アメリカ合衆国ニューメキシコ州のキャトロン郡、険しいモゴヨン山脈の懐に抱かれたモゴヨン(Mogollon)は、かつて金と銀の熱狂に沸いた伝説的な鉱山町です。シルバークリーク峡谷の底に位置するこの地は、現在は静寂に包まれたゴーストタウンとして知られていますが、その歴史には西部開拓時代の荒々しさと繁栄の記憶が刻まれています。

Key Facts
- 黄金時代の繁栄: 1890年代には3,000人から6,000人の鉱夫が集まる活気ある町だった。
- 莫大な資源量: ニューメキシコ州全体の銀生産量の約4分の1をこの地域の鉱山が担っていた。
- 過酷な環境: 繰り返される大火災と洪水に見舞われながらも、住民は石やアドベ(日干し煉瓦)で街を再建し続けた。
- 歴史的価値: 「ファニー・ヒル・ミルおよびカンパニー・タウン歴史地区」として米国国家歴史登録財に指定されている。
鉱山町の誕生と黄金期の喧騒
モゴヨンの歴史は1870年代、フォート・バヤードのジェームズ・C・クーニー軍曹がギラ山脈で豊かな金脈を発見したことに始まります。その後、シルバークリーク沿いの鉱山開発が進み、1889年にジョン・エバーレが最初の小屋を建てたことで町としての基礎が築かれました。
1890年代に入ると、町は急速に発展します。1890年には郵便局と拘置所が、1892年には学校が設立されました。特に「リトル・ファニー(Little Fannie)」鉱山は最大の雇用主となり、多くの人々を惹きつけました。地理的な孤立ゆえに、当時のモゴヨンは「西部で最も荒々しい鉱山町の一つ」という悪名高い評判を持っていました。実際、1872年から73年にかけて、モゴヨンからシルバーシティへ向かう乗合馬車が同一犯によって23回も襲撃されるという事件が起きています。

全盛期の町の様子
1909年頃のモゴヨンは、人口約2,000人を数える賑やかなコミュニティでした。町には5軒の酒場、2軒のレストラン、4軒の商店、2軒のホテルに加え、2つの赤線地帯に複数の売春宿が並んでいました。さらに、写真館や映画館(ミッドウェイ・シアター)、製氷所、ベーカリーまで揃っており、生活インフラが完備されていました。シルバーシティとの間は、乗客や金銀の地金を運ぶ馬車が毎日往来し、約80マイルの道のりを15時間かけて結んでいました。
自然の猛威と産業の衰退
繁栄の裏で、モゴヨンは絶えず自然災害との戦いを強いられていました。1894年の大火では木造建築のほとんどが焼失し、その後も1904年、1910年、1915年、1942年と火災が繰り返されました。また、シルバークリークの氾濫による洪水も頻発し、橋や家屋、さらには人々までもが押し流される悲劇が起きました。住民たちはそのたびに、より耐火性と耐久性の高い石造りやアドベ建築で街を再建しました。
経済的なピークは1914年頃に訪れ、この年の貴金属生産量はニューメキシコ州全体の約40%に達しました。生涯を通じて、この地域からは1,800万オンス以上の銀と、約2,000万ドル相当の金・銀・銅が採掘されました。しかし、次第に鉱石の品位が低下すると利益が減少し、1930年までに人口は200人まで激減しました。
決定打となったのは、1942年のファニー鉱山の閉鎖です。町唯一の精錬所であったファニー・ミルが閉鎖されたことで、他の鉱山も操業を維持できなくなり、鉱業としての寿命を迎えました。第二次世界大戦中に一時的な需要回復による再開は見られたものの、その後は完全に沈黙しました。
現代のモゴヨン:文化遺産と新たな可能性
現在、モゴヨンは静かな集落となっており、いくつかの私邸と小規模なビジネスが点在しています。1885年に建てられた旧宿泊施設「モゴヨン・ハウス」を利用した「シルバークリーク・イン」は、鉱山時代の幽霊が出ると噂される宿泊施設として知られています。

また、この地は映画のロケ地としても利用されました。1973年にはヘンリー・フォンダとテレンス・ヒル主演のスパゲッティ・ウェスタン映画『俺の名前はNobody』が撮影され、そのセットとして酒場や商店が建設されました。
近年では、精錬技術の向上に伴い、再び鉱山開発の動きが出ています。1980年代の試行を経て、2023年にはカナダの鉱山探査会社Summa Silver社が広大な権益を取得しました。高品位の鉱石が確認されており、今後の調査結果次第で採掘が再開される可能性があります。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 所在地 | アメリカ合衆国ニューメキシコ州キャトロン郡 |
| 設立年 | 1889年 |
| 最盛期の人口 | 3,000人 〜 6,000人(1890年代) |
| 主要産出物 | 金、銀、銅 |
| 歴史的指定 | 米国国家歴史登録財(1987年登録) |
| 地区面積 | 33エーカー(約13ヘクタール) |
Frequently Asked Questions
モゴヨンは現在も人が住んでいる場所ですか?
はい。完全な無人村ではなく、いくつかの私邸や、宿泊施設であるシルバークリーク・インなどの小規模なビジネスが運営されています。
なぜこの町は「ゴーストタウン」と呼ばれるようになったのですか?
かつては数千人が暮らす賑やかな鉱山町でしたが、鉱石の枯渇と主要な精錬所(ファニー・ミル)の閉鎖により、人口が激減し、産業としての機能を失ったためです。
この地域で最も重要だった鉱山はどこですか?
「リトル・ファニー(Little Fannie)」鉱山です。この鉱山は町最大の雇用主であり、地域の経済を支える中心的な存在でした。
モゴヨンを訪れると何が見られますか?
米国国家歴史登録財に指定された歴史的な街並みや、かつての鉱山遺構、そして映画のセットとして建てられた建物などが残っており、西部の歴史を感じることができます。
将来的に再び鉱山として復活する可能性はありますか?
可能性はあります。2023年にカナダのSumma Silver社が権益を取得し、高品位の鉱石が確認されているため、今後の調査結果次第で採掘が再開されることが期待されています。
References
- "National Register Information System". . . July 9, 2010.
- Till, T. and Jordan, T. (2001) Great Ghost Towns of the West. Portland, OR: Graphic Arts Center Publishing. p. 72.
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