現代の動画配信や高精細な映像技術の礎となったMPEG-2は、映像と音声のデータを効率的に圧縮し、保存や伝送を可能にする国際標準規格です。ISO/IEC 13818として定義されており、ITU-TではH.222やH.262という名称でも知られています。最新のH.264やH.265に比べると圧縮効率は劣りますが、広範なハードウェア・ソフトウェアとの互換性を持つため、今なおデジタルテレビ放送やDVDなどの基幹技術として活用されています。
Key Facts
- 用途: 地上波・BS/CSデジタル放送、DVD-Video、Blu-rayのコンテナ形式などに採用。
- 特徴: 非可逆圧縮(lossy compression)を用いて、限られた帯域や容量で映像・音声を伝送。
- 互換性: MPEG-1ビデオストリームを再生可能であり、後方互換性に優れている。
- 音声: 5.1chマルチチャンネル対応のMPEG-2 BCや、高効率なAAC(Part 7)を定義。
- 特許: 世界的にほぼ失効しており(マレーシアを除く)、ライセンス料不要で利用可能な状況。
映像と音声の圧縮技術
ビデオ圧縮(Part 2 / H.262)
MPEG-2のビデオ規格は、前身のMPEG-1をベースにしつつ、アナログ放送で一般的だったインターレース方式(走査線を交互に描画する方式)への対応を追加した点が大きな特徴です。標準画質(SD)において1 Mbit/sを下回る低ビットレートでは最適に動作しませんが、放送品質の映像を安定して届ける能力に長けています。
オーディオ圧縮(Part 3 & Part 7)
音声面では、用途に応じて複数の方式が提供されています。Part 3では、最大5.1チャンネルのマルチチャンネル化を実現した「MPEG-2 BC(後方互換モード)」や、サンプリング周波数を半分に下げた「LSF(低サンプリング周波数)」を導入しました。一方、Part 7で定義されたAAC(Advanced Audio Coding)は、従来のハイブリッドフィルターバンクを排除した設計により、1〜48チャンネルという柔軟な構成と高い圧縮効率を実現しています。
データの格納形式:システム(Part 1)
MPEG-2では、圧縮されたデータをどのようにまとめるかという「コンテナ形式」を2種類定義しています。
- トランスポートストリーム (TS): 188バイトの固定パケットで構成され、放送波のようなストリーミング伝送向けに設計されています。データの開始・終了が不明確な媒体でも同期が取りやすく、DVBやATSCなどのデジタル放送で採用されています。
- プログラムストリーム (PS): オーバーヘッドが少なく、ハードディスクや光ディスクのようなランダムアクセスが可能な保存媒体向けに設計されています。DVD-VideoのVOBファイルなどがこれに該当します。

主要なアプリケーションと制限事項
DVD-Videoにおける運用
DVDではMPEG-2が採用されていますが、再生互換性を保つため厳格な制限が設けられています。解像度はNTSC方式で720×480など、PAL方式で720×576などが指定されており、最大ビットレートは映像ピークで9.8 Mbit/s、合計で10.08 Mbit/sに制限されています。音声はMP2やDolby Digital (AC-3)、DTSなどが利用可能です。
デジタル放送(ATSC / DVB)
北米のATSC規格では、放送用として最大19.39 Mbit/s、ケーブル用として38.8 Mbit/sのビットレートが許容されています。また、1080i(インターレース)信号の中でプログレッシブフレームを混在させる手法を用いることで、ニュース(60Hz)と映画(24Hz)の切り替え時に発生する遅延を最小限に抑える工夫がなされています。
Blu-ray Discでの扱い
Blu-rayでは、ビデオコーデックとしてMPEG-2、H.264、VC-1の3種類をサポートしています。初期の作品にはMPEG-2が多く使われましたが、現在はより高効率なH.264が主流です。ただし、内部のコンテナ形式には一貫してMPEG-2トランスポートストリームが使用されています。
MPEG-2規格の構成一覧
| パート | 名称 | 主な内容・役割 |
|---|---|---|
| Part 1 | Systems | TS(トランスポートストリーム)およびPS(プログラムストリーム)の定義 |
| Part 2 | Video | インターレース/プログレッシブ映像の圧縮方式(H.262) |
| Part 3 | Audio | マルチチャンネル対応および低サンプリング周波数の拡張 |
| Part 4 | Conformance testing | 適合性試験の規定 |
| Part 6 | DSM-CC | デジタルストレージメディアのコマンドおよび制御の拡張 |
| Part 7 | AAC | 高度オーディオ符号化(非後方互換の高効率フォーマット) |
Frequently Asked Questions
MPEG-2とMPEG-1の最大の違いは何ですか?
最大の相違点は、MPEG-2がインターレース映像をサポートしたことです。これにより、当時のアナログテレビ放送の形式に適合させることが可能になりました。また、音声面でも2チャンネル(ステレオ)限定だったMPEG-1に対し、MPEG-2は5.1chなどのマルチチャンネルに対応しています。
なぜ現在でもMPEG-2が使われているのですか?
H.264やH.265といった後継規格の方が圧縮効率は遥かに高いですが、MPEG-2は世界中の放送設備や再生機器に実装されており、圧倒的な互換性があるためです。特に既存のインフラを維持する必要がある放送業界では、信頼性の高い標準として根強く利用されています。
AACはMPEG-2の一部なのですか?
はい、AACはMPEG-2のPart 7として定義されています。ただし、それ以前のMPEGオーディオ規格(Part 3など)とは異なり、後方互換性を持たない独立した高効率なフォーマットとして設計されています。
MPEG-2の利用にライセンス料はかかりますか?
ほとんどの国で特許が失効しているため、現在は基本的に無料で利用可能です。米国では2018年に最後の特許が失効しました。ただし、マレーシアなど一部の地域では特許が残っており、2035年まで有効であるとされています。
TSファイルとPSファイルの違いは何ですか?
TS(トランスポートストリーム)は、データが途切れたり開始地点が不明だったりする放送波のような環境でも再生できるよう、小さなパケットに分割して送信する形式です。一方、PS(プログラムストリーム)はDVDのように、ディスク上の特定の場所に直接アクセスして再生する保存媒体向けに最適化された形式です。
References
- 1.85:1 and 2.35:1, among others, are often listed as valid DVD aspect ratios, but are wider film aspects with letterbox style padding to create a 16:9 image