Illustration of the shadow zone of a P-wave for Earth. S-waves don't penetrate the outer core
← ホームへ戻る
火星地震マーズクエイクInSightSEIS火星内部構造

火星地震(マーズクエイク)の正体赤い惑星の内部構造を解き明かす

🗓 2026年8月11日

地球と同様に、火星でも地殻や内部の変動によって地表が揺れる現象が発生しています。これが火星地震(マーズクエイク)です。地球の地震の多くはプレートテクトニクス(巨大な岩盤の移動)によって引き起こされますが、火星では内部の構造変化や、オリンポス山やタルシス山のような巨大火山地帯にあるホットスポットが原因であると考えられています。

これらの地震波を分析することは、火星の内部がどのような層で構成されているかを探るだけでなく、かつて活発だった火山活動が現在も続いているかを確認するための重要な手がかりとなります。

Inside Mars InfoGraphicMars InSight Lander (May 17, 2022)

Key Facts

  • 初の確認:2019年にInSightミッションによって火星地震が正式に検出・確認された。
  • 過去の活動:南半球に見られる磁気縞(マグネティック・ストライピング)は、過去に激しい地震活動があった可能性を示唆している。
  • 最大規模:2022年5月にマグニチュード5と推定される大規模な揺れが記録された。
  • 活断層の証明:マリネリス峡谷でマグニチュード4.2の地震が検出され、ここが現在も活動している断層であることが判明した。

火星地震検出の歴史と進化

バイキング計画による初期の試み

火星での地震観測は1976年のバイキング計画にまで遡ります。バイキング1号の地震計は故障しましたが、2号は約89日間にわたりデータを収集しました。当時、Sol 53とSol 80に地震と思われる振動が記録されましたが、当時は風による機体の揺れと地震波を区別する技術が不十分だったため、確定診断を下すことはできませんでした。

InSightミッションによるブレイクスルー

2018年に着陸したInSight(インサイト)探査機は、極めて高感度な地震計「SEIS(内部構造地震実験)」を搭載していました。この装置は、地表のわずかな振動だけでなく、大気圏で爆発する流星や隕石の衝突による衝撃波まで検知できる性能を持っています。

Mars – InSight Lander – Seismometer (Sol 110)

Cutaway illustration showing InSight's seismometer underneath the white windshield

2019年4月6日、ついに火星地震と思われる微弱な信号が捉えられました。その後も観測は続き、2022年にはマグニチュード5に達する巨大な地震が記録されました。この大規模なイベントは惑星全体に6時間もの間響き渡りましたが、後の衛星画像解析により、隕石衝突によるクレーター形成が原因ではないことが突き止められています。

Mars – Seismic wave simulation (artist concept; 2019)

過去のデータの再評価

最新の解析技術を用いて、40年以上前のバイキング2号のデータを再検証した結果、2023年に当時のSol 53とSol 80のイベントが実際に火星地震であったことが証明されました。これにより、火星の地震活動の歴史をより長い時間軸で捉えることが可能になりました。

地質学的特徴と地震の要因

火星の表面には、地球の海嶺に見られるような磁気縞が南半球の広範囲に存在します。地球ではこれは地殻が裂けて広がるサインですが、火星では明確な拡大軸が見つかっておらず、地震以外の要因も含めた研究が進められています。

また、全長約4,000kmに及ぶ巨大なマリネリス峡谷は、古くから大規模な横ずれ断層の跡ではないかと推測されてきました。2021年8月25日にこの地域でマグニチュード4.2の地震が検出されたことで、この峡谷が現在も活動的な断層帯であることが実証されました。

Illustration of the shadow zone of a P-wave for Earth. S-waves don't penetrate the outer core

火星地震観測のまとめ

火星地震観測の主要ミッション比較
項目 バイキング計画 (1976年) InSightミッション (2018年〜)
主な装置 初期型地震計 SEIS (高感度地震計)
検出能力 風のノイズに弱く判別が困難 微小な地震や隕石衝突を検知可能
成果 地震の可能性を記録 (後に確認) 多数の地震を確定、内部構造を分析
特筆すべきイベント Sol 53, Sol 80の振動 マグニチュード5の巨大地震、マリネリス峡谷の活動

Frequently Asked Questions

火星地震は地球の地震と同じ仕組みで起きているのですか?

似ていますが、地球のようなプレートテクトニクスが主因であるかは分かっていません。内部の冷却による収縮や、巨大火山の下にあるホットスポットなどの影響が考えられています。

なぜバイキング計画の時は地震だと断定できなかったのですか?

当時の地震計では、火星の強い風によって探査機自体が揺れたのか、地面が揺れたのかを正確に切り分けることができなかったためです。

火星で最大に記録された地震の規模は?

2022年5月に検出された、マグニチュード5と推定される地震が最大規模です。この振動は6時間にわたって惑星全体に伝播しました。

マリネリス峡谷の地震は何を意味していますか?

この地域でマグニチュード4.2の地震が確認されたことで、マリネリス峡谷が単なる過去の遺物ではなく、現在も活動している活断層であることが証明されました。

地震以外にどのような振動を検知していますか?

隕石が地表に衝突した際の衝撃や、大気圏で燃え尽きる流星によるエアバースト(空中爆発)に伴う振動なども検知対象となっています。

References

  1. Kornei, Katherine (22 January 2022). "Bouncing Boulders Point to Quakes on Mars – A preponderance of boulder tracks on the red planet may be evidence of recent seismic activity". . Retrieved 22 January 2022.
  2. Anderson, Don L.; Miller, W. F.; Latham, G. V.; Nakamura, Y.; Toksoz, M. N.; Dainty, M. N.; Duennebier, F. K.; Lazarewicz, A. R.; Kovach, R. L.; Knight, T. C. D. (September 30, 1977). "Seismology on Mars". Journal of Geophysical Research. 82 (28): 22. :1977JGR....82.4524A. :10.1029/JS082i028p04524 – via American Geophysical Union.
  3. Greicius, Tony (2021-04-01). "NASA's InSight Detects Two Sizable Quakes on Mars". NASA. Retrieved 2021-07-24.
  4. Lazarewicz, Andrew R. (10 July 2023). "Viking Marsquakes 1976 -- Seismic Archaeology". Journal of Geophysical Research: Planets. 128 (e2022JE007660) e2022JE007660: 20. :2023JGRE..12807660L. :10.1029/2022JE007660.  259927674 – via American Geophysical Union.
  5. Yin, A. (4 June 2012). "Structural analysis of the Valles Marineris fault zone: Possible evidence for large-scale strike-slip faulting on Mars". Lithosphere. 4 (4): 286–330. :2012Lsphe...4..286Y. :10.1130/L192.1.
  6. "Two Largest Marsquakes To Date Recorded From Planet's Far Side". (Press release). SpaceRef. 26 April 2022. Retrieved 26 April 2022.[]
  7. Lorenz, Ralph D.; Nakamura, Yosio (2013). "Viking Seismometer Record: Data Restoration and Dust Devil Search" (PDF). 44th Lunar and Planetary Science Conference (2013) (1719): 1178. :2013LPI....44.1178L. Retrieved 2019-04-24.
  8. Greicius, Tony (28 March 2018). "'Marsquakes' Could Shake Up Planetary Science". NASA. NASA. Jet Propulsion Laboratory. Archived from the original on 25 April 2019. Retrieved 21 November 2018.
  9. Lorenz, Ralph D.; Nakamura, Yosio; Murphy, James R. (November 2017). "Viking-2 Seismometer Measurements on Mars: PDS Data Archive and Meteorological Applications". Earth and Space Science. 4 (11): 681–688. :2017E&SS....4..681L. :10.1002/2017EA000306.
  10. Goins, N. R.; Lazarewicz, A. R. (May 1979). "Martian Seismicity". Geophysical Research Letters. 6 (7): 3. :1979GeoRL...6..368G. :10.1029/GL006i005p00368 – via American Geophysical Union.

📸 フォトギャラリー

Illustration of the shadow zone of a P-wave for Earth. S-waves don't penetrate the outer core
Inside Mars InfoGraphicMars InSight Lander (May 17, 2022)
Mars – InSight Lander – Seismometer (Sol 110)
Cutaway illustration showing InSight's seismometer underneath the white windshield
Mars – Seismic wave simulation (artist concept; 2019)