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ISO 11940-2によるタイ語の簡略転写方式とその仕組み

🗓 2026年8月13日

タイ語をラテン文字(アルファベット)で表記する方法には、厳格な綴りの再現を目的としたものと、実際の発音を重視したものがあります。ISO 11940-2は、後者の「簡略転写」を定義した国際標準規格です。この規格は、タイ語の複雑な綴りを、特別な記号を使わずに誰でも読みやすい形式に変換することを目的としています。

もともとISO 11940(現在はISO 11940-1と呼称)という規格が存在し、そこではダイアクリティカルマーク(発音区別符号)を多用して、タイ語の綴りを完全に復元できる「可逆的な翻字」が行われていました。しかし、その結果は実際の発音とは大きく異なります。そこで、ISO 11940-1で得られた翻字結果を、より直感的な「発音ベースの転写」へと変換するためのルールを定めたのがISO 11940-2です。

Key Facts

  • 発音重視:綴りではなく、実際の聞こえ方に基づいた転写を行う。
  • シンプルさ:ダイアクリティカルマークを一切排除し、標準的なラテン文字のみを使用する。
  • 情報の省略:母音の長さ(長短)や声調の情報は、この規格では切り捨てられる。
  • RTGSとの類似性:タイ王室一般転写方式(RTGS)とほぼ同様の結果となる。

転写の基本原則と特徴

ISO 11940-2の最大の特徴は、タイ語の正書法(書き方)ではなく、音韻論(発音の仕組み)に基づいている点です。そのため、文字として書かれていないが発音される「隠れた母音」は補完され、逆に書かれていても発音されない「黙字」は削除されます。

母音の表記には ⟨a⟩, ⟨e⟩, ⟨i⟩, ⟨o⟩, ⟨u⟩ の5文字が基本として使われます。これらは国際音声記号(IPA)に近い音価を持ちますが、特定の組み合わせ(二文字表記)によって、タイ語特有の音を表現します。例えば、⟨ae⟩, ⟨oe⟩, ⟨ue⟩ はそれぞれ /ɛ, ɤ, ɯ/ の音を表します。

子音については、IPAの基準に準拠していますが、一部に独自のルールがあります。特に、有気音(息を強く出す音)を表現するために ⟨ph⟩, ⟨th⟩, ⟨kh⟩, ⟨ch⟩ といった ⟨h⟩ を伴う表記を用い、無気音の ⟨p⟩, ⟨t⟩, ⟨k⟩, ⟨c⟩ と明確に区別しています。

また、音節の冒頭に母音が来る場合は、声門閉鎖音を表すアポストロフィ ⟨'⟩ を挿入します。これにより、単語内の音節境界を明確にすることが可能です。

詳細な変換ルール

子音の転写

子音は、語頭(初声)で使われる場合と、語末(末尾子音)で使われる場合でルールが異なります。タイ語では多くの文字が語末に配置されると、限られた数種類の音に集約されるため、転写されるラテン文字も少なくなります。

子音の転写対応表(抜粋)
区分 IPA音価 タイ文字(例) ISO 11940-2表記
鼻音 [ m ] m
無気破裂音 [ tɕ ] c
有気破裂音 [ tɕʰ ] ฉ, ช, ฌ ch
声門閉鎖音 [ ʔ ] '
末尾子音(t) [ t ] จ, ช, ส など多数 t

母音と二重母音の転写

母音は、長短の区別なく同一の記号で表記されます。また、IPAにおける /o/ と /ɔ/ の区別も、この規格ではどちらも ⟨o⟩ として統合されます。

二重母音や三重母音については、母音文字の組み合わせで表現します。例えば、/aːw/ や /aw/ は ⟨ao⟩ となり、/iːa/ や /ia/ は ⟨ia⟩ と表記されます。このように、複雑な母音体系をシンプルなアルファベットの組み合わせに落とし込んでいます。

RTGS(タイ王室一般転写方式)との違い

ISO 11940-2の結果は、タイで広く使われているRTGSと非常に似ていますが、わずかな違いがあります。第一に、音節頭の母音に ⟨'⟩ を用いる点です。これにより、RTGSでしばしば用いられるハイフンによる音節区切りの必要性がなくなります。第二に、歯茎硬口蓋破擦音の有気性の保持です。RTGSでは จ, ฉ, ช, ฌ がすべて ⟨ch⟩ になりがちですが、ISO 11940-2では จ を ⟨c⟩ と表記し、区別を明確にしています。

Frequently Asked Questions

ISO 11940-2で声調は表現できますか?

いいえ、この規格では声調に関する情報はすべて除外されます。簡略化を目的としているため、声調を再現するルールは含まれていません。

母音の長い音と短い音はどう区別しますか?

区別しません。ISO 11940-2では、長母音と短母音の両方に同じラテン文字を割り当てて表記します。

なぜ「c」という文字が使われるのですか?

IPAの /tɕ/ 音(日本語の「じ」に近い音)を表現するためです。これにより、有気音の ⟨ch⟩ と無気音の ⟨c⟩ を明確に使い分けることができます。

この規格はタイ語の綴りを復元するのに適していますか?

不向きです。綴りの完全な復元(可逆性)が必要な場合は、ダイアクリティカルマークを使用する ISO 11940-1 を使用する必要があります。

「'」という記号はどのような時に使われますか?

単語や音節が母音から始まる場合、タイ語の null consonant である「อ」に相当する部分に配置され、音節の始まりを示します。

References

  1. When it has the final consonant ย
  2. When it has the final consonant ร