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水銀インチ(inHg)とは?気圧・圧力測定の単位と活用シーンを解説

🗓 2026年8月12日

気象予報や航空業界、あるいはエンジンの性能測定などで目にする水銀インチ(inHg)という単位。これは国際単位系(SI)ではないものの、特に米国などの地域や特定の産業分野で深く根付いている圧力の測定単位です。本記事では、水銀インチの定義から、具体的な変換値、そして現代社会でどのように活用されているかについて詳しく解説します。

水銀インチの基礎知識

水銀インチ(記号:inHg または ″Hg)とは、標準的な重力加速度の下で、高さ1インチ(25.4mm)の水銀柱が及ぼす圧力を基準とした単位です。水銀は密度が高いため、比較的短い管の中で大きな圧力を測定できるという特性があります。

ただし、水銀の密度は温度によって変化するため、厳密な変換には温度条件の考慮が必要です。一般的に、古い文献では華氏60度(約15.6℃)の状態を基準としていますが、現代の標準的な変換では異なる条件が用いられることもあります。

Key Facts

  • 定義:高さ1インチの水銀柱によって生じる圧力。
  • 主な用途:米国の気象報告、航空機の高度計、冷凍・空調設備、エンジンの真空度測定。
  • 標準気圧:航空業界などで基準とされる標準気圧は 29.92 inHg(1気圧)。
  • 温度依存性:水銀の密度が変わるため、温度(0℃や16℃など)によってパスカル(Pa)への換算値がわずかに変動する。

主要な単位変換表

水銀インチを他の一般的な圧力単位に変換する場合、以下の数値が目安となります。

水銀インチ(inHg)の単位換算まとめ
変換先単位 換算値(概算) 備考
キロパスカル (kPa) 約 3.386 kPa SI単位系への変換
ポンド毎平方インチ (psi) 約 0.491 psi 米国慣用単位系
パスカル (Pa) ※0℃時 3386.38 Pa 温度条件による変動あり
パスカル (Pa) ※16℃時 3376.85 Pa 旧来の基準値に近い

産業別の具体的な活用事例

航空および自動車分野

航空機の高度計は、地上の基準気圧と飛行中の周囲気圧の差を測定して高度を算出します。日本や北米ではこの設定に水銀インチが用いられます(他国ではヘクトパスカルが主流です)。特に、国によって定められた「移行高度」以上の高度を飛行する場合、実際の海面気圧に関わらず 29.92 inHg という標準値に設定します。これにより算出される高度を「フライトレベル」と呼びます。

また、定速プロペラを備えたピストンエンジン機では、エンジンの出力を示す「マニホールド圧(吸気管圧力)」の測定にこの単位が使われます。自動車の世界でも、特に米国のレースカテゴリーやカスタムカーの分野で、ターボチャージャーのブースト圧やエンジンの真空度を測るゲージに水銀インチが採用されています。

冷却・冷凍システム

空調や冷凍設備の世界では、大気圧より低い圧力、いわゆる「真空度」を表現するために水銀インチが多用されます。冷媒の回収作業や、システム内の水分を取り除く脱水工程、あるいは漏れを確認するリークテストなどで、最大 30 inHg までの真空度が指標となります。

自動車の冷却システムにおいても、専用の真空充填ツールを用いてエア抜きを行う際、22〜27 inHg 程度の真空度を維持することで効率的に冷却水を充填させます。

鉄道ブレーキ

歴史的な用途として、鉄道車両に搭載されていた真空ブレーキの圧力測定においても、水銀インチが標準的な単位として利用されていました。

Frequently Asked Questions

水銀インチとミリメートル水銀柱(mmHg)の違いは何ですか?

どちらも水銀柱の高さで圧力を測る点では同じですが、基準となる長さが異なります。水銀インチは1インチ(25.4mm)を基準とし、mmHg(またはTorr)は1ミリメートルを基準としています。

なぜ航空業界で 29.92 inHg という数値が重要なのですか?

これは標準大気圧(1気圧)に相当する値だからです。異なる気圧条件下にある航空機同士が同じ基準値(標準気圧)を使用することで、高度の誤認を防ぎ、安全な間隔を維持して飛行できるようになります。

温度によって変換値が変わるのはなぜですか?

圧力は水銀の「重さ」で決まりますが、水銀は温度によって体積が膨張または収縮し、密度が変化します。そのため、同じ1インチの高さであっても、温度によってその中に含まれる水銀の質量が変わり、結果として示す圧力値が変動するためです。

現代でもSI単位(パスカルなど)ではなくinHgが使われる理由は?

航空業界や特定の工業規格など、長年蓄積されたデータや計器の設計が水銀インチに基づいているためです。互換性と伝統的な運用上の理由から、特定の専門分野では引き続き利用されています。

References

  1. Barry N. Taylor, Guide for the Use of the International System of Units (SI), 1995, Special Publication 811, Appendix B
  2. From the Ground Up – 29th Edition [] []
  3. "Full automation of aeronautical meteorological observations and reports at aerodromes" (PDF). . August 2016. Archived from the original (PDF) on 7 May 2025. Retrieved 7 May 2025.