北欧が生んだ至宝、リヴ・ウルマンは、単なる女優という枠を超え、映画監督や審査員としても世界的な影響力を持ち続けてきました。1950年代半ばにノルウェーの舞台でキャリアをスタートさせた彼女は、繊細かつ力強い演技で観客を魅了し、やがて世界映画史に名を刻むことになります。

彼女の原点は演劇にあり、特にヘンリク・イプセンの名作『人形の家』のノラ役でのパフォーマンスは、彼女の代名詞とも言える高い評価を得ました。

Ullmann with her mother Janna in 1959

ベルイマンとの黄金時代と映画界での飛躍

リヴ・ウルマンの名を世界に知らしめたのは、スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマン監督との出会いでした。彼女はベルイマン作品に10本出演し、『ペルソナ』(1966年)や『叫びとささやき』(1972年)、『秋のソナタ』(1978年)など、数々の傑作に魂を吹き込みました。

Ullmann in 1966

また、俳優アーランド・ヨーゼフソンとは頻繁に共演し、テレビドラマから映画へと展開した『夫婦の肖像』(1973年)などで深い人間ドラマを体現しました。さらに、リチャード・アッテンボロー監督の『遠すぎた橋』(1977年)では、名優ローレンス・オリヴィエと肩を並べて出演しています。

世界が認めた演技力と栄誉

その卓越した演技は数多くの賞に結びつきました。全米映画批評家協会やナショナル・ボード・オブ・レビューから複数回主演女優賞を受賞したほか、ゴールデングローブ賞も手にしています。また、『移民』(1971年)と『対面』(1976年)の2作品で、アカデミー主演女優賞にノミネートされました。

舞台への情熱も衰えず、1975年にはニューヨークで『人形の家』を上演し、その後『幽霊』や『アンナ・クリスティ』に出演。特に『アンナ・クリスティ』での演技は、ニューヨーク・タイムズ紙から「絶望と希望に満ち溢れ、忘れられないパフォーマンス」と絶賛され、伝説的な女優グレタ・ガルボをも凌ぐ存在感であると評されました。

監督としての挑戦と多才な活動

女優としての成功に甘んじることなく、ウルマンは映画監督としても活動を開始しました。1992年の『ソフィー』を皮切りに、2000年にはベルイマンが脚本を手がけた『Faithless』を監督。この作品はカンヌ国際映画祭でパルム・ドールと主演女優賞にノミネートされる快挙を成し遂げました。

また、国際的な映画祭の運営にも深く関わり、ベルリン国際映画祭(1984年)、カンヌ国際映画祭(2001年)、モスクワ国際映画祭(2008年)で審査委員長を務めました。2007年には、ナレーションを務めた短編アニメーション『The Danish Poet』がアカデミー短編アニメーション映画賞を受賞しています。

Former Queen Juliana of the Netherlands and Liv Ullmann at the Four Freedoms Award ceremony in Middelburg on 23 June 1984

信念に基づいた選択と晩年の功績

彼女のキャリアは、単なる名声の追求ではなく、自身の信念に基づいた選択の連続でした。ブライアン・デ・パルマ監督の『ドレスアップした殺し屋』への出演打診を暴力的な描写を理由に断り、ベルイマン監督の遺作に近い『ファニーとアレクサンダー』の役を「悲しすぎる」として辞退したことは、後に彼女が数少ない後悔として挙げています。

近年では、2014年に公開された映画版『ミス・ジュリー』を監督し、ジェシカ・チャステインやコリン・ファレルを起用して高い評価を得ました。そして2022年、映画芸術科学アカデミーは彼女にアカデミー名誉賞を授与。授賞式では、ベルイマンと彼女の相互的な影響力が、映画史における偉大な功績であると称えられました。

Key Facts

  • ベルイマンとの絆: イングマール・ベルイマン監督作品に計10本出演し、映画史に残る名演を披露した。
  • 舞台の成功: イプセンの『人形の家』で絶賛され、ブロードウェイでも高い評価を得た。
  • 監督業への転身: 『ソフィー』や『ミス・ジュリー』などを監督し、演出家としても才能を発揮。
  • 最高栄誉: 2022年にアカデミー名誉賞を受賞し、国際的な映画界への貢献が認められた。
  • 審査員長歴: カンヌ、ベルリン、モスクワの主要3大映画祭で審査委員長を歴任。
カテゴリー 主な作品・出来事 特記事項
代表的な出演作 ペルソナ、秋のソナタ、夫婦の肖像 ベルイマン監督との共同作業
主要な受賞 アカデミー名誉賞、ゴールデングローブ賞 生涯にわたり40回以上のノミネート
監督作品 ソフィー、Faithless、ミス・ジュリー 演出家としての評価を確立
舞台活動 人形の家、アンナ・クリスティ ニューヨーク・ブロードウェイでの成功

Frequently Asked Questions

リヴ・ウルマンとベルイマン監督の関係はどのようなものでしたか?

二人は映画史に残る最高のパートナーシップを築きました。ウルマンはベルイマン作品に10本出演し、互いの才能を高め合いました。授賞式では「ベルイマンが偉大な映画監督と呼ばれたのは、リヴ・ウルマンがいたからだ」と評されるほど、不可分な関係にありました。

彼女が映画出演を断った理由はありますか?

はい。作品の内容が自身の価値観に合わない場合は断っていました。例えば、暴力的な描写を理由にブライアン・デ・パルマ監督の作品を断ったほか、役柄が悲しすぎると感じたため『ファニーとアレクサンダー』への出演を辞退したことがあります。

監督としてどのような作品を手がけましたか?

1992年の『ソフィー』で監督デビューし、その後ベルイマン脚本の『Faithless』や、2014年公開の『ミス・ジュリー』などを監督しました。特に『Faithless』はカンヌ国際映画祭で高く評価されました。

舞台女優としての評価はどうでしたか?

非常に高く、特にイプセンの『人形の家』のノラ役で知られています。ニューヨークのブロードウェイでの『アンナ・クリスティ』公演では、その気品と権威ある演技が絶賛され、伝説的な女優ガルボと比較されるほどの称賛を浴びました。

アカデミー賞との関わりについて教えてください。

主演女優賞に2度ノミネート(『移民』『対面』)されたほか、ナレーションを務めた短編アニメーションが受賞しています。そして2022年には、映画界への多大な貢献が認められ、アカデミー名誉賞を受賞しました。