世界中の多様な声が集い、言葉の力を再確認する場として知られるPENワールド・ヴォイセズ・フェスティバル。このイベントは、非営利団体であるPENアメリカが主催し、文学の振興、表現の自由の擁護、そして国境を越えた作家同士の連帯を目的として開催されてきました。ニューヨークとロサンゼルスを拠点に、読書会や討論会、対談などを通じて、新進気鋭の作家から世界的権威までを幅広く紹介しています。
Key Facts
- 設立:2005年にサルマン・ラシュディ、エスター・アレン、マイケル・ロバーツによって創設。
- 主催:表現の自由を推進する非営利組織「PENアメリカ」。
- 主な活動:国際的な文学作品の紹介、作家による朗読、社会的な議論を深めるディベートの実施。
- 規模の拡大:ニューヨーク以外にも、シカゴやマイアミなど全米の主要都市へサテライトイベントを展開。
- 近年の動向:政治的混乱や人権問題、ジェンダーと権力の関係など、現代的な社会課題に焦点を当てたプログラムを強化。
フェスティバルの歩みと進化
黎明期から成長へ(2005年〜2011年)
2005年にニューヨークで産声を上げた第1回フェスティバルには、45カ国から多彩な作家が集結しました。ポール・オースターやウォレ・ショインカなど、文学界の巨匠たちが参加し、文学と権力、あるいは紛争地イラクの現状といった重厚なテーマが議論されました。
2006年には「信仰と理性」をテーマに掲げ、マーガレット・アトウッドやオルハン・パムクら137名の作家が登壇。この時の議論はPBSのテレビシリーズとしても展開されるなど、大きな社会的反響を呼びました。その後、カロ・ルウェリンがディレクターに就任したことで、ノーベル賞作家の招聘や「トランスレーション・スラム(翻訳対決)」の導入など、プログラムがさらに多様化し、参加者数も飛躍的に増加しました。
芸術的アプローチと社会への問い(2012年〜2017年)
2012年の開催では、文学を枠に留めない試みが目立ちました。メトロポリタン美術館での音楽と文学の融合パフォーマンスや、アーティストコミュニティでの「文学サファリ」など、体験型のイベントが導入されました。
2017年には、政治的な緊張が高まる時代背景を受け、「ジェンダーと権力」に焦点を当てたキュレーションが実施されました。表現の自由への脅威や人権問題に立ち向かうため、作家や思想家が市民と直接対話するプラットフォームとして機能し、差別や孤立主義への抵抗を訴えました。
「抵抗と再想像」の時代(2018年)
2018年には、チップ・ロリー氏の指揮のもと「Resist and Reimagine(抵抗し、再想像する)」というテーマが掲げられました。50カ国から200名以上の表現者が集まり、米国内の分断や世界的な権利侵害に対する抵抗をテーマに90以上のプログラムが展開。ヒラリー・ロダム・クリントン氏が登壇し、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ氏と対談したことは大きなハイライトとなりました。
開催概要まとめ
| 年度 | 主なテーマ・特徴 | 注目ポイント |
|---|---|---|
| 2005年 | 創設・国際文学の紹介 | 45カ国から作家が集結した記念すべき第1回 |
| 2006年 | 信仰と理性 (Faith & Reason) | PBSでのテレビシリーズ化などメディア展開 |
| 2007-11年 | 規模拡大と多様化 | ノーベル賞作家の登壇、全米主要都市への展開 |
| 2012年 | 芸術的融合 | 美術館での公演や体験型「文学サファリ」 |
| 2017年 | ジェンダーと権力 | 人権問題と表現の自由への挑戦にフォーカス |
| 2018年 | 抵抗と再想像 | 200名以上の参加者、政治的分断へのアプローチ |
2024年の開催中止について
長年にわたり文学の自由を象徴してきた本フェスティバルですが、2024年の開催は見送られることとなりました。これは、パレスチナでのジェノサイドに対するPENアメリカの姿勢に抗議し、多くの作家が年次賞のノミネートから辞退したことに伴う決定です。表現の自由を掲げる組織でありながら、特定の政治的状況への対応を巡って、作家コミュニティとの間に深刻な乖離が生じた結果といえます。
Frequently Asked Questions
PENワールド・ヴォイセズ・フェスティバルとはどのようなイベントですか?
PENアメリカが主催する国際的な文学祭で、世界中の作家や思想家が集まり、朗読や討論を通じて文学の価値と表現の自由を称えるイベントです。
どのような人物が参加してきましたか?
サルマン・ラシュディをはじめ、マーガレット・アトウッド、トニ・モリスン、オルハン・パムクなどのノーベル賞作家や、ヒラリー・クリントン氏のような政治的リーダーまで、多岐にわたる著名人が登壇しています。
フェスティバルではどのような内容が行われていましたか?
単なる朗読会だけでなく、社会問題(人権、ジェンダー、政治)に関するディベート、翻訳の技術を競うスラム、音楽と文学を融合させたパフォーマンスなど、形式に捉われないプログラムが実施されてきました。
なぜ2024年のフェスティバルは中止になったのですか?
パレスチナ情勢に対するPENアメリカの対応に不満を抱いた多くの作家が、賞のノミネート辞退などの抗議行動を起こしたため、開催が困難となり中止となりました。
References
- "PEN World Voices Festival". PEN America. 2019. Archived from the original on December 14, 2019. Retrieved December 14, 2019.
- Photo Gallery & Audio Library.
- "Journal of a Prisoner - PEN America". pen.org. 28 July 2005. Retrieved 2018-10-17.
- "PEN American Center - World Voices 2006 Media Library". 2006-10-11. Archived from the original on 2006-10-11. Retrieved 2018-10-17.
- Schuessler, Jennifer (27 February 2018). "Hillary Clinton to Speak at PEN World Voices Festival". The New York Times. Retrieved 2018-10-17.
- Oladipo, Gloria (26 April 2024). "PEN America cancels festival after authors drop out in support of Gaza". The Guardian.