Nature Portfolio:科学出版の世界的権威とその多角的な展開
科学界において最も影響力のある名称の一つであるNature Portfolio(旧称:Nature Publishing Group / Nature Research)は、国際的な学術出版大手であるSpringer Natureの主要部門です。1869年の創刊以来、最先端の科学的知見を世界に届ける役割を担い、学術雑誌やオンラインデータベース、専門的なサービスの提供を通じて、医学や自然科学の発展を支え続けています。
Key Facts
- 設立:1869年(Nature誌の創刊)
- 親会社:Springer Nature(2015年にSpringer Science+Business Mediaと合併)
- 主要拠点:英国ロンドン(本社)のほか、東京、ニューヨーク、ソウルなど世界各地に展開
- 出版物:旗艦誌『Nature』をはじめ、150誌以上の学術誌を運営(2020年時点)
- 展開分野:自然科学、医学、一般向け科学雑誌(Scientific Americanなど)
出版ポートフォリオと多様なメディア展開
Nature Portfolioの中核となるのは、週刊の多分野総合誌である『Nature』です。この旗艦誌を中心に、特定の研究分野に特化した「Nature-titled」誌や、2000年から展開しているレビュー専門の「Nature Reviews」シリーズなど、多層的な出版体制を構築しています。
また、学術的な厳格さを維持しつつ、より広い層へ科学を普及させる取り組みも行っています。例えば、16の言語で展開される一般向け雑誌『Scientific American』の出版や、オープンアクセス(誰でも無料で閲覧可能な形式)の代表格である『Scientific Reports』や『Nature Communications』などの運営が挙げられます。
学術誌の構成と変遷
2020年時点で、同部門は156の学術雑誌を出版しています。かつての「Nature Clinical Practice」シリーズは、2009年に「Nature Reviews」へと統合・リブランドされました。さらに、パートナー企業と共に展開する「npj (Nature Partner Journals)」シリーズなど、時代のニーズに合わせた柔軟な出版形態を採用しています。
ビジネスモデルとアクセス権の議論
収益の大部分は、個人や研究機関による購読料によって賄われています。一方で、研究成果の迅速な普及を目的としたオープンアクセスへの移行も進んでおり、40以上の雑誌で著者が費用を負担することで論文を無料公開する仕組みを導入しています。
アクセス権を巡っては、過去に議論も起きています。2010年にはカリフォルニア大学の図書館が購読料の高騰に抗議し、ボイコットの可能性を示唆しましたが、その後、新たな出版モデルの模索に向けて合意に至りました。
デジタル配信の試みと課題
2014年12月、Natureは全雑誌のコンテンツをオンラインで無料公開すると発表しました。しかし、これは「ReadCube」というデジタル権利管理(DRM)システムを介した「閲覧専用」のアクセスであり、ダウンロードやコピー、印刷は制限されていました。この措置は、非公式な共有(ダークシェアリング)を防ぎつつ分析データを活用するための妥協案でしたが、完全なオープンアクセスではないとして批判を受けた経緯があります。
教育および研究支援サービス
Nature Portfolioは単なる出版社に留まらず、教育やキャリア支援など、科学コミュニティを包括的にサポートするサービスを展開しています。
- 電子教科書:2011年に大学市場向けに『Principles of Biology』などの電子教科書を導入し、従来の出版モデルの刷新を試みました。
- Nature Index:高品質な自然科学・健康科学誌への寄稿度を追跡するオープンデータベースで、研究機関の貢献度を可視化しています。
- Nature Careers:科学者のための求人情報やキャリアアドバイスを提供しています。
- ENCODE連携:ヒトゲノム配列の特定を目指すプロジェクト「ENCODE」のコンパニオンサイトを運営しています。
過去には、学生向け学習スペース「Scitable」やプレプリントサーバー「Nature Precedings」、文献管理サービス「Connotea」などの実験的なオンラインサービスも提供していましたが、現在は終了または形態を変更しています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 創設者 | ノーマン・ロックヤー、アレクサンダー・マクミラン |
| 主要製品 | Nature誌、Nature Reviews、Scientific Reports、電子教科書 |
| 従業員数 | 合併後、グループ全体で約13,000人規模 |
| 主な拠点 | ロンドン、ニューヨーク、東京、パリ、ベルリン、上海など |
| アクセス形式 | 購読制およびオープンアクセス(ハイブリッド型) |
Frequently Asked Questions
Nature PortfolioとSpringer Natureの違いは何ですか?
Springer Natureは親会社となる出版グループ全体を指し、Nature Portfolioはその中の部門の一つです。Nature Portfolioは主に『Nature』ブランドの学術誌や関連サービスを運営しています。
オープンアクセス論文とは何ですか?
購読料を支払わなくても、インターネットを通じて誰でも無料で閲覧・利用できる論文のことです。Nature Portfolioでは、著者が出版費用を負担することで、論文をオープンアクセスとして公開できる仕組みを導入しています。
Nature Indexとはどのような指標ですか?
独立した研究者グループが選定した高品質な自然科学・健康科学誌への寄稿実績を追跡するデータベースです。これにより、研究機関や著者の学術的な貢献度を客観的に測定できます。
一般の人でも読めるNatureのコンテンツはありますか?
はい。専門的な学術誌のほか、一般向けに科学情報を届ける『Scientific American』を16言語で出版しており、幅広い層が科学に触れられる体制を整えています。
論文の無料公開に関する制限はありますか?
一部の無料公開コンテンツでは、DRM(デジタル権利管理)システムにより、閲覧のみに制限され、コピーやダウンロードが禁止されている場合があります。また、著者が自身のウェブサイト等に論文を掲載できるのは、通常、出版から6ヶ月経過後となっています。