押出成形(エクストルージョン)とは、材料をダイスと呼ばれる金型に押し出し、一定の断面形状を持つ製品を連続的に作り出す製造プロセスです。この手法の最大の強みは、極めて複雑な断面形状を精密に再現できる点にあります。また、材料に加わる力が主に圧縮とせん断であるため、本来は脆い性質を持つ材料であっても成形が可能であり、優れた表面仕上げを実現できるのが特徴です。
このプロセスは、理論上無限に長い製品を作る「連続成形」と、一定の長さで切り分ける「半連続成形」に分けられます。適用される材料は多岐にわたり、金属やポリマー(プラスチック)、セラミックス、コンクリート、さらには食品や粘土に至るまで、現代の製造業において不可欠な技術となっています。

Key Facts
- 基本原理:材料をダイスに押し通し、その形状に沿った断面を持つ製品を生成する。
- 主な利点:複雑な断面設計が可能で、表面品質が高く、脆性材料にも適用できる。
- 適用材料:アルミニウム、銅、鋼、プラスチック、ゴム、セラミックス、食品など。
- 温度区分:再結晶温度に基づき、熱間、温間、冷間の3つのプロセスに分類される。
- 製品例:アルミサッシ、プラスチックパイプ、パスタ、合成繊維など。
押出成形の主要な種類と温度管理
成形時の温度設定は、材料の特性や最終製品に求められる強度に大きな影響を与えます。
熱間押出(Hot Extrusion)
材料の再結晶温度以上の高温状態で成形を行う手法です。これにより材料が硬化(加工硬化)するのを防ぎ、ダイスへの押し出しを容易にします。主に大型の油圧プレス機が使用され、摩擦を軽減するためにオイルやグラファイト、あるいは高温用のガラス粉末などの潤滑剤が用いられます。

冷間押出(Cold Extrusion)
室温またはそれに近い温度で成形します。熱による酸化を防げるため表面が美しく、加工硬化によって製品の強度が高まるほか、寸法精度を厳格に管理できるメリットがあります。
温間押出(Warm Extrusion)
室温より高く、再結晶温度より低い温度域(一般的に424〜975°C)で行われます。必要な成形力、延性、および最終的な機械的特性のバランスを最適化するために採用されます。
特殊な押出手法
- 摩擦押出:ダイスまたは材料を回転させながら押し出すことで、摩擦熱による加熱を利用します。外部加熱が不要なためエネルギー効率が高く、金属複合材料の均質な組織形成に適しています。
- マイクロ押出:断面が1mm四方以下の極小サイズを成形する精密プロセスです。ダイスとラム(押し出し棒)の超精密加工が技術的な鍵となります。
設備構成と成形メカニズム
押出設備の構成は、ラム(押し出し装置)とダイスの相対的な動きによって大きく2種類に分かれます。
直接押出と間接押出
ダイスを固定し、ラムが材料をダイス方向へ押し出すのが直接押出です。一方、ラムを固定し、ダイス側が材料に向かって移動するのが間接押出です。間接押出では摩擦が25〜30%軽減されるため、より大きな素材の成形や高速化が可能になり、摩擦熱によるひび割れリスクも低減します。

静水圧押出(Hydrostatic Extrusion)
材料を圧力液体で完全に包み込んで押し出す手法です。液体による均一な加圧により、材料の延性が向上し、壁面への残留物が少ない滑らかな流れが実現します。潤滑剤としてヒマシ油などが用いられることがあります。

材料別の特性と応用例
押出成形は、その汎用性の高さからあらゆる産業で活用されています。
金属材料
最も一般的なのはアルミニウムで、窓枠やヒートシンクなどに利用されます。銅はパイプや電線に、チタンや鋼は航空機部品やレールなどに使用されます。特に高融点材料の鋼などを押出する場合、ガラス粉末を潤滑剤として用いる「セジュルネ法」が有効です。

プラスチック・ゴム・セラミックス
プラスチックでは、3Dプリンターのフィラメント供給や、配管、ケーブル被覆などに利用されます。ゴム成形では未硬化のゴムを加熱・軟化させて形状を作り、セラミックスではレンガやテラコッタ製の管などが製造されます。


食品・繊維・バイオマス
食品分野では、原料に蒸気と圧力を加えて加熱調理しながら成形します。パスタ(マカロニなど)やスナック菓子が代表例です。また、合成繊維の製造では、溶融した材料をスピナレット(極細穴の開いたダイス)から押し出して繊維状にします。バイオマス燃料のブリケット(固形燃料)製造にもこの技術が応用されています。


設計上の留意点と効率化
効率的な成形を行うには、断面形状の設計(ダイス設計)が重要です。形状の複雑さを表す「形状係数」や、断面を囲む最小の円である「外接円」の直径が、使用するプレス機の選定に影響します。また、急激な角を避け、適切なアール(半径)を設けることで、材料の流れをスムーズにし、欠陥を防ぐことができます。


| 材料 | 押出温度 [°C] | 最小断面 [cm²] | 最小厚み [mm] |
|---|---|---|---|
| アルミニウム | 350 – 500 | < 2.5 | 0.70 |
| マグネシウム | 350 – 450 | < 2.5 | 1.00 |
| 銅 | 600 – 1,100 | - | - |
| チタン | 700 – 1,200 | 3.0 | 3.80 |
| 鋼(炭素鋼) | 1,200 – 1,300 | 2.5 | 3.00 |

Frequently Asked Questions
直接押出と間接押出の決定的な違いは何ですか?
直接押出はラムが材料をダイスへ押し出す方式で構造が単純ですが、摩擦が大きくなります。間接押出はダイスがラムに向かって移動するため、摩擦が大幅に軽減され、より大きな素材の成形や高速生産が可能です。
なぜ熱間押出では潤滑剤が必要なのですか?
高温・高圧状態で材料を押し出すため、ダイスや容器との間で激しい摩擦が発生します。これを軽減して材料の流れをスムーズにし、設備の摩耗を防ぐために、オイルやグラファイト、ガラス粉末などの潤滑剤が不可欠です。
食品の押出成形ではどのような変化が起きていますか?
強い圧力(10〜20 bar)と摩擦熱によって、タンパク質の変性やデンプンの糊化(ゼラチン化)が起こります。これにより、特有の食感や形状を持つ食品が作り出されます。
冷間押出のメリットは熱間押出と比べてどこにありますか?
熱による酸化が起こらないため表面仕上げが非常に美しく、また加工硬化によって製品の強度が向上します。さらに、熱膨張の影響を受けにくいため、非常に高い寸法精度を実現できる点がメリットです。
マイクロ押出における最大の課題は何ですか?
サブミリメートル単位の極小サイズを扱うため、ダイスやラムの製造に極めて高い精度が要求されます。また、サイズが小さくなることで結晶粒界の影響など、材料の機械的特性が変化する現象への対応が必要です。
References
- , pp. 1348–1349
- Chadwick, Richard (1959). "The hot extrusion of non-ferrous metals". Metallurgical Reviews. 4 (1): 189–256. :10.1179/095066059790421764. 0076-6690.
- , pp. 13-11–12, Hot extrusion
- Barrett, J. (1965), "Advancements in Extrusion and Cold Finishing of Stainless Steel Irregular Shapes", Advances in the Technology of Stainless Steels and Related Alloys, ASTM International, pp. 36–39, :10.1520/STP43729S, , retrieved 2025-11-20
- Topolski, Krzysztof; Pachla, Waclaw; Garbacz, Halina (July 2013). "Progress in hydrostatic extrusion of titanium". Journal of Materials Science. 48 (13): 4543–4548. :2013JMatS..48.4543T. :10.1007/s10853-012-7086-7. 0022-2461.
- Grazioso, Charles G.; Mulder, Gerard W. (1956-03-09). "Process for warm extrusion of metal". Google. Retrieved 2017-08-16.
- Avitzur, B. (1987), "Metal forming", Encyclopedia of Physical Science & Technology, vol. 8, San Diego: Academic Press, Inc., pp. 80–109
- “Forming metallic composite materials by urging base materials together under shear” US patent #5262123 A, Inventors: W. Thomas, E. Nicholas, and S. Jones, Original Assignee: The Welding Institute.
- Tang, W.; Reynolds, A.P. (2010). "Production of wire via friction extrusion of aluminum alloy machining chips". Journal of Materials Processing Technology. 210 (15): 2231–2237. :10.1016/j.jmatprotec.2010.08.010.
- Engel, U.; Eckstein, R. (2002). "Microforming - From Basic research to its realization". Journal of Materials Processing Technology. 125–126 (2002): 35–44. :10.1016/S0924-0136(02)00415-6.
📸 フォトギャラリー











