.). Oxford University Press. p. 300.
  7. Winchell, Alexander N. (1900). "Mineralogical and petrographic study of the gabbroid rocks of Minnesota, and more particularly, of the plagioclasytes". The American Geologist. 26 (4): 197–245.