ニュージーランド国立図書館:国家の記憶を保存する知の殿堂
ニュージーランドの首都ウェリントンに本拠を置くニュージーランド国立図書館(Te Puna Mātauranga o Aotearoa)は、単なる本の保管場所ではありません。ここは、マオリ文化から近代史に至るまで、アオテアロア(ニュージーランドの別名)のアイデンティティを形作る膨大な知識と記録が集結する、国家的な知の拠点です。
1965年の設立以来、同館は複数の重要な図書館機能を統合し、国民が自由に知識にアクセスできる環境を整備してきました。現在は内務省の管轄下にあり、物理的な蔵書のみならず、最先端のデジタルアーカイブを通じて世界中に情報を発信しています。

主要な事実(Key Facts)
- 設立年:1965年(国立図書館法に基づき統合)
- 所在地:ウェリントン、ソーンドン、モールズワース通り
- 蔵書規模:一般コレクション約151万点、アレクサンダー・ターンブル図書館約533万点
- 運営組織:内務省(Department of Internal Affairs)の一部署
- 代表的なデジタルサービス:歴史的新聞などを閲覧できる「Papers Past」
図書館の成り立ちと組織の変遷
現在の国立図書館は、1965年に「総会図書館(General Assembly Library)」「アレクサンダー・ターンブル図書館」「国立図書館サービス」の3つの組織が統合されて誕生しました。もともと総会図書館は、議会閉会中に一般公開を行うなど、実質的な国立図書館としての役割を担っていました。
その後、1985年には総会図書館が再び議会サービスへと戻り、「議会図書館」として独立しました。この分離に伴い、国立図書館はそれまで総会図書館が収集していた膨大な国際的な蔵書の管理を引き継ぎ、世界的な視点を持つライブラリーとしての機能を強化しました。
![Reading room at National Library [pre-2009], Wellington](/images/e9/c5/e9c56b9d3770998cd82cdb8de5959ef51980f96dfed522ba4aadc91847ece183.jpg)
施設面では、2009年から2011年にかけて大規模な改修と拡張が計画されましたが、予算削減などの影響で規模が縮小されました。建物は2年間閉鎖されましたが、2012年6月にリニューアルオープンし、研究者が再び利用できるようになりました。
専門的なコレクションと貴重な記録
アレクサンダー・ターンブル図書館
国立図書館の内部にありながら、法律によって厳格に保護されているのがアレクサンダー・ターンブル図書館です。1919年にアレクサンダー・ターンブルの寄贈によって設立されたこの図書館は、ニュージーランドおよび太平洋地域の文化・歴史に関する包括的な資料を収集することを目的としています。
ここには、地図、写真、手稿、オーラルヒストリー、さらにはニュージーランドのウェブアーカイブなど、多岐にわたる専門コレクションが保管されており、国の至宝とも言える資料が揃っています。
He Tohu(ヘ・トフ)
特に重要な歴史的文書を展示する「He Tohu」ドキュメントルームでは、ニュージーランドの建国に関わる3つの至宝が公開されています。1835年の「独立宣言」、1840年の「ワイタンギ条約」、そして1893年の「女性参政権請願書」であり、これらは国家の歴史的転換点を象徴する文書です。

デジタル時代の取り組みと社会貢献
国立図書館は、物理的な壁を越えて知識を届けるデジタル戦略に注力しています。代表的なのが2001年に開始されたPapers Pastです。19世紀から20世紀の新聞や雑誌、日記などをデジタル化して無料で公開しており、2024年までにページ数は940万ページを超えました。最近では、AIが生成したテキストをユーザーが修正できる機能も導入されています。
また、教育支援として学校図書館への貸出サービスを提供しているほか、2007年に設立された「Aotearoa People's Network Kaharoa (APNK)」を通じて、地方の図書館に無料のインターネットアクセス環境を整備し、デジタル格差の解消に貢献しています。


国際蔵書を巡る論争と管理方針
近年、図書館は「海外出版コレクション」の整理という困難な課題に直面しました。2018年頃から、利用頻度の低い約62万冊の海外書籍を処分する計画が進められ、その一部をデジタルアーカイブの「Internet Archive」に寄贈し、デジタル化して公開する方針が打ち出されました。
しかし、この計画は作家や出版社、著作権保護団体から強い反発を受けました。著作権法への抵触や、物理的な本の喪失による研究への影響が懸念されたためです。激しい議論の末、図書館側は寄贈契約の再検討を表明し、2022年には新たな廃棄・処分ポリシーの策定に乗り出しました。最終的に、2025年には米国出版社からの異議申し立てを受け、一部の未使用書籍を廃棄することが確認されています。

施設・サービス概要まとめ
| 区分 | 主な内容・サービス | 特徴 |
|---|---|---|
| 一般コレクション | 国際的な書籍・資料 | 広範な知識へのアクセスを提供 |
| ターンブル図書館 | NZ・太平洋地域の歴史資料 | 法律で保護された希少コレクション |
| デジタルアーカイブ | Papers Past / ウェブアーカイブ | オンラインで無料公開、歴史的資料のデジタル化 |
| 教育・地域支援 | 学校貸出 / APNK | デジタルリテラシーの向上とアクセス確保 |
Frequently Asked Questions
Papers Pastではどのような資料が見られますか?
19世紀から20世紀にかけてのニュージーランドの新聞、雑誌、ジャーナル、個人の日記や手紙、そして議会文書などがデジタル化されており、誰でも無料で閲覧可能です。
アレクサンダー・ターンブル図書館は一般の国立図書館と何が違いますか?
主にニュージーランドと太平洋地域の文化・歴史に特化したコレクションを持っており、その蔵書は法律によって保護されているため、国立図書館の一般蔵書とは異なり、売却や処分が禁止されています。
He Tohuで展示されている最も重要な文書は何ですか?
1840年に締結された「ワイタンギ条約」をはじめ、1835年の「独立宣言」、1893年の「女性参政権請願書」の3点が、ニュージーランドの歴史を象徴する最重要文書として展示されています。
海外書籍の処分を巡る論争は何が原因でしたか?
大量の海外書籍をInternet Archiveに寄贈してデジタル化する計画に対し、著作権侵害の懸念や、物理的な資料を失うことによる研究への悪影響を危惧する作家や出版社、研究者グループが反対したためです。
学校や家庭学習向けのサービスはありますか?
はい。貸出サービスを通じて、学校やホームスクーリングを行う家庭向けにフィクションおよびノンフィクションの書籍を提供しています。
📸 フォトギャラリー


![Reading room at National Library [pre-2009], Wellington](/images/e9/c5/e9c56b9d3770998cd82cdb8de5959ef51980f96dfed522ba4aadc91847ece183.jpg)


