Kate T. Cory, Inside the Kiva, oil, 1905–1912, Waukegan Historical Society
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ケイト・コリーホピ族の魂を記録した先駆的な女性芸術家

🗓 2026年8月14日

20世紀初頭、アメリカ南西部の荒野に身を投じ、先住民ホピ族の生活を深く、そして親密に記録した女性がいました。ケイト・コリー(Kate Cory)は、単なる訪問者ではなく、彼らのコミュニティに深く溶け込んだ稀有な芸術家です。画家、彫刻家、そして写真家として多才な才能を発揮した彼女は、消えゆく伝統的な生活様式を、外部からの視点ではなく、内部からの共感を持って描き出しました。

主要な事実(Key Facts)

  • 多才な芸術活動:油彩画、写真、彫刻、壁画など幅広い分野で活動した。
  • ホピ族との深い絆:1905年から1912年にかけてホピ族の村に居住し、彼らの言語を習得した。
  • 貴重な記録:約600枚の写真を通じて、ホピ族の日常から神聖な儀式までを詳細に記録した。
  • 独自のライフスタイル:ホピ族の影響を受け、消費主義を排した質素で自給自足に近い生活を実践した。
  • 後世への遺産:彼女の作品はスミソニアン美術館やスモキ博物館などに所蔵されている。

芸術的キャリアの始まりとニューヨーク時代

1861年にイリノイ州ウォキガンで生まれたケイト・コリーは、自由を尊ぶ家庭環境で育ちました。彼女の父ジェームズは奴隷解放運動に関わり、地下鉄道(逃亡奴隷を助ける秘密ネットワーク)を支援していた人物でした。このような背景が、後の彼女の独立心や他者への深い共感に影響を与えたと考えられます。

ニューヨークへ移った彼女は、クーパーユニオンやニューヨーク芸術学生連盟で油彩画と写真を学びました。卒業後は商業芸術家として活動し、雑誌への寄稿や、陶芸家チャールズ・フォルクマーとの共同作業で歴史的人物を描いた装飾プレートなどを制作し、生計を立てていました。

ホピ族との出会いとメサでの生活

1905年、芸術家ルイ・エキンとの出会いをきっかけに、コリーはアリゾナ州のホピ保留地へと向かいました。当初は芸術家コロニーの一員となる予定でしたが、実際に到着すると、彼女だけが唯一の参加者であったことが判明します。しかし、彼女はこの状況を厭わず、オライビやワルピといった村で数年間にわたり生活を共にしました。

彼女はホピ族の家屋の最上階に住み、梯子を使って出入りするという彼らの伝統的な生活様式に完全に適応しました。白人女性として初めて彼らの秘密の儀式や慣習に立ち会うことを許され、言語を習得してコミュニティの調停役を務めるほどに信頼を得ました。

Kate Cory, at a Hopi village, c. 1905–1912

この期間に彼女が撮影した約600枚の写真は、当時のホピ族の生活をありのままに伝えています。ポーズをとらせた肖像画だけでなく、日常の何気ない瞬間や神聖な儀式の様子が捉えられており、そこには撮影者と被写体の間の温かい信頼関係が滲み出ています。

Kate T. Cory, Piki making, photograph, 1905–1912, Museum of Northern Arizona, Flagstaff. The image is representative of the personal nature of the composition – taken from the floor level, capturing light and shade and focused on everyday life.[1]
Kate T. Cory, Young married woman with corn pollen and braids, 1905–1912, Museum of Northern Arizona, Flagstaff

文化の記録としての作品群

コリーの作品は、近代化の波にさらされていたホピ族の伝統的な生き方を保存する重要な資料となりました。彼女は写真を商業的に利用せず、自身のエッセイの挿絵として用いるにとどめました。その真摯な姿勢は高く評価され、後にスミソニアン協会が彼女の絵画を買い取ることとなりました。

Kate T. Cory, Indian with Hoe, 1906, Smithsonian American Art Museum
Kate T. Cory, Inside the Kiva, oil, 1905–1912, Waukegan Historical Society

プレスコットでの晩年と精神的遺産

1912年に村を離れた後、コリーはアリゾナ州プレスコットに移住しました。ホピ族との生活で得た「物質的な所有に執着しない」という価値観は、彼女のその後の人生に深く刻まれました。彼女は極めて質素な生活を送り、古くなった服を繕い、雨水を浄水して写真現像に使うなど、徹底して無駄を省いた暮らしを実践しました。

Kate T Cory, Untitled photograph of Comanche dance, 1905–1912

また、地元の「スモキ(Smoki)」と呼ばれるグループがホピ族の儀式を再現する活動を支援し、スモキ博物館の設計や装飾、そして大規模な壁画の制作に携わりました。彼女の作品は、単なる芸術的な表現を超え、文化への敬意と保存への情熱が込められたものでした。

Kate T. Cory, Buffalo Dancer, oil, 1919, Smoki Museum, Prescott, Arizona
Kate T. Cory, Sun Ceremony, c. 1920, Smithsonian American Art Museum

1958年に97歳で没した彼女の墓碑には、「アリゾナの芸術家」であるとともに、「与える喜びを持った人」という言葉が刻まれています。

Grave-site of Kate T. Cory

ケイト・コリーの活動まとめ

ケイト・コリーの経歴と功績
期間・場所 主な活動内容 成果・影響
ニューヨーク時代 商業芸術、陶芸プレート制作 芸術的基礎の確立と自立した生活
ホピ村居住期 (1905-1912) 民族誌的な写真撮影、絵画制作 約600枚の貴重な写真と文化記録の作成
プレスコット時代 (1913-1958) スモキ博物館の支援、壁画制作 地域文化への貢献と質素な哲学の実践

よくある質問(FAQ)

ケイト・コリーはなぜホピ族に受け入れられたのですか?

彼女が単なる観察者としてではなく、彼らの言語を学び、生活様式に完全に適応しようとする真摯な姿勢を持っていたためです。その結果、白人女性として初めて彼らの神聖な儀式や秘密の慣習に立ち会うことが許されました。

彼女が撮影した写真は現在どこで見ることができますか?

多くのネガは北部アリゾナ博物館(Museum of Northern Arizona)で保存・管理されており、一部は書籍『The Hopi Photographs: Kate Cory: 1905–1912』に収録されています。ただし、文化財の権利保護のため、閲覧が制限されている画像もあります。

彼女の芸術スタイルにはどのような特徴がありますか?

写真においては、床に近い視点から光と影を捉えるなど、親密で自然な構図を重視しました。絵画では、ホピ族の人物や風景を、敬意を持って詳細に描き出しています。

彼女の人生観にどのような影響を与えましたか?

ホピ族の簡素な生き方に深く感銘を受けた彼女は、現代の消費主義を避け、リサイクルや物々交換を好む極めて質素な生活を送るようになりました。この精神性は、彼女の晩年の生活様式に色濃く反映されていました。

References

  1. Susan Bernardin. Trading Gazes: Euro-American Women Photographers and Native North Americans, 1880–1940. Rutgers University Press; 2003.  . Chapter Two: I Became the Colony – Kate Cory's Hopi photographs. p. 74.
  2. Petteys, Chris, Dictionary of Women Artists, G K Hill & Co. publishers, 1985
  3. Search: Kate Cory Archived August 6, 2018, at the Death and Dispositions. Sharlot Hall Museum, Prescott, Arizona. Retrieved March 31, 2014.
  4. Tricia Loscher. "Kate Thomson Cory: Artist in Hopiland." The Journal of Arizona History. 2002 . 43:1. p. 1.
  5. Kate Cory, Waukegan, Illinois 1880 census. Tenth Census of the United States, 1880. (NARA microfilm publication T9, 1,454 rolls). Records of the Bureau of the Census, Record Group 29. National Archives, Washington, D.C.
  6. Brookhaven Press. The Past and Present of Lake County, Illinois: Containing a History of the County – its Cities, Towns, &c., a Biographical Directory of Its Citizens, War Record of Its Volunteers in the Late Rebellion, Portraits of Early Settlers and Prominent Men, General and Local Statistics, Map of Lake County, History of Illinois, Illustrated, History of the Northwest, Illustrated, Constitution of the United States, Miscellaneous Matters, Etc., Etc. Brookhaven Press; 1877.  . p. 331.
  7. Kate Cory. Waukegan Historical Society. Retrieved March 31, 2014.
  8. Claudette Simpson, "A Little Background on Artist Kate Cory." The Prescott Courier. September 13, 1974. p. 16.
  9. Opitz, Glenn B., Mantle Fielding's Dictionary of American Painters, Sculptors & Engravers, Apollo Books, Poughkeepsie, NY, 1988
  10. "Many and Varieties of Activities of Women: Working among the Indians." Atlanta Constitution Magazine Section. December 15, 1915.

📸 フォトギャラリー

Kate T. Cory, Inside the Kiva, oil, 1905–1912, Waukegan Historical Society
Kate T. Cory, Indian with Hoe, 1906, Smithsonian American Art Museum
Kate T. Cory, Piki making, photograph, 1905–1912, Museum of Northern Arizona, Flagstaff. The image is representative of the personal nature of the composition – taken from the floor level, capturing light and shade and focused on everyday life.[1]
Kate T Cory, Untitled photograph of Comanche dance, 1905–1912
Kate T. Cory, Young married woman with corn pollen and braids, 1905–1912, Museum of Northern Arizona, Flagstaff
Kate T. Cory, Buffalo Dancer, oil, 1919, Smoki Museum, Prescott, Arizona
Kate T. Cory, Sun Ceremony, c. 1920, Smithsonian American Art Museum
Kate Cory, at a Hopi village, c. 1905–1912
Grave-site of Kate T. Cory