1994年、TSR社からリリースされたMasque of the Red Death and Other Tales(サブタイトル:Terror in the 1890s)は、ホラーファンタジーRPG『Ravenloft』の代替キャンペーン設定として登場しました。本作は『Advanced Dungeons & Dragons (AD&D)』第2版のルールをベースにしながら、剣と魔法の時代から離れ、ガス灯が灯るヴィクトリア朝時代の不気味な世界観へとプレイヤーを誘います。
Key Facts
- 舞台:1890年代の代替歴史地球「ゴシック・アース」
- 核心的な脅威:古代エジプトで誕生した邪悪な存在「レッド・デス」
- システム:AD&D第2版ベース(Ravenloftのルールを適用)
- 特徴:従来のクラスを時代に合わせて変更し、スキルベースのプレイを重視
- 構成:ルールブック、3つのアドベンチャー、GMスクリーン、世界地図のボックスセット
ゴシック・アース:闇に包まれた19世紀末
本作の舞台となる「ゴシック・アース」は、私たちが知る1890年代の地球とは異なる歴史を辿った世界です。エドガー・アラン・ポーの短編小説から名付けられたこの世界では、超自然的な現象が日常の裏側に潜んでいます。ニューオーリンズの奴隷商人たちの間で闇の術を操るネクロマンサーが活動し、アメリカ西部の開拓地では霊的なクリーチャーが人々を脅かしています。さらには、シャーロック・ホームズとドラキュラ伯爵が同じ列車に乗り合わせるなど、文学や伝説の登場人物たちが自然に共存しているのが特徴です。
この世界の破滅を加速させているのが、魔法の黄金時代に古代エジプトで生まれた邪悪な実体レッド・デスです。数世紀にわたり、アンデッドや狂信者を利用して暴力と災厄を煽ってきたこの存在により、ゴシック・アースは崩壊の危機に瀕しています。プレイヤーは「Enlightened Age(啓蒙時代)」という秘密結社のメンバーとなり、レッド・デスの化身たちと戦うことになります。
ゲームシステムとキャラクター構築の刷新
中世ファンタジーを前提としたAD&Dの標準的なクラス(戦士、魔術師、聖職者、盗賊)は、19世紀の社会背景に合わせ、兵士 (Soldier)、商人 (Merchant)、熟練者 (Adept)、神秘主義者 (Mystic)へと再定義されました。さらに、探偵や探検家、アスリートといったサブクラスが用意されており、より時代背景に即したキャラクター作成が可能です。
また、職業としての「キット」も導入されており、騎兵やジャーナリスト、労働者などの役割を選択できます。特筆すべきは、通常のAD&Dではオプション扱いだった「非武器習熟(Nonweapon proficiencies)」が必須となっている点です。化学、写真術、犯罪学といったスキルが導入され、筋力よりも知恵や専門知識が重要視されるゲームプレイへとシフトしています。
設定の独自性とRavenloftとの違い
本作は『Ravenloft』のルールを継承していますが、設定面では完全に独立しています。従来のRavenloftで見られた「霧によって分断された領域」という概念はなく、ゴシック・アースは一つの統合された世界として描かれています。キャラクターやストーリーラインの引き継ぎもなく、純粋に19世紀ホラーとしての体験を提供することに特化しています。
製品構成と出版の歩み
1994年にWilliam W. Connorsらの設計により発売されたボックスセットには、以下の内容が含まれていました。
| 構成要素 | 詳細 |
|---|---|
| ガイドブック | 「A Guide to Gothic Earth」(132ページ)。歴史、ルール、魔法、地図などを網羅。 |
| アドベンチャー | 「Red Jack」(ボストンの連続殺人)、「Red Death」(幽霊屋敷)、「Red Tide」(サンフランシスコとドラキュラ)の3作。 |
| ツール | ゲームマスター用スクリーンおよびゴシック・アースの世界地図。 |
その後、1995年に『The Gothic Earth Gazetteer』、1996年に『A Guide to Transylvania』という補完資料がリリースされました。また、2004年にはWhite Wolf Games社からd20システム版のハードカバー本がSword and Sorceryレーベルで出版され、異なるシステムでの展開も行われました。
批評と評価
本作は、従来のAD&Dが抱えていた「剣と魔法のシステムとヴィクトリア朝ホラーの不一致」を解消した点が高く評価されました。特に、リボルバーと十字架を同時に携えて戦うという、ホラーRPGファンが待ち望んでいた体験を実現したことが絶賛されています。また、スキルベースの洗練されたルール変更は、マンネリ化したキャンペーンへの刺激になると歓迎されました。
一方で、一部の批評家からは、文学的な文章に反して背景設定が単純すぎることや、AD&Dという汎用性の低いシステムを無理に時代設定に当てはめた点に疑問を呈する声もありました。また、付属の地図に当時まだ存在していなかった「オーストラリア連邦」が記載されていたという、時代考証上のミスも指摘されています。
Frequently Asked Questions
このゲームは従来のRavenloftとどう違うのですか?
ルールは共通していますが、世界観は完全に異なります。従来のRavenloftのような「霧による領域の分断」はなく、1890年代の地球をベースにした「ゴシック・アース」という単一の世界で物語が展開します。
どのようなキャラクターを作成できますか?
兵士、商人、熟練者、神秘主義者の4つの基本クラスから選び、さらに探偵やジャーナリストなどの職業キットを組み合わせます。化学や犯罪学といった近代的なスキルを習得させることが可能です。
物語の主な敵は何ですか?
古代エジプトで生まれた邪悪な存在「レッド・デス」とその化身たちです。彼らはアンデッドや狂気を利用して世界を混乱に陥れようとしています。
どのようなアドベンチャーが収録されていますか?
ボストンの連続殺人事件を追う「Red Jack」、幽霊屋敷を舞台にした「Red Death」、そしてサンフランシスコでドラキュラ伯爵と対峙する「Red Tide」の3つのシナリオが収録されています。
AD&Dの経験がない人でも遊べますか?
本作はAD&D第2版のルールをベースにしていますが、ボックスセット内のガイドブックにルール変更点や詳細な解説が含まれています。ただし、基本的にはAD&Dのシステムを理解していることが前提のキャンペーン設定集となっています。
References
- Taber, Colin (January 1995). "Opinions and Views". . No. 21. p. 6.
- (April 1995). "Role-playing Reviews". . No. #216. pp. 75–76.
- "Masque of the Red Death". Guide du Rôliste Galactique (in French). 2009-05-08. Retrieved 2023-12-21.
- "AD&D: Masque of the Red Death". Guide du Rôliste Galactique (in French). 2009-05-08. Retrieved 2023-12-21.
- Sumner, Mark (April 1995). "Games". . Vol. 1, no. 4. p. 74.
- Colin, Fabrice (April–May 1995). "Têtes d'Affiches". (in French). No. 86. p. 24.
- "Anmeldelser | Article | RPGGeek".