第五インターナショナルの構想と歴史的展開
世界的な革命や労働者の団結を目指す「インターナショナル」という概念は、歴史的に何度も再編されてきました。第四インターナショナルの設立後、その方向性や正当性を巡って、新たな国際組織、すなわち第五インターナショナルの創設を求める声が、異なる政治的背景を持つグループから断続的に上がってきました。
主要な事実(Key Facts)
- 1938年のスペインから始まり、2015年の毛沢東主義・第三世界主義的な提案まで、多様な勢力が「第五」を標榜した。
- L5I(第五インターナショナル同盟)は、トロツキズムと共産主義を基盤とする国際的なネットワークを構築している。
- ベネズエラのウゴ・チャベス元大統領も、ラテンアメリカを中心とした新たな左翼国際組織の構想を掲げた。
- 単一の組織ではなく、時代ごとに異なる思想的背景を持つ複数のグループが個別に提唱してきた歴史がある。
第五インターナショナルを巡る歴史的試行
「第五インターナショナル」という名称を用いた動きは、特定の単一団体によるものではなく、既存の国際組織への不満や分裂から生じてきました。その端緒は1938年11月に遡ります。バルセロナで裁判を受けていたスペイン労働者統一マルクス主義党のメンバーたちが、第四インターナショナルを否定し、「闘争的な第五インターナショナル」への支持を表明しました。
その後も、1941年にはトロツキズムから離脱したアルゼンチンのリボリオ・フストが、1965年にはスパルタキスト連盟を去ったアメリカの活動家リンドン・ラルーシュが、それぞれ新たなインターナショナルの必要性を訴えました。
1990年代に入ると、1994年に「社会主義未来運動」や元トロツキストの小規模グループによって「共産主義者第五インターナショナル」が設立されました。さらに近年では、2015年に革命的反帝国主義運動が、毛沢東主義・第三世界主義(発展途上国の視点から帝国主義に抵抗する思想)に基づいた第五インターナショナルの形成を提唱しています。
L5I(第五インターナショナル同盟)の活動
現代において組織的な活動を展開しているのが、L5I(League for the Fifth International)です。もともとは1989年に設立された「革命的共産主義インターナショナル同盟」でしたが、2003年に「近い将来に」第五インターナショナルを構築することを宣言し、現在の名称となりました。
L5Iは自らを「共産主義者とトロツキストの組織」と定義しており、欧州社会フォーラムや国際的な労働運動を通じて、新たな国際組織の形成に向けたキャンペーンを行っています。2010年時点では、ドイツ、イギリス、アメリカ、スウェーデン、オーストリア、チェコ、パキスタン、スリランカなどの国々に支部を持っていました。また、ニュージーランドの共産主義労働者グループもL5Iから分かれた後、同様に第五インターナショナルの必要性を主張しています。

ラテンアメリカにおける新たな構想
国家指導者のレベルでこの構想に触れたのが、ベネズエラのウゴ・チャベス元大統領です。チャベス氏は2007年、ラテンアメリカおよびカリブ海地域の左翼政党や運動を組織化するため、新たなインターナショナルの創設を目指すと表明しました。2008年をその招集の好機と捉え、地域的な連帯を強化しようと試みたものです。
このチャベス氏の提案に対し、前述のL5Iは批判的な視点を持ちつつも、その方向性を支持する立場を取りました。
第五インターナショナル提唱グループのまとめ
| 提唱時期 | 主体・人物 | 思想的背景・特徴 |
|---|---|---|
| 1938年 | スペイン労働者統一マルクス主義党メンバー | 第四インターナショナルへの反発 |
| 1941年 | リボリオ・フスト | トロツキズムからの離脱 |
| 1965年 | リンドン・ラルーシュ | スパルタキスト連盟からの離脱 |
| 1994年 | 社会主義未来運動など | 共産主義者の再結集 |
| 2003年〜 | L5I(第五インターナショナル同盟) | 革命的共産主義・トロツキズム |
| 2007年 | ウゴ・チャベス | ラテンアメリカ左翼の連帯 |
| 2015年 | 革命的反帝国主義運動 | 毛沢東主義・第三世界主義 |
Frequently Asked Questions
第五インターナショナルとは具体的にどのような組織ですか?
単一の統一された組織ではなく、歴史上の異なる時期に、既存の国際的な左翼組織に代わる新しい連帯枠組みを求めた複数のグループや個人の構想の総称です。
L5Iはどのような目的で活動していますか?
共産主義者やトロツキストが集まり、労働運動や欧州社会フォーラムなどの活動を通じて、世界的な革命を推進するための新たな国際組織(第五インターナショナル)を早急に構築することを目指しています。
ウゴ・チャベス氏が構想したインターナショナルは何が違いましたか?
特定の主義主張よりも、ラテンアメリカおよびカリブ海地域の左翼政党や社会運動を地理的にまとめ上げ、地域的な連帯を構築することに重点を置いていました。
なぜ「第五」という数字が使われるのですか?
マルクス主義や社会主義の歴史において、第一から第四までのインターナショナル(国際労働者協会など)が存在したため、それらの後継、あるいはそれらを乗り越える新しい段階として「第五」という呼称が用いられます。
最近の動きに特徴はありますか?
2015年の事例に見られるように、伝統的な欧州中心の視点ではなく、毛沢東主義や第三世界主義といった、非西欧圏の視点を取り入れたインターナショナル構想が登場している点が特徴的です。