私たちがかつて日常的に利用していたCD-ROMやDVDなどの光学メディアにおいて、データの配置ルールを定めた世界標準規格がISO 9660です。この規格があるおかげで、異なるメーカーのドライブや異なるOSであっても、同じディスク内のファイルを正しく読み取ることができました。
もともとは「High Sierra Format」という形式に基づいており、UnixやFATのような階層的なツリー構造を採用することで、データのアクセス効率を高めています。1988年にISOおよびEcma Internationalによって標準化されて以来、多くの拡張機能が追加され、現代のディスクイメージ形式(.isoファイル)の基礎となっています。
Key Facts
- 最大容量: 理論上の最大ボリュームサイズは約8 TiB(約8.8 TB)に達します。
- 互換性: クロスプラットフォーム設計であり、Windows, Linux, macOSなど多くのOSでサポートされています。
- 構造: システムエリア、ボリューム記述子、パステーブル、ディレクトリおよびファイルで構成されます。
- 進化: 基本的な制限を解消するため、JolietやRock Ridgeなどの拡張仕様が開発されました。
ISO 9660の内部構造と仕様
ISO 9660のディスク構造は、大きく分けて「システムエリア」と「データエリア」の2つに分かれています。システムエリアはディスクの先頭32,768バイト(16セクタ分)を指し、ISO 9660自体のファイル管理には使用されません。この領域は、PCの起動に必要なブートコードや、Mac OS専用のコンテンツを格納するハイブリッドディスクなどで活用されています。
データエリアには、ディスク全体の情報を管理する「ボリューム記述子」や、ファイルへの経路を示す「パステーブル」が含まれます。これにより、OSはディスク上のどこにどのファイルがあるかを迅速に特定できます。

ファイル名の制限とレベル
初期の規格では、互換性を維持するためにファイル名やディレクトリの深さに厳しい制限がありました。具体的には、ディレクトリの階層は最大8レベルまでとされ、文字数や使用可能な文字種も限定されていました。しかし、後の修正(Amendment 1)や「拡張ボリューム記述子(EVD)」の導入により、文字数制限が207文字まで緩和され、より柔軟なファイルツリーの構築が可能になりました。
ボリュームサイズの決定要因
ISO 9660が最大8 TiBという大容量を扱えるのは、ボリュームサイズに32ビットのセクタカウントを使用しているためです。1セクタあたり2,048バイトという論理セクタサイズを維持することで、DVDやBlu-rayなどの後継メディアでも、古いソフトウェアとの読み取り互換性を保っています。
機能拡張と互換性の向上
標準のISO 9660だけでは、現代的なOSが求める長いファイル名や詳細な権限設定に対応できませんでした。そこで、以下のような拡張仕様が登場しました。
- Joliet: Microsoftが開発した拡張で、Unicode(UCS-2BE)をサポートし、長いファイル名や多言語での表記を可能にしました。
- Rock Ridge: UNIX系OS向けに開発され、大文字小文字の区別、シンボリックリンク、所有者権限(UID/GID)などの属性を保持できます。
- El Torito: CD-ROMからのブート(起動)を可能にする規格です。フロッピーディスクのエミュレーションやハードディスクエミュレーションなどのモードを備えています。
- SUSP (System Use Sharing Protocol): ディレクトリエントリの未使用領域を利用して、複数の拡張属性を競合なく追加するための共通プロトコルです。
光学メディアの多様な形式と後継規格
ISO 9660はCD-ROMだけでなく、多種多様な光学メディアで利用されてきました。Blu-ray Disc (BD) や HD DVD、さらには特殊なアーカイブ用ディスク(Archival Disc)やゲーム機専用の形式(GD-ROMなど)まで、その影響は広範囲に及びます。
また、書き換え可能なメディア(CD-Rなど)で複数回の書き込み(マルチセッション)を実現するためにISO 13490が策定されました。さらに、これらの欠点を解消し、DVDの標準となったのがUDF (Universal Disk Format)です。
| 規格/拡張名 | 主な目的 | 特徴 |
|---|---|---|
| ISO 9660 (標準) | 基本互換性の確保 | 厳格なファイル名制限、最大8階層 |
| Joliet | Windows互換性の向上 | Unicode対応、長いファイル名のサポート |
| Rock Ridge | UNIX互換性の向上 | パーミッション、シンボリックリンクの保持 |
| El Torito | ディスク起動 | BIOSによるブートコードの読み込み |
| UDF | 次世代メディア対応 | DVD/BD標準、書き換え効率の向上 |
ディスクイメージ(.isoファイル)について
現在、ISO 9660という言葉を最も頻繁に耳にするのは「ISOイメージ」という形式でしょう。拡張子 .iso のファイルは、光学ディスクのデータトラックをそのまま電子的にコピーしたものです。このファイルには、前述の「システムエリア」を含むすべてのデータ構造が保持されているため、仮想ドライブでマウントすることで、物理ディスクを挿入したときと同じ状態でアクセスできます。
Frequently Asked Questions
ISO 9660とUDFの違いは何ですか?
ISO 9660は主に読み取り専用のCD-ROM向けに設計された古い規格であり、ファイル名などの制限が強いのが特徴です。一方、UDFはDVDやBlu-ray向けに設計された後継規格で、より大容量のデータ管理や書き換え操作に適しています。
なぜ「.iso」ファイルと呼ばれるのですか?
このファイル形式が、国際標準化機構(ISO)が定めたISO 9660ファイルシステムの構造をそのまま保存しているため、慣習的に「ISOイメージ」や「.isoファイル」と呼ばれています。
JolietやRock Ridgeがなくてもファイルは読めますか?
はい、読めます。これらの拡張機能は「追加情報」として保存されているため、対応していないOSであっても、標準のISO 9660形式で記述された基本ファイル名(短い名前)として認識し、アクセスすることが可能です。
ISO 9660で扱える最大容量はどれくらいですか?
理論上の最大ボリュームサイズは8 TiB(テビバイト)です。これは32ビットのセクタカウントと2,048バイトの論理セクタサイズに基づいた計算結果です。
References
- ECMA-119 - Volume and file structure of CDROM for information interchange - 4th edition, June 2019 at the (archived 2023-08-20) (linked from ECMA-119 - Ecma International)
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