地球上の熱帯地域、特に赤道から南北25度以内に広がる熱帯雨林で見られる特徴的な土壌がOxisol(オキシソル)です。USDA(米国農務省)の土壌分類体系における一つのオーダー(土壌群)であり、その名の通り「酸化物(Oxide)」が支配的な土壌であることを意味しています。世界土壌参照基準(WRB)では、主にフェラルソル(Ferralsols)に分類されますが、一部はプランソソルやニティソルに該当することもあります。
かつてはラテライト土壌とも呼ばれていたこの土壌は、極めて高度な風化が進んでいることが最大の特徴です。

Key Facts
- 分布:主に南米やアフリカの安定した大陸地塊(クラトン)などの熱帯地域に分布。
- 外観:鉄(III)やアルミニウムの酸化物・水酸化物が豊富に含まれるため、赤色や黄色を呈する。
- 化学的特性:風化しやすい鉱物が極めて少なく(10%以下)、陽イオン交換容量(CEC)が低い。
- 肥沃度:可溶性ミネラルが流出しているため、本来は不毛な土壌である。
- 主な用途:ゴムやカカオなどの熱帯作物の栽培。現代的な施肥管理により大豆栽培(ブラジルなど)も行われる。
オキシソルの形成プロセスと組成
オキシソルは、高温多湿な気候条件下で、風化(Weathering)、腐植化、そして動物による土壌撹拌(ペドターベーション)というプロセスを経て形成されます。特に激しい降雨による「溶脱(Leaching)」が重要な役割を果たしており、土壌中の可溶性ミネラルが洗い流されることで、化学的に非常に安定した酸化物だけが残ります。
成分としては、石英やカオリナイトといった粘土鉱物のほか、少量の有機物が含まれています。しかし、植物の成長に必要な栄養分を保持する能力(陽イオン交換容量)が低く、リン酸が鉄やアルミニウムの酸化物に強く固定されるため、植物が吸収しにくい性質を持っています。

世界的な分布と地質学的背景
現代のオキシソルは、南米やアフリカの非常に安定した地質構造の上に存在しています。東南アジアでは、シメリア大陸の残骸やシャン・タイ地塊などの地域で見られます。例えばタイのコラート高原では、第三紀初期の湿潤な環境で形成された鮮やかな赤色の「ヤソトン土壌」が確認されており、シロアリによる生物撹拌が現在も進行しています。
一方で、かつて熱帯雨林に覆われていたオーストラリアの一部では、気候の乾燥化に伴いオキシソルが硬い鉄鉱石の被覆層(アイアンストーン)へと変化し、その上にはわずかな土壌しか形成されない状況となっています。
地球史におけるオキシソル
化石土壌の研究によれば、大気中に遊離酸素が現れた約22億年前からオキシソルの原型は存在していました。また、中生代や古新世のような温暖な時期には、現在の北米や欧州のような冷涼な地域までオキシソルが広がっていたと考えられています。ただし、その不毛さゆえに、植物がこの土壌に適応して植生を広げるまでには、ウルティソルやアルフィソルよりも長い時間を要したと推測されています。
農業利用と管理の課題
熱帯雨林の豊かな植生があるため、かつては土壌自体も肥沃であると考えられていました。しかし実際には、雨水が林床の落葉層を通過する際に酸性化し、土壌からミネラルを奪い去っています。そのため、森林の植物は土壌からではなく、分解され始めたばかりの落葉層から直接栄養を吸収するという戦略をとっています。
農業利用においては、カカオやゴムなどの永年作物や、一部では稲作に利用されます。低所得地域での耕作は、前述の低い陽イオン交換容量やリン酸固定の問題から困難を極めます。しかし、石灰の投入や化学肥料による集中的な管理が可能な地域では、高い生産性を上げることが可能です。ブラジルにおける近代的な大豆栽培はその代表例です。
オキシソルの分類(亜群)
| 亜群名 | 特徴・気候条件 |
|---|---|
| Aquox | 年間の大半、地下水位が地表付近にある土壌 |
| Perox | 降水量が蒸発散量を常に上回る、継続的に湿潤な気候の土壌 |
| Torrox | 乾燥気候下の土壌。過去の湿潤期に形成された古土壌(Paleosols)であり、主に南部アフリカに分布 |
| Ustox | 半乾燥および亜湿潤気候の土壌 |
| Udox | 湿潤気候の土壌 |
Frequently Asked Questions
なぜオキシソルは赤色や黄色をしているのですか?
土壌中に鉄(III)やアルミニウムの酸化物および水酸化物が高濃度で含まれているためです。これらが天然の染料のような役割を果たし、土壌に特徴的な色を与えています。
オキシソルは農業に適していますか?
自然状態ではミネラルが乏しく、リン酸が固定されやすいため不毛な土壌です。しかし、適切な石灰の散布や肥料の投入といった現代的な農業技術を用いることで、大豆などの作物栽培が十分に可能です。
「ラテライト」と「オキシソル」はどう違うのですか?
ラテライトは伝統的な呼称であり、高度に風化した熱帯土壌を指します。一方、オキシソルはUSDA(米国農務省)による科学的な土壌分類体系に基づいた名称です。
オキシソルが形成されるために必要な条件は何ですか?
主に「高温多湿な気候」と「長い時間(安定した地質)」が必要です。激しい降雨による溶脱と、それに伴う激しい化学的風化が繰り返されることで形成されます。
熱帯雨林の植物はどうやって栄養を得ているのですか?
オキシソル自体には栄養が少ないため、植物は地表に積もった落葉や有機物が分解される過程で放出される栄養分を、表層で効率よく吸収することで生存しています。
References
- IUSS Working Group WRB (2022). "World Reference Base for Soil Resources, fourth edition" (PDF). International Union of Soil Sciences, Vienna.
- Lofjle, E.; Kubiniok, J. Landform development and bioturbation on the Khorat plateau, Northeast Thailand, Nat.Hist.Bull.Siam Soc. (56), 1996 "Archived copy" (PDF). Archived from the original on 2011-07-21. Retrieved 2010-12-23.
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