1970年代、宇宙開発競争の真っ只中にあったソ連は、無人機による月面土壌の回収という困難なミッションに挑んでいました。その重要な役割を担ったのがルナ20号です。本機は、先行して打ち上げられたルナ18号が達成できなかった目的を完遂させるべく、精密な運用計画に基づいて月へと送られました。

主要な事実(Key Facts)

  • ミッション目的: 月面からの土壌サンプル回収と地球への帰還。
  • 着陸地点: 北緯3.7863度、東経56.6242度(ルナ18号の墜落地点からわずか1.8kmの至近距離)。
  • 回収量: 約30グラムの月面土壌。
  • 科学的成果: 月の古くからなる高地を構成する「アノルソサイト(斜長岩)」を主成分とする試料を回収。
  • 帰還場所: カザフスタンのジェズカズガン北方40km、カルキンギル川の島。

月への旅路と精密な着陸プロセス

ルナ20号は、約4.5日間の飛行を経て月に到達しました。道中、2月15日に一度だけ軌道修正を行い、2月18日には月周回軌道への進入に成功しています。当初の軌道は、傾斜角65度、高度100kmの円軌道でした。

着陸に向けた最終段階は2月21日に始まりました。19時13分(世界時)にメインエンジンを267秒間点火して降下を開始し、さらなる減速を経て、同日19時19分に安全に着陸を果たしました。この着陸地点は、失敗に終わったルナ18号の墜落現場から極めて近い場所であり、ミッションの継続性を象徴する結果となりました。

Model of the Luna sample return lander with soil sample scoop – the ascent stage is the smaller cylinder with spherical Earth-return capsule on top.

サンプル回収と地球への帰還

着陸後、ルナ20号は月面の土壌を採取し、2月22日22時58分に上昇ステージが離陸しました。この上昇機は秒速2.7kmという地球帰還に必要な速度まで加速し、小さな球形のカプセルを地球へと送り届けました。

2月25日19時19分、カプセルはパラシュートを用いてカザフスタンのカルキンギル川にある島に無事着陸し、貴重な月面試料が回収されました。

科学的分析:アノルソサイトの発見

回収された30グラムの試料は、以前のルナ16号が持ち帰ったものとは異なる地質学的特徴を持っていました。ルナ16号の試料が主に玄武岩であったのに対し、ルナ20号の試料は50%から60%がアノルソサイト(主に斜長石からなる岩石)で構成されており、これは月の古い高地由来のものであることが判明しました。

この発見は、わずか2ヶ月後にアメリカのアポロ16号が同様の高地物質を持ち帰ったことで裏付けられました。また、ソ連は国際的な科学協力の一環として、これらの試料をアメリカやフランスの科学者に提供し、イギリスには深さ27〜32cmから採取された0.4983gの試料を送付しました。

ソ連の月面サンプルリターン計画の比較

ソ連による主要な月面サンプルリターンミッション
ミッション名 回収サンプル量 達成年
ルナ16号 101 g 1970年
ルナ20号 30 g 1972年
ルナ24号 170.1 g 1976年

その後、2010年3月にはNASAのルナー・リコネサンス・オービター(LRO)という月周回衛星が、月面に残されたルナ20号の機体を再確認したことが報告されています。

Frequently Asked Questions

ルナ20号が回収した土壌は、ルナ16号のものとどう違いましたか?

ルナ16号の試料は主に玄武岩でしたが、ルナ20号の試料は50〜60%がアノルソサイト(斜長岩)という、月の古い高地を構成する岩石であった点が異なります。

ルナ20号はどこに着陸し、どこに帰還しましたか?

月面では北緯3.7863度、東経56.6242度に降り立ち、地球へはカザフスタンのジェズカズガン北方にあるカルキンギル川の島に帰還しました。

サンプル回収後の帰還プロセスはどのようなものでしたか?

上昇ステージが月面から離陸し、秒速2.7kmまで加速して地球へ向かいました。最終的に球形のカプセルがパラシュートで地上に降下して回収されました。

ルナ20号の機体は現在どうなっていますか?

2010年にNASALRO(ルナー・リコネサンス・オービター)によって、月面に残された機体が撮影・確認されています。

回収されたサンプルはどのように利用されましたか?

ソ連国内だけでなく、アメリカやフランスの科学者と共有されました。また、イギリスには深さ27〜32cmから採取された約0.5gの試料が提供されました。