ハリウッドの黄金時代を築き、数々の名作を世に送り出してきた20世紀スタジオ(旧20世紀フォックス)。その歩みは、単なる映画制作にとどまらず、業界の技術革新や巨大資本による買収劇など、映画産業の歴史そのものを反映しています。本記事では、スタジオの誕生から現在のディズニー体制に至るまでの激動の軌跡を辿ります。

主要な事実(Key Facts)

  • 創業の経緯:1935年にフォックス・フィルムとトゥエンティエス・センチュリー・ピクチャーズが合併して誕生。
  • 技術革新:1953年にワイドスクリーン方式「シネマスコープ」を導入し、業界標準を塗り替えた。
  • 歴史的ヒット作:1977年の『スター・ウォーズ』の大成功により、財政的に飛躍的な成長を遂げた。
  • 所有権の変遷:マービン・デイビス、ルパート・マードックを経て、2019年にウォルト・ディズニー・カンパニーへ譲渡。
  • 名称変更:2020年より、ブランドの混同を避けるため「20世紀スタジオ」に改称。

スタジオの誕生と黄金期の礎(1935年〜1956年)

20世紀フォックスの始まりは、1935年の合併に遡ります。ジョセフ・シェンクとダリル・F・ザナックが率いるトゥエンティエス・センチュリー・ピクチャーズが、経営難に陥っていたフォックス・フィルムと統合したことで、現在のスタジオの原型が作られました。1915年のフォックス・フィルム創業を起点とする説もありますが、実質的な運営体制は1935年の合併から始まっています。

The 20th Century-Fox logo depicted in a 1939 advertisement in Boxoffice

ザナックの指揮下で、スタジオは大人向けの刺激的な作品やベストセラー小説の映画化に注力しました。また、ロジャース&ハマースタイン作品などのブロードウェイ・ミュージカルの映画化でも成功を収め、娯楽映画の幅を広げました。

Carmen Miranda as Dorita in The Gang's All Here. In 1946 she was the highest-paid actress in the United States.[16]
Alice Faye as Baroness Cecilia Duarte, Don Ameche as Larry Martin and Baron Manuel Duarte, and Carmen Miranda as Carmen in That Night in Rio, produced by Fox in 1941

1953年には、映画体験を劇的に変えるワイドスクリーン技術シネマスコープ(CinemaScope)を導入。他社へのライセンス供与や劇場の設備転換への支援を行うことで、急速に業界へ普及させました。『十戒』などの大作やミュージカル映画にこの技術が採用され、観客を魅了しました。

From the 1952 film Viva Zapata!

財政的苦境と『スター・ウォーズ』による復活

1950年代後半から60年代にかけて、スタジオは混迷期に入ります。特に1963年の映画『クレオパトラ』は、主演のエリザベス・テイラーへの破格の出演料や制作の遅延により予算が膨れ上がり、経営を圧迫しました。その後も不作が続き、1969年から1971年にかけては赤字を計上する事態となりました。

しかし、1970年代に入ると新体制のもとで現代的な観客のニーズを捉えた作品が増え、1974年にはワーナー・ブラザースとの共同製作という当時としては画期的な試み(『タワーリング』)にも挑戦しました。そして1977年、映画史に残る大ヒット作『スター・ウォーズ』が公開されると、株価は4倍以上に跳ね上がり、スタジオはかつてないほどの財政的安定を手に入れました。

所有者の交代と事業の多角化

1981年、スタジオは投資家のマービン・デイビスとマーク・リッチに買収されました。その後、1985年にはオーストラリアの実業家ルパート・マードック率いるニューズ・コーポレーションが買収し、ブランド名からハイフンが消え「Twentieth Century Fox」となりました。

Logo used as Twentieth Century Fox from 1985 to 2020.

マードック体制下では、インディーズ映画向けの「フォックス・サーチライト・ピクチャーズ」や、家族向け、アニメーション専門の部門を設立するなど、ターゲットを細分化した戦略を展開しました。また、VFX会社であるブルースカイ・スタジオの買収を通じて、3DCGアニメーション分野(『アイス・エイジ』など)でも確固たる地位を築きました。

Fox Plaza, Century City headquarters completed in 1987
The Fox Broadcasting Company's Los Angeles studios in 2005
Former Fox Studio Lot in Century City, Los Angeles

ディズニーによる買収と「20世紀スタジオ」へ

2017年、ウォルト・ディズニー・カンパニーが21世紀フォックスの大部分を約524億ドルで買収することを発表しました。激しい買収競争の末、2019年3月20日に正式に統合されました。ディズニーはブランドの混乱を防ぐため、2020年1月17日にスタジオ名を「20世紀スタジオ(20th Century Studios)」に変更しました。

A horizontal version of 20th Century Studios' current print logo, used for branding films (mainly Hulu/Star originals produced by them). The first film to use this was Vacation Friends.

買収後、一部のプロジェクトは整理されましたが、『アバター』シリーズなどの重要作品は継続されました。また、多くの人気フランチャイズ作品がDisney+などのストリーミングサービス向けに再展開されています。2021年には、コロナ禍の影響による経営判断からブルースカイ・スタジオが閉鎖され、その後継として「20世紀アニメーション」が設立されました。

長年、スタジオの象徴であったセンチュリーシティのフォックス・スタジオ・ロットについても、2025年末をもってリースを終了し、バーバンクのウォルト・ディズニー・スタジオへ完全に移転することが決定しています。

スタジオ概要まとめ

20世紀スタジオの変遷まとめ
時代 主な所有者・体制 重要な出来事・作品
1935年〜1980年 独立経営(ザナック等) シネマスコープ導入、『スター・ウォーズ』ヒット
1981年〜1985年 マービン・デイビス他 資産の多角化、所有権の移転
1985年〜2019年 ルパート・マードック(ニューズ社) 専門部門の設立、ブルースカイ・スタジオ買収
2019年〜現在 ウォルト・ディズニー・カンパニー 「20世紀スタジオ」へ改称、ストリーミング戦略へ移行

よくある質問(FAQ)

なぜ「20世紀フォックス」から「20世紀スタジオ」に名前が変わったのですか?

ディズニーによる買収後、依然として存続していた「フォックス・コーポレーション」とのブランド名の混同を避けるため、2020年に名称が変更されました。

シネマスコープとは具体的にどのような技術でしたか?

1953年に導入されたワイドスクリーン方式の撮影・上映プロセスです。これにより、従来の映画よりも横に広い画面での映像体験が可能になり、多くの映画スタジオが導入しました。

ブルースカイ・スタジオが閉鎖された理由は何ですか?

新型コロナウイルスのパンデミックによる経済的影響により、ディズニー傘下で3つの長編アニメーションスタジオを維持することが困難であると判断されたためです。

現在の20世紀スタジオの作品はどこで配信されていますか?

主にDisney+やHuluなどのディズニー傘下のストリーミングプラットフォームで配信されており、一部の作品は戦略的に展開されています。

スタジオの拠点はどこにありますか?

長らくロサンゼルスのセンチュリーシティに拠点を置いていましたが、2025年末をもって移転し、バーバンクのウォルト・ディズニー・スタジオに統合される予定です。