現代の学術研究において、膨大な知識をいかにして次世代へ継承し、効率的に活用するかは極めて重要な課題です。この使命を担うのが、アメリカに拠点を置く非営利団体Ithaka Harbors(以下、Ithaka)です。同団体は、デジタル技術を駆使して学術的な記録を保存し、持続可能な形で研究や教育を促進することを目的として活動しています。
Key Facts
- 組織形態: 501(c)(3)に準拠した非営利団体
- 主要サービス: 学術データベース「JSTOR」、デジタル保存サービス「Portico」、コンサルティング部門「Ithaka S+R」を運営
- 設立背景: アンドリュー・W・メロン財団の助成により、JSTOR(1995年)およびIthaka(2003年)が誕生
- 財務規模: 2019年度の総収益は1億500万ドルに達し、その大部分をJSTORの利用料が占める
- 本部所在地: ニューヨーク州ニューヨーク市
Ithakaの歩みと組織の統合
Ithakaの歴史は、1995年にケビン・M・ガスリー氏の主導で設立されたデジタルライブラリ「JSTOR」から始まります。その後、2003年にはIthakaが設立され、いずれもアンドリュー・W・メロン財団(当時の代表はウィリアム・G・ボーウェン氏)からの多額の助成金によって基盤が築かれました。
長年にわたり密接に連携してきたこれら2つの組織は、2009年に正式に合併しました。この統合の狙いは、学術機関がデジタル技術をより効果的に活用し、共同行動を通じてシステム全体のコストを削減しながら、研究と教育の質を向上させることにありました。
提供する3つの主要サービス
Ithakaは、役割の異なる3つの柱となるサービスを展開し、学術コミュニティを包括的にサポートしています。
1. JSTOR:学術情報の巨大データベース
JSTORは、世界中の研究者が利用する主要な学術リソースのデータベースです。学術雑誌(ジャーナル)だけでなく、書籍や一次資料など、多岐にわたる研究資料をデジタル形式で提供しています。
2. Portico:最後の砦となるデジタルアーカイブ
2002年に「電子アーカイブ・イニシアチブ」として始まり、2004年にIthakaへ移管されたのがPorticoです。このサービスは、電子ジャーナルのコンテンツを保存する「暗い(dim)」アーカイブとして機能します。これは、出版社が廃刊になったり倒産したりした場合に、コンテンツへのアクセスを維持するための最終的なバックアップ手段となる仕組みです。実際に、出版社によるアクセス停止後にPorticoを通じて公開された事例(例:Graft: Organ and Cell Transplantation誌)もあります。
3. Ithaka S+R:研究とコンサルティング
Ithaka S+Rは、大学、図書館、出版社、非営利団体などを対象としたリサーチおよびコンサルティングサービスを提供しています。特に、米国の大学教員や図書館長を対象とした3年ごとの大規模調査を実施しており、その報告書は学術界の動向を把握するための貴重な資料となっています。
外部評価と公的支援
Ithakaの取り組みは、米国の政府機関からも高く評価されています。2004年には、電子ジャーナルの長期的なアクセスを確保する「Porticoプロジェクト」に対し、米国議会図書館から300万ドルのNDIIPP助成金を受け取りました。
また、2008年にはデジタル書籍の保存モデルを構築するプロジェクトが認められ、国立人文科学基金(NEH)および博物館・図書館サービス局(IMLS)からデジタル・パートナーシップ助成金の受領者に選出されています。さらに、2010年と2011年には、米国労働省や米国陸軍から、アーカイブコレクションの拡充に関する連邦契約を獲得しています。
組織概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 設立年 | 1995年(JSTOR)、2003年(Ithaka) |
| 代表者 | Kevin M. Guthrie |
| 主な収益源 | JSTORのサービス利用料 |
| 主要事業 | デジタルライブラリ、電子アーカイブ、学術コンサルティング |
| 主な支援者 | Andrew W. Mellon Foundation |
Frequently Asked Questions
Ithaka Harborsとはどのような組織ですか?
デジタル技術を用いて学術的な記録を保存し、研究や教育を支援することを目的としたアメリカの非営利団体です。JSTORやPorticoなどの重要なデジタルインフラを運営しています。
JSTORとPorticoの違いは何ですか?
JSTORは研究者が日常的に資料を検索・閲覧するための「アクティブなデータベース」であるのに対し、Porticoは出版社が消滅した際などにコンテンツを失わないための「バックアップ用アーカイブ」という役割を担っています。
Ithaka S+Rはどのような活動をしていますか?
学術界の現状を分析する調査研究や、図書館や大学などの組織に対するコンサルティングを行っています。特に米国の教員や図書館長への定期的な意識調査で知られています。
どのような資金で運営されていますか?
設立当初はアンドリュー・W・メロン財団の助成金で運営されていましたが、現在はJSTORのサービス利用料などの収益によって運営されています。
どのような人物が運営に関わっていますか?
代表のケビン・M・ガスリー氏をはじめ、ノースウェスタン大学やプリンストン大学、MITなどの元学長や、著名な教授陣が理事(Trustees)として名を連ねています。
References
- "Kevin M. Guthrie". Ithaka Harbors. Archived from the original on February 19, 2015. Retrieved January 13, 2015.
- "President Emeritus Honored". . September 14, 2012. Archived from the original on September 21, 2014. Retrieved January 19, 2013. (subscription required)
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- "Milestones in Our History". Ithaka. Archived from the original on 12 March 2015. Retrieved 22 November 2024.
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