NOAA-19:気象観測の歴史を締めくくった最後のTIROSシリーズ衛星
地球の気象変動を監視し、精緻な予報を可能にするために運用されたアメリカの気象衛星シリーズ。その最後を飾ったのがNOAA-19(打ち上げ前の名称はNOAA-N Prime)です。2009年から2025年まで、長きにわたり地球の atmospheric(大気)の状態を監視し続けたこの衛星の軌跡と、搭載された高度な観測技術について解説します。
Key Facts
- ミッション期間: 2009年2月6日の打ち上げから2025年8月13日の運用停止まで、約16年間にわたり稼働。
- 役割: NOAA-18の後継として、午後の太陽同期軌道における主要な観測機として運用。
- 主要機能: 雲の画像、大気の温度・湿度プロファイル、オゾン分布、宇宙環境の測定。
- 特筆事項: 製造過程での重大な事故により、多額の修理費用が発生した経緯を持つ。
ミッションの概要と運用軌道
NOAA-19は、米国海洋大気庁(NOAA)が運用するTIROSプログラムの最終機として設計されました。この衛星は太陽同期軌道(地球の自転に合わせて常に同じ地方的な太陽時間に上空を通過する軌道)に投入され、特に午後の時間帯の観測を担いました。
当初の設計寿命は2年とされていましたが、実際には16年を超える驚異的な運用期間を達成しました。2009年6月からはNOAA-18に代わり、午後の主要衛星として気象予測モデルに不可欠なデータを供給し続けました。

高度な観測インストゥルメント(計測機器)
NOAA-19には、気象予測や気候変動分析に不可欠な8つの高度な計測機器が搭載されていました。これらの機器は、可視光からマイクロ波まで幅広い波長を用いて地球をスキャンします。
大気と地表のイメージング
- AVHRR/3(高度高解像度放射計): 可視光、近赤外線、熱赤外線を用いて、雲、植生、海氷、エアロゾルなどを詳細に観測する主 imaging システムです。
- SBUV/2(太陽後方散乱紫外線放射計): オゾン層の分布を高度別に測定し、地球全体のオゾンマップを作成します。
温度・湿度のプロファイリング
- HIRS/4(高解像度赤外線サウンダー): 二酸化炭素、水蒸気、オゾンの量を測定し、大気中の高度分布を特定します。
- AMSU-A(高度マイクロ波サウンディングユニット): 地表や大気から放射される自然なマイクロ波信号を測定します。
- MHS(マイクロ波湿度サウンダー): EUMETSATから提供された機器で、大気中の湿度プロファイルの測定に特化しています。
環境監視と救難支援
- SEM-2(宇宙環境モニター): 放射線帯の強度や荷電粒子のフラックスを測定し、宇宙環境を監視します。
- ADCS(高度データ収集システム): ブイや気球、さらには回遊動物に装着された送信機からの環境データを収集し、地上へ転送します。
- SARSAT(捜索救難衛星支援追跡システム): 航空機や船舶からの緊急信号を検知し、遭難者の位置を特定して救助活動を支援します。
製造時の重大事故と克服
NOAA-19の歴史において特筆すべきは、打ち上げ前の製造段階で発生した深刻な事故です。2003年9月6日、カリフォルニア州のロックヒード・マーティン社工場にて、衛星を垂直から水平へ回転させる作業中に機体が転倒し、床に落下しました。
調査の結果、作業用カートの固定ボルトが適切に管理されていなかったという手続き上の不備が原因であると判明しました。この事故による修理費用は約1億3,500万ドルに達し、メーカー側が利益を放棄して補填し、残額を米国政府が負担するという異例の事態となりました。

ミッションの終焉と次世代への移行
長きにわたる運用を経て、NOAA-19は2025年8月9日にバッテリー故障に見舞われました。これにより、予定されていた8月18日の運用停止を早め、8月13日 16:55 UTCに正式に運用を終了(デコミッショニング)しました。
衛星は軌道上に残されたまま、送信機を停止した安全な電気状態に置かれています。NOAAシリーズの役割は、その後、Suomi NPPや共同極軌道衛星システム(JPSS)へと引き継がれ、より高度な観測体制へと進化しています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 打ち上げ日 | 2009年2月6日 |
| 運用終了日 | 2025年8月13日 |
| 打ち上げロケット | Delta II 7320-10C |
| 質量 / サイズ | 1,440 kg / 長さ 4.19m × 直径 1.88m |
| 軌道 | 太陽同期軌道(近地点 846km / 遠地点 866km) |
| 製造元 | Lockheed Martin |
Frequently Asked Questions
NOAA-19の主な目的は何でしたか?
主に地球全体の雲の画像や、大気の温度・湿度の垂直プロファイルを測定し、数値気象予測モデルや海洋予測に利用するためのデータを提供することでした。
製造時にどのような事故が起きたのですか?
2003年に工場内で機体を回転させる際、固定ボルトの不備により衛星が床に落下し、甚大な損害を受けました。多額の費用をかけて修理され、その後無事に打ち上げられました。
なぜ運用が終了したのですか?
2025年8月に発生したバッテリー故障が直接的な原因となり、予定より数日早く運用を停止しました。
運用終了後の衛星はどうなりますか?
大気圏に再突入させて廃棄(デオービット)させるのではなく、送信機をオフにした安全な状態で軌道上に留められています。
動物のデータ収集とは具体的にどのようなことですか?
ADCS(高度データ収集システム)を用いて、ウミガメやクマなどの回遊動物に装着された送信機からのデータを収集し、生態系や環境の調査に役立てていました。
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