現代社会が直面する複雑な課題を解き明かすため、経済学や行動科学を含む社会科学の発展は不可欠です。かつて世界規模でこの分野の推進を担っていたのが、国際社会科学評議会(International Social Science Council: ISSC)です。1952年の設立から2018年の統合まで、ISSCは国境を越えた研究ネットワークの構築と、学術的知見を実社会の政策に結びつける架け橋として重要な役割を果たしました。

Key Facts

  • 設立と統合: 1952年にUNESCOの主導で設立され、2018年7月に国際科学評議会(ICSU)と合併し、現在の国際科学評議会(ISC)となりました。
  • 拠点: フランスのパリにあるUNESCO本部に置かれていました。
  • 主な目的: 社会科学の質の向上、研究能力の構築、および学際的な連携の促進。
  • 代表的な活動: 3年ごとの「世界社会科学報告」の作成や「世界社会科学フォーラム」の開催。
  • 運営理念: 学問の自由、透明性、そして知識を社会価値に還元することを重視していました。

ISSCの設立背景と組織の変遷

ISSCは、1951年の第6回UNESCO総会で採択された決議に基づき、1952年10月に誕生しました。フランス法に基づいて登録されたこの国際非政府組織(INGO)は、世界中の社会科学者が協力し合えるプラットフォームを提供することを目的としていました。

組織のガバナンスは、全会員で構成される総会が最高意思決定機関となり、3年ごとに活動報告と今後の方向性を決定していました。実務的な運営は、総会で選出された会長、副会長、会計、および一般委員からなる執行委員会が担い、事務局長がその執行を統括していました。また、世界各地の専門家がボランティアとして委員会やワーキンググループに参加し、専門的な助言を提供していました。

その後、自然科学分野の組織である国際科学評議会(ICSU)との統合を経て、2018年7月に現在の国際科学評議会(ISC)へと発展し、科学全般を包括する体制へと移行しました。

社会科学の発展に向けたミッション

ISSCが掲げた最大の使命は、世界各地で社会科学の有用性と斬新さを高めることでした。具体的には、以下のような目標を追求していました。

  • 国家や地域の枠組みを超えた共同研究の推進。
  • 研究基盤が未整備な地域における能力構築(キャパシティ・ビルディング)の支援。
  • 社会科学リソースに関するデータの収集・分析・普及を行う中心的拠点としての機能。
  • 社会科学内部の学際的協力、および人文科学や自然科学との連携拡大。
  • 学術的知見を公共政策や地域ニーズに反映させ、人々の生活の質を向上させること。
  • 市民の社会科学リテラシーの向上。

これらの活動において、ISSCは女性やマイノリティなど、研究分野で過小評価されがちなグループの参画を積極的に支援し、公平なアクセスと多様性の確保に努めました。

主要な活動と成果

世界社会科学報告(World Social Science Report)

UNESCOとの戦略的パートナーシップのもと、3年ごとに発行された報告書です。社会科学が直面する課題を整理し、将来の研究や政策への提言を行いました。2010年には「知識の分断」を、2013年には「変化する地球環境」を、2016年には「不平等の克服」をテーマに、世界的な視点から分析を行いました。

世界社会科学フォーラム(World Social Science Forum)

研究者、資金提供者、政策立案者が一堂に会し、地球規模の重要課題を議論する場を提供しました。2009年のノルウェー(ベルゲン)での第1回開催を皮切りに、カナダ(モントリオール)、南アフリカ(ダーバン)、そして2018年には日本の福岡で第4回フォーラムが開催されました。

持続可能性への転換(T2S)と研究ネットワーク

「持続可能性への転換(Transformations to Sustainability: T2S)」プログラムを通じて、社会科学主導の持続可能な社会への変革を支援しました。スウェーデン国際開発協力庁(Sida)の資金援助を受け、多くのシードプロジェクトや知識ネットワークを構築し、Future Earthなどの取り組みにも寄与しました。

また、貧困、災害リスク、ジェンダーなどのテーマに基づいた国際的な研究プログラムを共同後援し、世界中の専門家をつなぐネットワークを構築しました。

表:ISSCの概要まとめ

国際社会科学評議会(ISSC)基本データ
項目 内容
設立年 1952年
解散(統合)年 2018年7月
本部所在地 フランス、パリ(UNESCO本部内)
後継組織 国際科学評議会(International Science Council: ISC)
主な成果物 世界社会科学報告、世界社会科学フォーラム
主要賞 ステイン・ロッカン賞、マッテイ・ドガン賞

若手研究者の育成と栄誉

ISSCは、次世代のリーダー育成にも注力しました。「世界社会科学フェロー(World Social Science Fellows)」プログラム(2012年〜2015年)では、特に低・中所得国に関連する地球規模の課題に取り組む若手研究者を支援し、国際的なネットワークを構築させました。

また、学術的な卓越性を称えるため、「ステイン・ロッカン比較社会科学研究賞」や「マッテイ・ドガン学際的研究賞」などの権威ある賞を授与し、質の高い研究を奨励しました。

Frequently Asked Questions

ISSCは現在も活動していますか?

いいえ。ISSCは2018年7月に国際科学評議会(ICSU)と合併し、現在は「国際科学評議会(ISC)」という一つの組織になっています。

ISSCの主な目的は何でしたか?

世界中で社会科学の研究水準を向上させ、国境を越えた連携を促進すること、そして研究成果を実際の公共政策に活用して社会を改善することを目指していました。

世界社会科学フォーラムとはどのようなイベントでしたか?

社会科学の研究者や政策決定者が集まり、地球規模の課題について議論し、今後の研究の優先順位を決定するための国際会議です。日本(福岡)でも開催された実績があります。

どのような組織がISSCに加盟していましたか?

日本学術会議や英国アカデミー、中国社会科学院など、世界各国の国立アカデミー、研究評議会、および社会科学系の国際連合や協会が幅広く加盟していました。

ISSCが発行していた「世界社会科学報告」とは何ですか?

UNESCOとの提携により3年ごとに発行された報告書で、社会科学の現状分析や、不平等や環境問題などの重要課題に対する学術的な提言をまとめたものです。