キンゴの賛美歌集:デンマーク・ノルウェーの教会音楽を形作った聖歌集

17世紀末、北欧の教会音楽において決定的な役割を果たしたのがキンゴの賛美歌集(原題:Dend Forordnede Ny Kirke-Psalme-Bog)です。この聖歌集は、単なる楽曲の集まりではなく、当時の王令によってデンマークおよびノルウェーのすべての教会で使用することが義務付けられた公式な典礼書でした。

もともとはオーデンセの司教であったトーマス・キンゴが、その10年前に編集した賛美歌集に基づいて構成されています。そのため、表紙には彼の名前が記されており、後世に「キンゴの賛美歌集」として広く知られることとなりました。

Kingo's hymnal, 1859 edition

Key Facts

  • 成立年: 1699年に王令により承認され、公式に導入された。
  • 構成: トーマス・キンゴによる86曲の賛美歌を収録。
  • 適用範囲: 当時のデンマーク・ノルウェー連合王国の全教会。
  • 特徴: 典礼年に沿った構成で、祈祷文や聖書朗読箇所も併記されている。
  • 現状: 現在もノルウェーの保守的なグループ「ストロング・ビリーバーズ」などで使用されている。

構成と典礼上の役割

この賛美歌集の最大の特徴は、典礼年(教会暦に基づいた1年のサイクル)に従って体系的に整理されている点にあります。これにより、教会は年間を通じて、それぞれの祝日や行事に最適な賛美歌を容易に選択することができました。

また、単に歌を収録するだけでなく、各祝日に対応した以下の要素が盛り込まれており、礼拝全体のガイドブックとしての機能を持っていました。

  • collects(集祷文): 礼拝の導入で唱えられる短い祈り。
  • エピスル(使徒書): 新約聖書の書簡からの朗読箇所。
  • 福音書: キリストの教えを伝える朗読箇所。
  • 教会祈祷およびその他の祈祷文。

Kingo's hymnal, Norsk Folkemuseum.

歴史的な変遷と後継

長きにわたり北欧の信仰生活を支えたキンゴの賛美歌集ですが、時代の変化とともに新しい聖歌集へと道を譲ることになります。

デンマークでの展開

デンマークにおいては、後に『デンマーク賛美歌集(Den Danske Salmebog)』へと置き換えられました。

ノルウェーでの展開

ノルウェーでは1870年代まで広く利用されていましたが、その後、ランドスタッドの教会賛美歌集(Landstads kirkesalmebog)や、アンドレアス・ハウゲによる『教会と家庭のための賛美歌集(Psalmebog for Kirke og Hus)』へと移行していきました。

しかし、伝統を重んじる保守的な信徒グループである「ストロング・ビリーバーズ(Strong Believers)」の間では、今なおこの歴史的な賛美歌集が大切に使い続けられています。

概要まとめ

キンゴの賛美歌集の基本情報
項目 詳細
正式名称 Dend Forordnede Ny Kirke-Psalme-Bog
承認年 1699年
主要編纂者 トーマス・キンゴ(オーデンセ司教)
収録数 86曲の賛美歌
主な利用地域 デンマーク、ノルウェー

Frequently Asked Questions

なぜ「キンゴの賛美歌集」と呼ばれているのですか?

表紙にトーマス・キンゴの名前が記載されているためです。この聖歌集は、彼がその10年前に編集した作品をベースに選曲されたため、彼の名前が冠されました。

この賛美歌集には歌以外に何が載っていますか?

賛美歌だけでなく、典礼年ごとの集祷文(collects)、使徒書や福音書の朗読箇所、および教会で用いられる様々な祈祷文が収録されています。

現在でもこの賛美歌集を使っている人はいますか?

はい。ノルウェーの保守的なキリスト教グループである「ストロング・ビリーバーズ」などのコミュニティでは、現在も使用されています。

どのような仕組みで曲が配置されていますか?

教会暦(典礼年)に基づいて配置されており、1年の中の各祝日や行事にふさわしい曲が指定される仕組みになっています。

ノルウェーではいつ頃まで主流だったのでしょうか?

1870年代まで多くの地域で使用されていましたが、その後、ランドスタッドやハウゲによる新しい賛美歌集に取って代わられました。