Simplified model of mantle convection:[1] Whole-mantle convection
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マントル対流プレートテクトニクス上部マントル下部マントルプルーム

マントル対流のメカニズムと地球内部のダイナミクス

🗓 2026年8月10日

地球の内部では、固体でありながら極めてゆっくりとした流動を示すマントル対流が起きています。これは、地球深部の熱を表面へと運ぶ巨大な熱輸送システムであり、私たちが住む地表のプレートを動かす原動力となっています。このダイナミックなプロセスを理解することは、地震や火山活動、そして地球の進化を解明する鍵となります。

Key Facts

  • マントル対流は、地球内部の熱を表面へ運ぶ非常に緩やかな物質の移動である。
  • この対流が地表のプレートテクトニクス(プレートの移動)を引き起こしている。
  • 現代の定説では、表面から核・マントル境界まで及ぶ「全マントル対流」が有力視されている。
  • 対流の速度は年間数センチメートル程度であり、1サイクルに数千万年から数億年を要する。
  • マントルの流動性は、主に構成鉱物であるオリビンのクリープ変形によって制御されている。

マントル対流とプレートの連動

地球の最外層であるリソスフェア(岩石圏)は、その下の流動的なアセノスフェア(岩流圏)の上に浮かんでいます。これら合わせて上部マントルを構成しており、リソスフェアは複数のプレートに分かれて絶えず移動しています。

プレートの境界では、新しい地殻が作られる「拡大」と、古い地殻が飲み込まれる「消費」が同時に起きています。海嶺などの拡大中心では、マントル物質が上昇して新しいプレートを形成します。一方で、海溝などの沈み込み帯では、冷却されて密度が増したプレートが自重で地球内部へと沈み込みます。この沈み込みこそが、マントル対流における「下降流」の正体です。

Earth cross-section showing location of upper (3) and lower (5) mantle

沈み込んだ物質はさらに深部へと運ばれます。一部は下部マントルまで到達しますが、場所によってはスピネルからペロブスカイトやマグネシオウスタイトへの相転移(結晶構造の変化)に伴う吸熱反応により、下降が妨げられることがあります。

対流の形態:層状か、全層か

地質学の世界では、対流が上部と下部で分かれている「層状対流」か、全体がつながっている「全マントル対流」かについて長年議論されてきました。近年の地震波トモグラフィー(地球内部のCTスキャンのような技術)や数値シミュレーションの結果からは、全マントル対流の存在が強く示唆されています。

全マントル対流モデルでは、冷えたプレートが核・マントル境界(CMB)まで深く沈み込み、逆にCMBからは高温のマントルプルーム(巨大な熱の柱)が地表まで上昇すると考えられています。

Cross-section diagram of Earth comparing two end-member models of mantle convection

この説を裏付ける証拠の一つに、海洋島などの火山から噴出する溶岩の化学組成があります。これらの溶岩には、地球誕生時の成分であるヘリウム3(3He)が多く含まれています。ヘリウム3は地表ではすぐに失われるため、これが検出されることは、まだ一度も溶融したことのない下部マントルという「未混合の領域」から物質が運ばれてきたことを示唆しています。

Simplified model of mantle convection:[1] Whole-mantle convection
Earth's temperature vs depth. Dashed curve: layered mantle convection. Solid curve: whole-mantle convection.[9]

対流の規模と地球規模のパターン

地球のマントルにおけるレイリー数(対流の激しさを表す指標)は非常に高く、活発な対流が起きていることを示しています。地表での現れであるプレートの移動速度は年間数センチメートルですが、粘性の低い領域ではより速く、粘性の高い最下部マントルではより遅くなります。浅い対流サイクルは約5,000万年、深い対流では約2億年かかると推定されています。

現在の地球では、アメリカ大陸の下や西太平洋の下で大規模な下降流が起きており、逆に中央太平洋やアフリカの下では上昇流が発生しています。このパターンは過去2億5,000万年間にわたって安定しており、地球内部の深い部分にある低せん断速度領域(LLSVPs)がこの上昇流の土台となっていると考えられています。

A superplume generated by cooling processes in the mantle.[11]

マントルの流動メカニズム(クリープ現象)

固体であるマントルが流動できるのは、高温高圧下で「クリープ」と呼ばれる緩やかな変形が起きるためです。上部マントルの主成分であるオリビン(かんらん石)の性質が、この流動性を決定づけています。

変形のメカニズムには主に2種類あります。一つは結晶格子の欠陥が移動する「転位クリープ」、もう一つは原子が拡散して移動する「拡散クリープ」です。下部マントルでは転位クリープが支配的であり、非常に冷たい領域や極めて深い場所では拡散クリープが起きると考えられています。また、深さ400km付近でオリビンが相転移を起こすと、延性が増して変形しやすくなる特性があります。

マントル対流の主要特性まとめ
項目 詳細・特徴
駆動源 地球内部の熱(熱対流)
主要な構成鉱物 オリビン(かんらん石)
対流モデル 全マントル対流(表面〜核・マントル境界)
移動速度 年間数センチメートル(地表プレート)
変形メカニズム 転位クリープおよび拡散クリープ
サイクル期間 5,000万年 〜 2億年

他天体における対流

このような緩やかな対流現象は地球特有のものではなく、金星や火星などの惑星、あるいはイオ、エウロパ、エンケラドゥスといった衛星の内部でも、過去または現在進行形で起きていると考えられています。

Frequently Asked Questions

マントルは液体なのですか?

いいえ、マントルは基本的に固体です。しかし、地質学的な長い時間スケールで見ると、高温高圧の影響でプラスチックのようにゆっくりと変形し、流動する性質(クリープ)を持っているため、対流が可能です。

プレートテクトニクスとマントル対流はどう関係していますか?

マントル対流はプレートを動かすエンジンのような役割を果たしています。対流の上昇流がプレートを押し広げ、冷えて重くなったプレートが沈み込むことで対流のサイクルが完結し、地表のプレートが移動します。

全マントル対流と層状対流の違いは何ですか?

層状対流は上部と下部マントルが分かれて独立して対流しているモデルですが、全マントル対流は地表から核の境界まで物質が循環しているモデルです。現在の観測データは後者を支持しています。

マントルプルームとは何ですか?

核・マントル境界などの深い場所から、周囲より高温の物質が柱状に上昇してくる現象です。これが地表に達すると、プレートの境界以外でも火山活動(ホットスポット)を引き起こす原因となります。

なぜヘリウム3が対流の証拠になるのですか?

ヘリウム3は地球誕生時の原始的な物質であり、地表では失われやすいため、これが火山から検出されることは、地表の影響を受けていない地球深部(下部マントル)から物質が運ばれてきたことを意味するからです。

References

  1. Carlo Doglioni, Giuliano Panza: Polarized Plate Tectonics. Advances in Geophysics, Volume 56, 2015.
  2. Kobes, Randy. "Mantle Convection". Archived from the original on 9 June 2011. Retrieved 26 February 2020. Physics Department, University of Winnipeg
  3. Ricard, Y. (2009). "2. Physics of Mantle Convection". In David Bercovici and Gerald Schubert (ed.). Treatise on Geophysics: Mantle Dynamics. Vol. 7. Elsevier Science. ISBN 9780444535801.
  4. Moresi, Louis; Solomatov, Viatcheslav (1998). "Mantle convection with a brittle lithosphere: thoughts on the global tectonic styles of the Earth and Venus". Geophysical Journal International. 133 (3): 669–82. Bibcode:1998GeoJI.133..669M. CiteSeerX 10.1.1.30.5989. doi:10.1046/j.1365-246X.1998.00521.x. {{cite journal}}: Cite uses deprecated parameter |citeseerx= (help)
  5. Gerald Schubert; Donald Lawson Turcotte; Peter Olson (2001). "Chapter 2: Plate tectonics". Mantle convection in the earth and planets. Cambridge University Press. pp. 16 ff. ISBN 978-0-521-79836-5.
  6. Fukao, Yoshio; Obayashi, Masayuki; Nakakuki, Tomoeki; Group, the Deep Slab Project (2009-01-01). "Stagnant Slab: A Review" (PDF). Annual Review of Earth and Planetary Sciences. 37 (1): 19–46. Bibcode:2009AREPS..37...19F. doi:10.1146/annurev.earth.36.031207.124224. Archived from the original (PDF) on 2021-06-13. Retrieved 2019-07-05. {{cite journal}}: |last4= has generic name (help)
  7. Gerald Schubert; Donald Lawson Turcotte; Peter Olson (2001). "§2.5.3: Fate of descending slabs". Cited work. Cambridge University Press. pp. 35 ff. ISBN 978-0-521-79836-5.
  8. 1 2 Foulger, G.R. (2010). Plates vs. Plumes: A Geological Controversy. Wiley-Blackwell. ISBN 978-1-4051-6148-0. Archived from the original on 2017-11-25. Retrieved 2011-01-06.
  9. 1 2 Kent C. Condie (1997). Plate tectonics and crustal evolution (4th ed.). Butterworth-Heinemann. p. 5. ISBN 978-0-7506-3386-4.
  10. Czechowski L. (1993) Geodesy and Physics of the Earth pp 392–395, The Origin of Hotspots and The D" Layer

📸 フォトギャラリー

Simplified model of mantle convection:[1] Whole-mantle convection
Earth cross-section showing location of upper (3) and lower (5) mantle
Earth's temperature vs depth. Dashed curve: layered mantle convection. Solid curve: whole-mantle convection.[9]
A superplume generated by cooling processes in the mantle.[11]
Cross-section diagram of Earth comparing two end-member models of mantle convection