地球の深部から遠い宇宙の星々に至るまで、広く分布する鉱物がエンスタタイト(頑火輝石)です。これは単鎖珪酸塩に分類される輝石グループの一種で、主にマグネシウムを主成分とする鉱物です。地質学的な重要性だけでなく、宝石としての価値や宇宙の進化を解き明かす鍵としても注目されています。
Key Facts
- 化学組成: MgSiO3(マグネシウム端成分の輝石)
- 結晶系: 斜方晶系(一部に単斜晶系の多形が存在)
- 硬度: モース硬度 5〜6
- 主な産出地: 火成岩、変成岩、隕石、および宇宙空間
- 宝石種: クロムエンスタタイト(緑色)やブロンザイト(褐色)
エンスタタイトの科学的性質と分類
エンスタタイトは、マグネシウム主体のエンスタタイト(En)と鉄主体のフェロシライト(Fs)による固溶体系列の端成分です。かつてはこの中間組成のものが「ハイパステーン」と呼ばれていましたが、現在は正式に正輝石(orthopyroxene)として統合されています。
物理的な特徴としては、白色、灰色、緑色、黄色、あるいは褐色を呈し、劈開(へきかい:特定の方向に割れやすい性質)が90度の角度で2方向に明確に現れるのが特徴です。光学的特性では、ピンクから緑への多色性が診断の重要なポイントとなります。
多様な形態と変種
自然界では主に斜方晶系として存在しますが、温度や圧力の条件によってプロトエンスタタイトやクリノエンスタタイトといった異なる結晶構造(多形)を取ることがあります。また、微量の鉄を含み風化したものは、金属光沢を帯びたブロンズ色のブロンザイト(青銅輝石)と呼ばれます。

さらに、微量のクロムが含まれることで鮮やかなエメラルドグリーンに染まったものはクロムエンスタタイトと呼ばれ、宝石としてカットされます。他にも、シャトヤンシー(キャッツアイ効果)を持つ黒色のハイパステーンや、褐色のブロンザイトが半貴石として利用されています。

地球および宇宙における産出
地球上では、ガブロ(斑れい岩)やダイオライト(閃緑岩)などの深成岩、あるいは玄武岩や安山岩などの火山岩の石基や斑晶として見られます。特に地球マントルの主要構成成分であるペリドタイト(かんらん岩)やパイロキセナイト(輝石岩)には、マグネシウムに富む正輝石が不可欠な成分として含まれています。
また、変成岩の一種であるグラニュライトや、蛇紋岩化した岩石の中にも産出します。ノルウェーの鉱山では、ステアタイト(滑石)に変化した巨大な結晶が発見された記録もあります。
宇宙空間への広がり
エンスタタイトは地球外でも極めて一般的です。石質隕石や鉄隕石に多く含まれ、コンドルール(隕石中の球状粒子)の内部構造を形成することもあります。また、太陽系内のE型小惑星(フンガリア群など)の主成分であると考えられています。
さらに驚くべきことに、太陽系外の進化が進んだ恒星や惑星状星雲(NGC 6302など)においても結晶形態で観測されており、宇宙における珪酸塩結晶形成の初期段階を担っていると考えられています。最近の研究では、若い褐色矮星「2M2224-0158」の大気に、鉄の雲の上に石英とエンスタタイトの雲層が存在することが示唆されています。
鉱物データまとめ
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 化学式 | MgSiO3 |
| 結晶系 / 空間群 | 斜方晶系 / Pbca |
| モース硬度 | 5 〜 6 |
| 比重 | 3.2 〜 3.3 |
| 屈折率 | nα=1.650–1.668, nβ=1.652–1.673, nγ=1.659–1.679 |
| 光学的性質 | 双屈折(Biaxial +) |
Frequently Asked Questions
エンスタタイトとブロンザイトの違いは何ですか?
ブロンザイトは、少量の鉄を含むエンスタタイトが風化したもので、特有のブロンズ色と亜金属光沢を持つ変種(または変質した状態)を指します。
宝石として利用される種類はありますか?
はい。クロムを含み緑色をしたクロムエンスタタイトや、キャッツアイ効果を持つ黒色のハイパステーン、褐色のブロンザイトなどが半貴石として利用されています。
宇宙でエンスタタイトが見つかることはどのような意味がありますか?
太陽系外の星雲などで結晶として発見されることは、宇宙における珪酸塩鉱物の形成プロセスを理解するための重要な手がかりとなります。
ハイパステーンという名称は現在も使われていますか?
歴史的にマグネシウムと鉄の中間組成の鉱物を指して使われてきましたが、現在は正式な鉱物学上の名称としては「正輝石(orthopyroxene)」に置き換えられています。
地球のどこに多く存在していますか?
主に地球のマントルを構成するペリドタイトやパイロキセナイトに含まれているほか、地表付近ではガブロや玄武岩などの火成岩、あるいはグラニュライトなどの変成岩に見られます。
References
- Warr, L.N. (2021). "IMA–CNMNC approved mineral symbols". Mineralogical Magazine. 85 (3): 291–320. :2021MinM...85..291W. :10.1180/mgm.2021.43. 235729616.
- Handbook of Mineralogy
- Mindat
- Webmineral data
- One or more of the preceding sentences incorporates text from a publication now in the : (1911). "Enstatite". In (ed.). . Vol. 9 (11th ed.). Cambridge University Press. p. 654.
- H. U. Keller, et al. - E-Type Asteroid (2867) Steins as Imaged by OSIRIS on Board Rosetta - Science 8 January 2010: Vol. 327. no. 5962, pp. 190 - 193 :10.1126/science.1179559
- Burningham, Ben; Faherty, Jacqueline K.; Gonzales, Eileen C.; Marley, Mark S.; Visscher, Channon; Lupu, Roxana; Gaarn, Josefine; Fabienne Bieger, Michelle; Freedman, Richard; Saumon, Didier (2021-09-01). "Cloud busting: enstatite and quartz clouds in the atmosphere of 2M2224-0158". Monthly Notices of the Royal Astronomical Society. 506 (2): 1944–1961. :2105.04268. :2021MNRAS.506.1944B. :10.1093/mnras/stab1361. 0035-8711.
📸 フォトギャラリー

