現代の高速ネットワークの礎となった技術の一つに、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)があります。これは主に光ファイバを伝送媒体として利用するローカルエリアネットワーク(LAN)の標準規格であり、かつての大規模ネットワークにおいて重要な役割を果たしました。
FDDIは、単なる高速通信手段ではなく、高い信頼性と広範なカバーエリアを同時に実現することを目指して設計されました。本記事では、その技術的な特徴から、なぜ最終的にイーサネットに道を譲ったのかまでを詳しく解説します。
Key Facts
- 通信速度: 標準で100 Mbit/sを実現。
- 伝送距離: 最大200km(シングルリング時)という広範な接続が可能。
- 物理媒体: 主に光ファイバを使用するが、銅線を用いたCDDI(TP-PMD)も存在する。
- 信頼性: 二重リング構造により、一方の経路が断線しても通信を維持できる。
- フレームサイズ: 最大4,352バイトと大きく、効率的なデータ転送が可能。
FDDIの基本構造と動作原理
FDDIは、論理的にリング型のトークンネットワークを採用しています。ただし、そのプロトコルはIEEE 802.5のトークンリングではなく、IEEE 802.4のトークンバス・タイムドトークンプロトコルをベースに構築されている点が特徴です。
この規格はANSI X3T9.5(現X3T12)によって策定され、OSI参照モデルに準拠しています。1989年に登場した「FDDI-II」では、回線交換サービスの機能が追加され、データだけでなく音声やビデオ信号の伝送にも対応しました。また、同期光ネットワーク(SONET)との連携も検討されました。
物理的な接続形態(DASとSAS)
FDDIには、接続方法に応じて2種類のステーションが存在します。一つはDAS(Dual-Attached Station)で、2つのリングに同時に接続し、高い冗長性を確保します。もう一つはSAS(Single-Attached Station)で、1つのリングにのみ接続する形態です。

SASを利用する場合、通常はルーターやコンセントレーターなどの集約装置を介して接続されます。これにより、個々のホストコンピュータがリング全体の動作に影響を与えるリスクを軽減しています。

ネットワークトポロジーと冗長性の確保
FDDIの最大の特徴は、2つの同心円状のリング(プライマリリングとセカンダリリング)を持つ構造にあります。通常、プライマリリングが100 Mbit/sのデータ転送を担い、セカンダリリングはバックアップとして待機します。もしプライマリ側で障害が発生すると、セカンダリ側が即座に機能し、ネットワークの停止を防ぎます。
なお、バックアップが不要な環境では、セカンダリリングにもデータを流すことで、理論上の帯域幅を200 Mbit/sまで拡張することが可能です。ただし、二重リング構成にした場合の最大伝送距離は100kmに制限されます。
「ツリーの二重リング」構成
実際の設計では、インフラ設備(ルーター等)を二重リングで結び、そこから各端末をツリー状に接続する構成が一般的でした。これは、リング上のすべてのデバイスが常に動作し続ける必要があるためです。個別のワークステーションを直接リングに組み込むと、一台の故障がネットワーク全体に影響を及ぼす恐れがあるため、管理者が制御しにくい端末はSASとして接続されるのが通例でした。
データフレームの形式とプロトコル
FDDIのフレーム構造は、効率的な転送を可能にするために最適化されています。特に最大フレームサイズが4,352バイトと、標準的なイーサネット(1,500バイト)よりも大幅に大きく設定されており、オーバーヘッドを削減して実効速度を高めることができました。
| 項目 | サイズ(ビット) | 役割 |
|---|---|---|
| プリアンブル (PA) | 16 | 同期信号 |
| 開始デリミタ (SD) | 8 | フレームの開始合図 |
| フレーム制御 (FC) | 8 | 制御情報の保持 |
| 宛先アドレス (DA) | 48 | 送信先識別子 |
| 送信元アドレス (SA) | 48 | 送信元識別子 |
| データユニット (PDU) | 最大 4478 × 8 | 実際のデータ本体 |
| フレームチェックシーケンス (FCS) | 32 | エラー検知(CRC) |
| 終了デリミタ/ステータス (ED/FS) | 16 | フレームの終了と状態報告 |
また、IETFによってIP(インターネットプロトコル)をFDDI上で伝送する標準が定義されました。これにより、イーサネットで普及していた48ビットのMACアドレスやARP(アドレス解決プロトコル)などの仕組みを共通して利用することが可能となりました。
普及から衰退まで
1990年代前半、FDDIはキャンパスネットワークのバックボーンとして非常に魅力的な選択肢でした。当時のイーサネットは10 Mbit/s、トークンリングは4〜16 Mbit/sが主流であり、100 Mbit/sを誇るFDDIは圧倒的な高速性能を持っていたためです。Cisco Systemsや3Comなどの主要ベンダーが製品を展開し、広く導入されました。
しかし、その後「Fast Ethernet」が登場し、同等の100 Mbit/sをはるかに低コストで実現したことで、FDDIの優位性は失われました。さらに1998年以降は、より高速で汎用性の高い「Gigabit Ethernet」が普及したことにより、FDDIはほぼ完全に置き換えられることとなりました。
Frequently Asked Questions
FDDIとCDDIの違いは何ですか?
FDDIは光ファイバを伝送媒体とする規格ですが、銅線(ツイストペアケーブル)を使用した場合はCDDI(Copper Distributed Data Interface)と呼ばれます。これは標準規格ではTP-PMDとして定義されています。
なぜ二重リング構造になっているのですか?
ネットワークの可用性を高めるためです。メインのリングに障害が発生した際、バックアップ用のセカンダリリングに切り替えることで、通信の中断を防ぐ冗長性を確保しています。
FDDIがイーサネットに敗れた主な理由は何ですか?
コストと導入の容易さです。Fast EthernetやGigabit Ethernetが、FDDIと同等以上の速度をより安価に、かつシンプルな構成で提供したため、市場の主流が移行しました。
FDDIの最大伝送距離はどのくらいですか?
シングルリング構成の場合、最大で200kmまで延長可能です。ただし、冗長性を持たせた二重リング構成にする場合は、最大100kmまでとなります。
FDDIのフレームサイズが大きかったメリットは何ですか?
最大4,352バイトという大きなフレームサイズにより、一度に送信できるデータ量が増え、ヘッダーなどの制御情報の割合(オーバーヘッド)を減らすことができたため、実効的なデータ転送効率が向上しました。
References
- can be used to extend Ethernet's maximum frame size to 9,000 bytes or more.
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