1940年代後半から50年代初頭にかけて、アメリカのSFシーンにひっそりと、しかし重要な足跡を残した雑誌があります。それがFantasy Bookです。1947年から1951年までのわずか4年余りで全8号という短い刊行期間でしたが、後のSF界に多大な影響を与える作家やアーティストの登竜門となりました。
本誌は、アマチュアのファンジンと完全な商業誌の中間に位置する「セミプロ誌(semiprozine)」として運営されました。予算や流通の制約に悩みながらも、名だたる作家たちの作品を掲載したこの雑誌の歴史を紐解きます。
Key Facts
- 刊行期間:1947年〜1951年(全8号)
- 編集・発行:ウィリアム・クロフォード(編集名:ガレット・フォード)
- 歴史的価値:コードウェイナー・スミスのデビュー作を掲載
- 形式の変遷:ベッドシート判からダイジェスト判へと変更
- 主要寄稿者:アイザック・アシモフ、フレデリック・ポール、L. ロン・ハバードなど
創刊と運営の苦闘
Fantasy Bookを立ち上げたのは、ペンシルベニア州出身のSFファン、ウィリアム・クロフォードでした。彼は以前にも『Unusual Stories』や『Marvel Tales』といった雑誌を運営していましたが、第二次世界大戦後にロサンゼルスへ拠点を移し、Fantasy Publishing Company, Inc.を設立。1947年に本誌を創刊しました。
編集上の責任者は「ガレット・フォード」というペンネームで記載されていましたが、これはウィリアムと妻マーガレットの共同名義でした。また、著名なSFファンであるフォレスト・アッカーマンも編集作業に協力していました。
しかし、運営は困難の連続でした。創刊号の印刷直後に販売代理店が倒産し、1,000部もの在庫を抱える事態に。クロフォードは購読者の募集や専門販売店への委託で切り抜けましたが、資金不足から紙質やアートワークの質にばらつきが出ることとなりました。

形態の変更と出版戦略
予算の制約から、クロフォードはユニークな販売戦略を試みました。第2号から第4号にかけて、高級な紙を使用した「デラックス版(35セント)」と、ニューススタンド向けの低品質な紙を使用した「通常版(25セント)」の2種類を、異なる表紙で展開したのです。
また、読者の利便性とコストを考慮し、第3号からは誌面サイズを大きなベッドシート判からコンパクトなダイジェスト判へと変更しました。その後、第6号ではさらに小さなダイジェストサイズへと縮小し、最終的に1951年1月の第8号をもって刊行を終了しました。
掲載作品と才能の開花
Fantasy Bookの最大の功績は、才能ある作家やアーティストに発表の場を提供したことです。特に特筆すべきは、コードウェイナー・スミス(ポール・A・ラインバーガー教授のペンネーム)のデビュー作「Scanners Live in Vain」の掲載です。この作品は後にSF殿堂(Science Fiction Hall of Fame)のアンソロジーに選出されるほどの傑作となりました。
また、アイザック・アシモフとフレデリック・ポールが「ジェームズ・マクリー」という共用ペンネームで発表した「The Little Man on the Subway」や、L. ロン・ハバードの作品も掲載されました。一方で、10年以上前に買い付けた古い在庫作品を再利用するなど、編集上の苦労も見て取れます。
視覚面では、後の受賞アーティストとなるジャック・ゴーハンが、コードウェイナー・スミスの物語の表紙を手がけ、これが彼のプロとしての初仕事となりました。この表紙は、本誌の全号の中でも唯一「真に傑出した」作品であると評されています。

評価と後世への影響
批評家の間では、構成が不安定で「平凡な雑誌」であったという厳しい意見もあります。しかし、大手誌で拒絶された作品に居場所を与えたという点において、SFジャンルの発展に寄与したという評価も根強くあります。
本誌に掲載された物語の多くは、後にクロフォードが編集したアンソロジー『The Machine-God Laughs』や『Science and Sorcery』に再録され、その名残を留めています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 発行元 | Fantasy Publishing Company, Inc. |
| 編集者 | ウィリアム・クロフォード(ガレット・フォード名義) |
| 総号数 | 8号 |
| 主な判型 | ベッドシート判 → ダイジェスト判 → 小ダイジェスト判 |
| 価格 | 25セント(デラックス版は35セント) |
Frequently Asked Questions
Fantasy Bookはどのような種類の雑誌でしたか?
アマチュアのファンジンとプロの商業誌の中間に位置する「セミプロ誌」であり、SF作品を専門に扱うアメリカの雑誌でした。
この雑誌が歴史的に重要とされる理由は何ですか?
コードウェイナー・スミスのデビュー作を掲載したことや、ジャック・ゴーハンのプロデビューの場となったことなど、後のSF界を代表する才能を世に送り出したためです。
なぜ誌面サイズや紙質が頻繁に変更されたのですか?
発行者のウィリアム・クロフォードが深刻な予算不足と、信頼できる販売代理店の不在という流通上の問題に直面していたため、コスト削減と販売戦略の一環として変更が行われました。
どのような有名な作家が寄稿していましたか?
アイザック・アシモフ、フレデリック・ポール、A.E.ヴァン・ヴォート、ロバート・ブロッホ、L. ロン・ハバードなどの著名な作家たちが作品を提供しました。
「ガレット・フォード」とは誰のことですか?
発行者のウィリアム・クロフォードと、その妻マーガレットが編集業務を行う際に使用していた共同のペンネームです。
References
- A semiprofessional magazine, or "semiprozine", is a magazine that lies somewhere between an amateur and a full professional magazine. For science fiction magazines, the definition has been codified by the (the body that administers the ) since 1983, and requires that the magazine meet two of the following criteria: it must "have an average press run of at least 1000 copies; pay its contributors and/or staff in other than copies of the publication; provide at least half the income of any one person; have at least 15% of its total space occupied by advertising; or announce itself to be a semiprozine."
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