英国の出版業界において、かつて圧倒的な存在感を放っていたのがIPCメディア(およびその前身組織)です。1960年代から2020年に至るまで、社名を何度も変えながら、消費者向け雑誌から専門誌、そして伝説的なコミックまで、幅広いコンテンツを世に送り出してきました。本記事では、複雑な買収劇と組織再編を経て、最終的にFuture plcに統合されるまでの軌跡を辿ります。

Key Facts

  • 設立と終焉: 1963年に設立され、2020年にFuture plcによって買収されるまで約57年間活動。
  • 社名の変遷: International Publishing Company → IPC Magazines → IPC Media → Time Inc. UK → TI Mediaと変遷。
  • 事業領域: 消費者マーケティング、ブランドライセンス、エンターテインメント、ニュース、雑誌出版など多岐にわたる。
  • 主要拠点: イギリス、ロンドン。
  • 後継企業: Future plc。

IPCの誕生と初期の拡大

1950年代半ばの英国出版界は、Associated NewspapersやOdhams Pressなどの数社による激しいシェア争いの時代でした。この状況に変化が訪れたのは1958年、Daily Mirror Newspapers Limitedの会長であったセシル・ハームズワース・キングがAmalgamated Pressを買収したことです。

これにより、1963年にはInternational Publishing Company (IPC)が誕生しました。当時のIPCは、以下の3つの主要部門で構成されていました。

  • IPC Newspapers: Daily MirrorやSunday Mirrorなどの新聞事業。
  • IPC Magazines: 一般消費者向け雑誌およびコミック。
  • IPC Trade and Technical: 専門誌(後のIPC Business Press Ltd.)。

組織の再編とReed Internationalによる買収

1960年代後半、IPC内部では激しい再編が行われました。特にコミック部門では、Fleetwayの少年向け出版物やOdhamsのPower Comicsなどが統合・整理され、IPC Magazines Ltd.の下に集約されました。

経営面では、1968年の社内クーデターによりセシル・キングが退任し、ヒュー・カドリップが就任します。しかし、カドリップは新技術への投資に消極的であり、結果として1970年に製紙会社であるAlbert E Reed(後のReed International)による逆買収が行われました。その後、1974年には雑誌・コミック部門の「IPC Magazines Ltd」と新聞部門の「Mirror Group Newspapers」に分離され、後者は1984年にロバート・マックスウェルのPergamon Holdingsに売却されました。

コミック資産の分散と「ラッズ・マグ」の時代

IPCはコミック分野でも大きな影響力を持ちましたが、その権利は複雑に分散していきました。1987年に1970年以降に作成されたキャラクターを含む一部資産がFleetway Publicationsとして分離され、Pergamon Holdingsへ売却。その後、FleetwayはEgmont UKを経て、最終的にRebellion Developmentsへと引き継がれました。

一方で、IPCは1970年以前のキャラクター(Sexton Blakeなど)を保持し続けました。また、1990年代初頭には男性向け雑誌の先駆けとなる「Loaded」を創刊し、いわゆる「ラッズ・マグ(Lad's mags)」ブームを巻き起こしました。

Time Inc.への移行からFuture plcによる統合まで

1998年、IPC Magazines LtdはベンチャーキャピタルCinvenの資金によるマネジメント・バイアウトを経てIPC Mediaに改称。2001年には米国のTime Inc.(当時Time Warner傘下)に買収されました。

その後、所有権は以下のように移り変わります。

  1. 2018年: Meredith CorporationがTime Inc.を買収後、英国部門をプライベートエクイティのEpirisに関連するファンドに売却。社名をTI Mediaに変更。
  2. 2019年: 音楽雑誌部門をBandLab Technologiesに売却。
  3. 2020年: 最終的にFuture plcがTI Mediaを1億4,000万ポンドで買収し、その歴史に幕を閉じました。

出版ポートフォリオの概要

TI Media買収直前のFuture plcに引き継がれた主要ブランドは、ライフスタイルから専門趣味まで非常に多岐にわたっていました。

TI Media(旧IPC)の主要出版ブランド例
カテゴリー 代表的なタイトル
住まい・インテリア Ideal Home, Homes & Gardens, Livingetc, Wallpaper
女性・ライフスタイル Woman & Home, Woman's Weekly, Marie Claire U
趣味・アウトドア Country Life, Decanter, Horse & Hound, Cycling Weekly
スポーツ・専門誌 Golf Monthly, Rugby World, Yachting Monthly
テレビ・レビュー TVTimes, What's on TV, Trusted Reviews

Frequently Asked Questions

IPCメディアは現在どのような状態ですか?

独立した企業としては消滅しており、2020年にFuture plcに買収されました。現在、かつての多くのブランドはFuture plcのポートフォリオの一部として運営されています。

Fleetway Publicationsとはどのような関係ですか?

FleetwayはもともとIPCの一部でしたが、1987年に分離・売却されました。これにより、IPCのコミック資産は「1970年以前に作成されたもの」と「それ以降のもの」に分かれ、異なる所有者の手に渡ることになりました。

Time Inc. UKとTI Mediaの違いは何ですか?

実質的に同じ組織です。Time Inc.傘下にあった際に「Time Inc. UK」と呼ばれ、2018年にEpirisへ売却された後、「TI Media」へとリブランドされました。

IPCが創刊した有名な雑誌はありますか?

1990年代に男性誌ブームを巻き起こした「Loaded」や、長年親しまれた「TVTimes」などが代表的です。また、多くの専門的な趣味の雑誌(Country Lifeなど)も展開していました。

コミックの権利は現在どこが持っていますか?

多くのIPC/Fleetwayのアーカイブは、現在Rebellion Developmentsが所有しています。ただし、「Dan Dare」のように個別に売却されたキャラクターも存在します。