書籍や印刷の世界で使われる「フォリオ(folio)」という言葉は、ラテン語で「葉」を意味するfoliumに由来しています。現代では単に大きな本を指すことが多いですが、専門的な文脈では「紙の折り方(形式)」「ページや葉の数え方」「本の物理的な大きさ」という、相互に関連しながらも異なる3つの意味を持っています。
Key Facts
- 製本形式:大きな1枚の紙を1回だけ折って作る形式。1枚の紙から4ページ(2葉)が作成される。
- ページ表記:ページ番号がない写本などで「葉(leaf)」を数える単位。表面をレクト(recto)、裏面をヴェルソ(verso)と呼ぶ。
- サイズ:一般的に高さ約38cm(15インチ)程度の大型本を指す。
- 歴史的価値:グーテンベルク聖書やシェイクスピアの第一フォリオなど、権威ある豪華本に多く採用された。
1. 製本形式としてのフォリオ
印刷におけるフォリオとは、1枚の大きな原紙を一度だけ折ることで作成される形式を指します。この工程により、1枚の紙から2枚の「葉(leaf)」が生まれ、合計4ページ分のテキストを配置することが可能です。複数のフォリオ紙を重ね合わせて「 gatherings(折丁)」を作り、それを綴じることで一冊の本になります。

この形式は、紙を2回折る「クォート(quarto)」や、3回折る「オクターボ(octavo)」と対比されます。クォートやオクターボの場合、製本後にページを切り開く作業が必要でしたが、フォリオは折り方が単純であるため、その構造が特徴的です。また、フォリオ形式で印刷されながら、8葉ずつのグループで綴じられたものは「folio in 8s」と呼ばれます。
2. 写本におけるページ番号の数え方
ページ番号が振られていない古い書籍や写本では、個々のページではなく「葉(leaf)」単位で場所を指定します。この際の単位がフォリオです。1枚の葉の表面をレクト(recto)、裏面をヴェルソ(verso)と呼び、略記して「f26r(26葉の表面)」のように表記します。

この表記法は、言語の読書方向に影響されます。英語やラテン語のように左から右へ読む言語では、本を開いた右側がレクトになります。一方で、アラビア語やヘブライ語のように右から左へ読む言語では、この位置関係が逆転します。


さらに詳細な指定が必要な多段組みの写本では、列(column)を用いて「f. 150a(150葉レクトの左列)」のように細分化して記述されることがあります。
3. 本のサイズとしてのフォリオ
一般的に「フォリオサイズ」と言う場合、高さ約38cm(15インチ)程度の本を指します。しかし、歴史的に紙のサイズは標準化されていなかったため、実際には多様な規格が存在しました。
| 名称 | おおよその最大高さ |
|---|---|
| ダブル・エレファント・フォリオ | 約127 cm |
| アトラス・フォリオ | 約63 cm |
| エレファント・フォリオ | 約58 cm |
| ロイヤル・フォリオ | 約51 cm |
| ミディアム・フォリオ | 約46 cm |
| クラウン・フォリオ(最も一般的) | 約38 cm |
19世紀半ば以降、印刷技術の向上により巨大な紙のロールが使用されるようになると、元の紙を何回折ったかという「形式」を判別することが困難になりました。そのため、現代においてフォリオという言葉が使われる場合は、単に物理的なサイズを指すことがほとんどです。また、現代の事務用紙規格では「フールスキャップ・フォリオ(216×343mm)」という、A4よりわずかに大きいサイズを指すこともあります。
歴史的な名著とフォリオ
古くからフォリオ形式は、高価で権威ある豪華本に用いられてきました。代表的な例が、1455年頃に印刷されたグーテンベルク聖書です。これは「ダブル・フォリオ」と呼ばれる非常に大きなサイズで制作されました。

また、1623年に出版されたシェイクスピアの「第一フォリオ(First Folio)」も有名です。当時の演劇台本はクォート形式で出されることが一般的でしたが、シェイクスピアの作品集がフォリオ形式で出版されたことは、彼の作品に高い文学的価値が認められていたことを象徴しています。

Frequently Asked Questions
フォリオとクォートの違いは何ですか?
最大の違いは紙の折り回数です。フォリオは原紙を1回折って2葉(4ページ)を作りますが、クォートは2回折って4葉(8ページ)を作ります。そのため、一般的にフォリオの方が本としてのサイズが大きくなります。
「レクト」と「ヴェルソ」とはどういう意味ですか?
レクト(recto)は葉の表面(右ページ)、ヴェルソ(verso)は葉の裏面(左ページ)を指します。これはページ番号がない写本などで場所を特定するために使われる専門用語です。
現代の本でもフォリオ形式は使われていますか?
現代の印刷技術では、大きな紙に多くのページを一度に印刷するため、伝統的な「折り回数」による形式の区別はほぼなくなりました。現在は、単に大型の本を指す呼称として、あるいは特定の紙サイズ(フールスキャップなど)を指して使われています。
なぜシェイクスピアの作品集はフォリオで出されたのですか?
当時、フォリオ形式は学術書や法典など、重要で権威ある書籍にのみ使われる形式でした。戯曲をフォリオで出版したことは、演劇を単なる娯楽ではなく、保存されるべき価値のある文学として扱ったことを意味しています。
References
- Beal, Peter (2008), "folio", A Dictionary of English Manuscript Terminology 1450–2000 (Online ed.), , retrieved 22 November 2013.
- , 2d ed, (1989), on line access.
- , An Introduction to Bibliography for Literary Students, Oxford 1927 and later eds., p. 28.
- "Beinecke Library, Yale". 18 December 2018.
- "ISTC (Incunabula Shorttitle Catalogue)". data.cerl.org. .
- "Book Sizes". trussel.com.
📸 フォトギャラリー





