デルマス・オルフィラ・ルヴィエール解剖学博物館の歴史とコレクション
かつてフランス最大規模を誇ったデルマス・オルフィラ・ルヴィエール解剖学博物館は、医学的な知見と歴史的な標本が集結した稀有な施設でした。パリ第6区のパリ第5大学(ルネ・デカルト大学)医学部8階に位置していたこの博物館は、長きにわたり解剖学研究の拠点として機能していましたが、2005年頃に閉館し、その膨大なコレクションは保管庫へと移されました。その後、2011年にこれらの貴重な資料はモンペリエ大学に寄贈され、現在は同大学の医学部で公開されています。
Key Facts
- 元所在地:フランス・パリ第6区、パリ第5大学医学部8階
- 現在の所在:モンペリエ大学医学部(2011年より寄贈・展示)
- 規模:かつてフランス最大の解剖学博物館であった
- 所蔵数:人間および動物の解剖学的標本を約5,800点保有
- 主要コレクション:ポール・ブロカの脳鋳型や19世紀の蝋製人体模型など
博物館の歩み:誕生から統合まで
この博物館の起源は1794年にまで遡ります。解剖学の教授であったオノレ・フラゴナールが、パリ医学部の新しい解剖キャビネットのために標本を集め始めたことが始まりでした。フランス革命以前にも、ジャン=バティスト・シュエが美術学校に寄贈した1,000点以上の蝋製模型などのアマチュアコレクションが存在していましたが、それらは革命の混乱の中で散逸してしまいました。
その後、1832年にパリ医学部長に就任したマチュー・オルフィラによって、コレクションは大幅に拡充されました。ハンテリアン博物館の比較解剖学的なアプローチに触発されたオルフィラは、1844年に博物館を設立し、1847年には正式に「オルフィラ博物館」として開館しました。1881年時点の目録では約4,500点のアイテムが記録されていましたが、20世紀初頭には管理状態が悪化し、貴重なラウモニエの蝋製模型が照明の燃料として消費されるなど、多くの資料が失われるという悲劇に見舞われました。
衰退した博物館を再興させたのが、1947年に活動を開始したアンドレ・デルマス教授です。彼はオルフィラ博物館の修復と拡張に取り組み、同時にアンリ・ルヴィエール教授が収集したリンパ系のコレクション(ルヴィエール博物館)を統合しました。これにより、1953年からは医学部8階の広大な展示ホールとギャラリーを備えた現在の形態となりました。
圧巻の解剖学的コレクション
博物館には、人間と動物を合わせた約5,800点の標本が収蔵されており、医学的な多様性と歴史的な価値を兼ね備えていました。特に注目すべきは、著名な科学者や専門家による研究成果です。
主要な展示内容
- 脳と神経系:ポール・ブロカによる鳥類、哺乳類、人間の脳の鋳型。これには子供や犯罪者、様々な人種の脳に加え、ブロカ自身の脳も含まれていました。
- 比較解剖学:爬虫類や鳥類の比較解剖展示、および1797年にフラゴナールによって保存された小型の猿の標本。
- 骨格と内臓:骨格の成長段階を示す展示や、肝臓、心臓、肺、気管などの内臓(スプランクノロジー:内臓学)の鋳型、主要血管の標本。
- 病理と奇形:ラットを用いた脳の奇形研究(ジル・デルマス)、腎臓構造(オジエ)、気管(エラルプ)、食道(スッシニ)などの専門的なコレクション。
- 特殊標本:19世紀に処刑された犯罪者の頭部鋳型や、精神病院から収集された頭蓋骨。
- 芸術的標本:19世紀の有名な解剖学的蝋製模型であるスピッツナー・コレクション。
これらのコレクションは、単なる標本集ではなく、当時の医学的関心や研究手法を今に伝える歴史的資料としての側面を持っていました。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 設立の基礎 | 1794年 オノレ・フラゴナールによる収集 |
| 正式開館 | 1847年(オルフィラ博物館として) |
| 統合と再建 | 1947年以降 アンドレ・デルマスによる修復とルヴィエール博物館との統合 |
| 総標本数 | 約5,800点 |
| 現在の状況 | 2005年閉館 → 2011年モンペリエ大学へ移管 |
Frequently Asked Questions
この博物館は現在もパリで閲覧できますか?
いいえ、パリの施設は2005年頃に閉館しました。現在はコレクションがモンペリエ大学に寄贈されており、同大学の医学部で展示されています。
どのような種類の標本が展示されていましたか?
人間と動物の解剖標本、脳や内臓の鋳型、19世紀の蝋製人体模型、さらには犯罪者の頭部鋳型や精神疾患患者の頭蓋骨など、多岐にわたる標本が収蔵されていました。
ポール・ブロカのコレクションとは何ですか?
著名な解剖学者ポール・ブロカが作成した、人間(子供や犯罪者を含む)および動物の脳の鋳型コレクションです。彼自身の脳も含まれていたことで知られています。
博物館の名前にある「デルマス」「オルフィラ」「ルヴィエール」とは誰のことですか?
それぞれ、博物館の再興と統合に尽力したアンドレ・デルマス教授、19世紀に博物館を正式に設立したマチュー・オルフィラ、そしてリンパ系コレクションを築いたアンリ・ルヴィエール教授を指します。
なぜ一部の標本が失われたのですか?
20世紀初頭に博物館の管理状態が悪化したためです。例えば、貴重な蝋製模型が照明の燃料として消費されるなど、不適切な扱いにより多くの資料が失われました。