five views of a dimming Martian landscape from sol 1205 to sol 1235
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火星の時間計測と暦地球とは異なる「ソル」の世界

🗓 2026年8月11日

地球とは異なる環境を持つ火星では、時間の数え方や暦の概念も地球とは異なります。火星の自転周期や公転周期は地球に似ていますが、わずかな違いが積み重なり、独自の時間体系を必要としています。本記事では、惑星科学者が使用する「ソル」の定義から、複雑な火星の季節、そして歴代の探査機がどのように時間を管理してきたかについて詳しく解説します。

Key Facts

  • ソル(Sol):火星の1太陽日。地球の日よりも約39分長い(約24時間39分)。
  • 火星の1年:地球の約1.88倍の長さ(約668〜669ソル)。
  • 季節の変動:軌道離心率が大きいため、季節ごとの長さが大きく異なる。
  • MSD(Mars Sol Date):1873年12月29日を起点とした火星日の連続カウント方式。
  • 時間補正:火星の太陽日長は一定ではなく、地球以上に時計とのズレ(時間方程式)が大きい。

火星の「日」:ソル(Sol)の定義

火星の自転周期は地球と非常に近く、1日の長さはわずかに長いくらいです。惑星科学の世界では、地球の「日(Day)」との混同を避けるため、火星の1太陽日をソル(Sol)と呼びます。この用語は1976年のバイキング計画時に導入されました。

具体的に、火星の太陽日は24時間39分35.244秒であり、地球の日よりも約2.75%長くなっています。このため、地球で75日が経過する間に、火星では約73ソルが経過することになります。また、このソルを24等分したものが「火星太陽時」の1時間となり、地球の1時間よりも約1分39秒長くなります。

five views of a dimming Martian landscape from sol 1205 to sol 1235

火星の「年」と季節のメカニズム

火星が太陽を一周する恒星年(Sidereal year)は約687地球日(約668.6ソル)です。地球と同様に自転軸が傾いているため、四季が存在しますが、火星の軌道は地球よりも楕円形(離心率が高い)であるため、季節の長さには大きな偏りがあります。

例えば、北半球の春(春分から夏至まで)は最長の季節で約194ソルかかりますが、北半球の秋(秋分から冬至まで)は最短の約142ソルで終わります。このような極端な季節の長さの違いは、火星の気候や環境に大きな影響を与えています。

(In red) Martian season lengths and time as compared to seasons on Earth (in blue), with marks for the vernal equinox, perihelion, and aphelion

暦の基準と年数表記

火星には統一された標準暦はありませんが、科学的な文脈では1955年4月11日の春分点を起点とした年数表記が広く用いられています。また、太陽の黄経(Ls)を用いて、0度を北半球の春分とする方法で季節を定義するのが一般的です。

Diagram by Percival Lowell comparing the Martian and Earth years

時間計測の複雑さと「時間方程式」

火星でも地球と同様に、日時計で測る「真太陽時」と、一定の間隔で刻む「平均太陽時(時計の時間)」の間に差が生じます。これを表すのが時間方程式であり、視覚的にはアナレマ(太陽の8の字軌跡)として現れます。

火星は軌道離心率が大きいため、この時間のズレが地球よりも激しく、時計よりも最大で51分遅れたり、40分早まったりすることがあります(地球では最大でも16分程度のズレです)。

The analemma for Mars

探査機による時間管理の実態

火星に降り立った各探査機は、それぞれのミッション目的に応じた時計設定を採用してきました。多くのミッションでは、着陸地点の地方平均太陽時(LMST)に合わせたミッションクロックを使用していますが、実際には着陸地点のわずかなズレや、探査機の移動によって地方時が変動するため、厳密な調整が行われています。

主要な火星探査機の時間設定まとめ
ミッション名 基準経度 時計オフセット 時間方式 エポック(起点)
パスファインダー 33.25°W AAT −02:13:01 LTST Sol 1 = MSD 43905
スピリット 165.01°E AMT+11:00:04 HLST Sol 1 = MSD 46216
オポチュニティ 15.28°W AMT−01:01:06 HLST Sol 1 = MSD 46236
フェニックス 126.65°W AMT−08:26:36 LMST Sol 0 = MSD 47776
キュリオシティ 137.42°E AMT+09:09:41 LMST Sol 0 = MSD 49269
インサイト 135.97°E AMT+09:03:53 LMST Sol 0 = MSD 51511
パーサヴィアランス 77.43°E AMT+05:09:43 LMST Sol 0 = MSD 52304

提案されている火星暦とフィクションでの表現

将来的な有人探査や移住を見据え、さまざまな火星暦が提案されています。例えば、1年を24ヶ月(各28ソル)に分ける案や、閏年を設けて調整するシステムなどがあります。また、SF作品においても独自の火星暦が登場し、物語の世界観を構築する要素となっています。

Frequently Asked Questions

火星の1日は地球の1日とどれくらい違いますか?

火星の1日(ソル)は24時間39分35秒で、地球よりも約39分長くなっています。そのため、地球の感覚で生活すると、毎日少しずつ就寝・起床時間が後ろにずれていくことになります。

なぜ火星の季節は長さがバラバラなのですか?

火星の公転軌道が地球よりも強い楕円形(高い離心率)をしているためです。太陽に近い位置にいる時期と遠い時期で公転速度が変わるため、季節によって期間に大きな差が生じます。

「MSD」とは何のことですか?

Mars Sol Date(火星ソル日)の略で、1873年12月29日を起点として、火星の日数を単純にカウントし続ける方式です。地球のジュリアン日と同様に、日付の計算を簡略化するために使用されます。

火星に標準時(タイムゾーン)はありますか?

地球のような国際的に合意された標準時はまだ確立されていません。現在は、特定の経度(Airy-0など)を基準とした提案や、各探査機が個別に設定したミッションクロックが運用されています。

References

  1. Sol (borrowed from the Latin word for sun) is a solar day on Mars.

📸 フォトギャラリー

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(In red) Martian season lengths and time as compared to seasons on Earth (in blue), with marks for the vernal equinox, perihelion, and aphelion
The analemma for Mars
Diagram by Percival Lowell comparing the Martian and Earth years