1953年にフランスの地で産声を上げたパリ・レビュー(The Paris Review)は、単なる文芸誌の枠を超え、20世紀から21世紀にかけての文学的遺産を保存し続ける文化的なアーカイブとしての役割を果たしてきました。批評に偏らず、純粋な創作活動としてのフィクションや詩を重視する姿勢は、当時の出版界に新しい風を吹き込みました。
Key Facts
- 創刊: 1953年春、パリにてハロルド・L・ヒュームズ、ピーター・マシスン、ジョージ・プリンプトンらによって設立。
- 本拠地: 1973年よりアメリカ・ニューヨーク市へ移転。
- 象徴的コンテンツ: 作家の創作プロセスを深掘りするインタビューシリーズ「Writers at Work」で世界的に知られる。
- 運営形態: 非営利団体「パリ・レビュー財団」によって支えられている。
- 発行頻度: 年4回の季刊誌として発行。
文学的対話の極致「Writers at Work」
本誌を世界的に有名にしたのが、作家への詳細なインタビューを掲載する「Writers at Work」シリーズです。アーネスト・ヘミングウェイやT.S.エリオット、ウラジーミル・ナボコフ、パブロ・ネルーダといった、文学史に名を刻む巨匠たちの思考や執筆術が記録されています。この試みは、単なる取材ではなく、文化的な保存活動として極めて高い価値を持つと評されています。
このシリーズの原点は、創刊編集者のジョージ・プリンプトンがケンブリッジ大学時代に親交のあったE.M.フォースターに行ったインタビューにあります。これがきっかけとなり、ページ上で展開される「質の高い対話」のスタンダードが確立されました。
パリからニューヨークへ:変遷する編集体制とビジョン
戦後のパリは、GI法(復員軍人援護法)を利用して留学した若きアメリカ人作家たちが集う、創造的でコストパフォーマンスの高い拠点でした。初期の編集部は、出版社の小さな一室や、セーヌ川に停泊していた穀物運搬船などを拠点に活動し、カフェ・ド・トゥルノンを社交場として文学的な議論を戦わせていました。
1973年に拠点をニューヨークへ移した後は、プリンプトンの自宅アパートが編集部となりました。彼は2003年に没するまで編集長を務め、誌面の方向性を決定づけました。その後、ブリジット・ヒューズ(初の女性編集長)、フィリップ・グーレビッチ、ロリン・スタインを経て、現在はエミリー・ストークスが編集長を務めています。
時代の変化に合わせ、デジタル戦略も強化されました。2010年にはインタビューアーカイブの全公開を行い、2012年にはiOS向けアプリをリリース。また、2021年にはマット・ウィリーによるリデザインが行われ、1960年代後半から70年代初頭のミニマリズムを彷彿とさせる装丁へと回帰しました。
新進気鋭の才能を世に送り出す登竜門
パリ・レビューは、後に世界的な名声を得る作家たちの初期作品をいち早く掲載してきたことでも知られています。サミュエル・ベケットの『モロイ』の一部や、ジャック・ケルアックの短編「メキシカン・ガール」などがその例です。また、フィリップ・ロスやジョナサン・フランゼンといった作家の重要作が、世に出る前に本誌に掲載されていました。
現在でも、アイシャ・サバティーニ・スローンによるコラム「デトロイト・アーカイブ」のように、現代的な視点を持つ新しい才能に門戸を開き続けています。
芸術との融合と文学賞の展開
本誌は文字だけでなく、視覚芸術との連携も重視しています。1964年から始まったプリント・ポスターシリーズでは、アンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタイン、デヴィッド・ホックニーなど、戦後のニューヨークを代表するアーティストたちの作品を掲載し、文学と美術の境界を曖昧にする試みを行いました。
また、毎年「スプリング・レヴェル(Spring Revel)」という祝祭的なガラを開催し、以下の3つの賞を授与しています。
| 賞名 | 対象・特徴 | 賞品・備考 |
|---|---|---|
| ハダダ賞 (Hadada Award) | 文学界への多大な貢献をした人物や団体 | ブロンズ像の小像 |
| プリンプトン賞 (Plimpton Prize) | 新進または未発表作家による最高のフィクション・詩 | 賞金10,000ドルと彫刻入りダチョウの卵 |
| テリー・サザン賞 (Terry Southern Prize) | ユーモア、機知、洒脱(スプレッツァトゥーラ)に優れた作品 | 賞金5,000ドル |
歴史の裏側:CIAとの関わりについて
2007年、ニューヨーク・タイムズ紙の報道により、共同創設者の一人であるピーター・マシスンが創刊当時、CIA(中央情報局)に雇用されていたことが明らかになりました。マシスンはパリでの諜報活動の「隠れ蓑」として本誌を利用していたと後に認めています。
ただし、歴史家の分析によれば、誌面の内容が直接的にCIAに操作されていたわけではなく、編集上の独立性は保たれていたとされています。間接的に、CIAが支援していた「文化自由会議(CCF)」系の雑誌に再版記事を販売することで利益を得ていたという構造的な繋がりはあったものの、政府の意向で内容が決定されていたわけではないと結論づけられています。
Frequently Asked Questions
パリ・レビューはどのような雑誌ですか?
1953年に創刊された英語の季刊文芸誌です。批評よりもフィクションや詩などの創作作品を重視し、世界的な作家への深いインタビュー記事で知られています。
「Writers at Work」とは何ですか?
著名な作家たちの執筆プロセスや思考を掘り下げるインタビューシリーズです。文学史上の巨匠たちの言葉が記録されており、作家志望者や研究者にとって極めて重要な資料となっています。
現在、どこで発行されていますか?
創刊時はパリでしたが、1973年以降はアメリカのニューヨーク市に拠点を置いて発行されています。
どのような賞を設けていますか?
文学界への貢献を称える「ハダダ賞」、新進作家向けの「プリンプトン賞」、そしてユーモアに優れた作品に贈られる「テリー・サザン賞」の3つを毎年授与しています。
CIAとの関係があったというのは本当ですか?
共同創設者のピーター・マシスンが当時CIAの agent であり、雑誌を活動のカバー(隠れ蓑)にしていたことは事実です。しかし、編集内容自体は独立しており、政府の指示を受けていたわけではないとされています。
References
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"At that time, Paris was a lively center of literary activity, inexpensive, a postwar period with many young American writers there on the G.I. Bill."
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