ヨーロッパの多くの国々では、高校卒業時にマトゥーラ(Matura)と呼ばれる重要な資格試験が行われています。これは単なる卒業試験ではなく、大学への進学資格を得るための「成熟度証明」としての役割を持っており、国や地域によってその形式や評価基準は大きく異なります。
筆記試験だけでなく、口述試験や独自の研究論文の提出が求められる国もあり、学生の学術的な能力を多角的に評価する仕組みとなっています。本記事では、マトゥーラを採用している主要な国々の制度と、その特徴について詳しく解説します。
Key Facts
- 目的: 高校卒業の証明および大学入学資格(Matriculation)の取得。
- 多様な形式: 筆記試験、口述試験、研究論文(VWAなど)の組み合わせで構成される。
- 国別差異: 必須科目の数や、合格点、評価スケール(1〜5段階や100点満点など)が国ごとに異なる。
- 専門性: 一般的な進学コース(ギムナジウム等)だけでなく、職業教育向けのマトゥーラを設けている国もある。
国別の試験制度と特徴
中欧・東欧の事例
この地域の多くの国では、国家レベルで統一された試験が実施されています。
ポーランドでは、国語(ポーランド語)の筆記試験と口述試験が必須となっています。

チェコ共和国の試験(maturita)では、口述試験に特徴があります。学生は「ポティートコ(potítko)」と呼ばれる準備室で15分間の準備時間を経た後、試験官の前で口述試験に臨みます。評価は1(最高)から5(最低)の段階で行われます。
スロバキアでは、母国語の論文執筆が重視されており、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のレベルに応じて、B1からネイティブレベルまで要求される語数が異なります。また、通っている学校の種類(ギムナジウムや職業学校)によって、受験すべき科目の組み合わせが変動します。
ブルガリアでは、数学や外国語などの必須科目に加え、任意で3つ目の科目を選択できます。この任意科目に合格することは非常に困難ですが、大学入学プロセスにおいて大きなアドバンテージとなります。
南欧・バルカン半島の事例
南欧諸国では、得点計算の複雑さや、段階的な試験構成が見られます。
イタリアの制度では、学校での評定点(クレジット)、筆記試験、口述試験の合計点で合否が決まります。時代によって配点比率が変更されており、直近では筆記試験の構成や配点が調整されています。
クロアチアでは、国家マトゥーラ(Državna matura)が実施されており、国語、数学、および入学試験用の科目が必須です。大学入学時の判定には、試験結果だけでなく高校時代の平均評定点も組み込まれます。
コソボでは、6月に一般科目の試験が行われます。近年では新型コロナウイルスの影響で形式が変更され、国語、数学、英語、および選択科目の4科目からなる100問の試験形式が導入されました。
スイスの高度な専門分化
スイスのマトゥーラは非常に体系化されており、進路に合わせて複数の種類が存在します。代表的な「ギムナジウム・マトゥーラ」では、基礎科目、主要科目、追加科目の3層構造となっており、さらに約25ページの科学的論文の執筆が義務付けられています。
スイスでは、学術的な進学を目指すものの他に、職業教育に基づいた「職業マトゥーラ(Berufsmatura)」や「専門マトゥーラ(Fachmatura)」が用意されており、個々のキャリアパスに応じた資格取得が可能です。

マトゥーラ制度の比較まとめ
| 国名 | 主な試験形式 | 特徴的な要件 | 評価の傾向 |
|---|---|---|---|
| オーストリア | 筆記・口述 | VWA(事前科学論文)の提出 | 論文のプレゼンを含む |
| チェコ | 筆記・口述 | 準備室での待機時間あり | 1(最高)〜5(最低) |
| イタリア | 筆記・口述 | 学校評定点との合算 | 100点満点(Cum Laudeあり) |
| スイス | 筆記・口述・論文 | 主要科目と追加科目の選択制 | カントン(州)により詳細が異なる |
| スロバキア | 筆記(エッセイ) | CEFR基準の語数制限 | 学校種別で必須科目が異なる |

Frequently Asked Questions
マトゥーラに合格するとどのようなメリットがありますか?
主に大学への入学資格が得られます。多くの欧州諸国では、この試験に合格することが高等教育機関へ進学するための必須条件となっており、得点によっては希望する学部への合格可能性が高まります。
口述試験(Oral Exam)ではどのようなことが行われますか?
国によって異なりますが、一般的に試験官の前で特定のテーマについて論じたり、質問に答えたりします。チェコのように、短時間の準備時間を経てから試験室に入る形式など、緊張感のある環境で学力と表現力が試されます。
研究論文(VWAなど)とはどのようなものですか?
オーストリアやスイスなどで導入されている制度で、学生が自ら選んだテーマについて学術的な論文を執筆するものです。単なるレポートではなく、一定の文字数やページ数が求められ、最終的に教員や審査員の前でプレゼンテーションを行う必要があります。
職業学校の生徒もマトゥーラを受験できますか?
はい、可能です。スイスの「職業マトゥーラ」や北マケドニアの「国家職業マトゥーラ」のように、一般の進学コースとは別に、職業的な専門スキルと基礎学力を同時に証明できる試験制度が設けられています。
試験科目はすべて固定されていますか?
いいえ。国語や数学などの共通必須科目がある一方で、多くの国で「選択科目」が設けられています。自分の得意分野や、大学で専攻したい学問に合わせて科目を選択する形式が一般的です。
References
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