職場における安全と健康の確保は、企業の持続可能性にとって不可欠な要素です。世界中で労働安全衛生への関心が高まる中、組織が体系的にリスクを管理するための労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS:Occupational Health and Safety Management Systems)という枠組みが発展してきました。単なるルールの遵守ではなく、組織全体で安全性能を向上させるための標準化の歴史を紐解きます。
Key Facts
- 1993年にBSIが世界初の労働安全衛生マネジメントシステム規格(BS 8750)を策定。
- 規格の乱立による混乱を解消するため、国際的な協力体制による統一規格の必要性が生じた。
- 1999年に国際的な標準として「OHSAS 18000シリーズ」が誕生。
- 2018年、ISOによる「ISO 45000シリーズ」の発行に伴い、移行が進んだ。
標準化への道のりと初期の取り組み
労働安全衛生に関する体系的なアプローチは、1990年代に本格化しました。英国規格協会(BSI)は、社会的な関心の高まりに応える形で、1993年にBS 8750を、続く1996年にはBS 8800を公開しました。これらは、組織が安全衛生を管理するための初期の指針となりました。
しかし、1999年以前の状況は混沌としていました。各国で独自の国家規格や企業独自のスキームが乱立していたため、市場には断片化が起こり、個々の規格の信頼性が損なわれるという課題に直面していたのです。世界中の組織は、安全衛生パフォーマンスを改善するための統一された基準を強く求めるようになりました。
OHSAS 18000シリーズの誕生と展開
こうした混乱を解消するため、「労働安全衛生評価シリーズ・プロジェクトグループ(Occupational Health and Safety Assessment Series Project Group)」という国際的な協力体制が構築されました。このグループには、国家規格団体、学術機関、認定・認証機関、そして安全衛生専門機関の代表者が集結し、BSIが事務局を務めました。
既存の優れた規格やスキームを統合し、1999年3月に世界初の国際的な労働安全衛生マネジメントシステム規格であるOHSAS 18000シリーズが発表されました。このシリーズは、以下の2つの仕様で構成されていました。
- OHSAS 18001:マネジメントシステム構築のための要求事項を規定。
- OHSAS 18002:実装に向けた具体的なガイドラインを提供。
その後、国際労働機関(ILO)の条約やガイドライン、および各国の国家規格を反映させるため、2007年7月に内容の更新が行われ、より実効性の高い基準へと進化しました。
ISO 45000への移行と現代の基準
マネジメントシステムの国際標準化はさらに進み、2018年3月には国際標準化機構(ISO)によってISO 45000シリーズが発行されました。これにより、労働安全衛生の管理はより広範な国際的合意に基づいた枠組みへと移行しました。これを受けて、OHSAS 18000シリーズを推進してきたプロジェクトグループも、ISO 45000シリーズを採用することとなりました。
| 時期 | 主要な規格・出来事 | 特徴・役割 |
|---|---|---|
| 1993年 / 1996年 | BS 8750 / BS 8800 | BSIによる世界初の安全衛生マネジメント規格 |
| 1999年 | OHSAS 18000シリーズ | 国際的な統一アプローチの導入(18001/18002) |
| 2007年 | OHSAS 18000 更新 | ILOのガイドラインや国家規格を反映 |
| 2018年 | ISO 45000シリーズ | ISOによる国際規格化と移行の完了 |
Frequently Asked Questions
OHSMSとは何のことですか?
OHSMS(Occupational Health and Safety Management Systems)とは、職場における労働安全衛生を体系的に管理し、継続的に改善するための仕組みのことです。
なぜOHSAS 18000が必要だったのですか?
1999年以前は、国や組織ごとに異なる規格が乱立しており、市場に混乱が生じていたため、世界共通の統一されたアプローチが必要とされました。
OHSAS 18001と18002の違いは何ですか?
OHSAS 18001はシステムを構築するために満たすべき「要求事項」を定めたものであり、OHSAS 18002はそれをどのように導入するかを示す「実施ガイドライン」でした。
現在の世界的な標準規格は何ですか?
2018年に発行されたISO 45000シリーズが現在の国際標準となっており、従来のOHSAS 18000シリーズから移行されています。
OHSAS 18000の策定にはどのような組織が関わりましたか?
国家規格団体、学術機関、認定機関、認証機関、および労働安全衛生の専門機関など、多様な分野の代表者が協力して策定しました。