伝説的なコミック出版社であるEC社(Entertaining Comics)の作品群は、その衝撃的な内容と高い芸術性から、時代を超えて多くのファンを魅了し続けています。これらの貴重な作品を後世に伝えるため、編集者のラス・コクラン(Russ Cochran)は、EC社の発行人ウィリアム・ゲインズとの深い信頼関係に基づき、数十年にわたり大規模な再版プロジェクトを主導しました。

コクラン氏はゲインズ氏が所有していたオリジナル原画や当時の印刷物をベースに、精緻な復刻版を世に送り出しました。また、1970年代後半から80年代にかけては、コレクター向けに原画のメールオークションカタログを運営するなど、EC作品の保存と普及に多大な貢献を果たしました。

Key Facts

  • ラス・コクランが中心となり、オリジナル原画やスキャンデータを用いて高品質な再版を実現した。
  • The Complete EC Libraryは、全66巻のハードカバーでほぼ全ての作品を網羅した記念碑的なコレクションである。
  • 再版形式は、モノクロの豪華本からフルカラーのアーカイブ、雑誌形式まで多岐にわたる。
  • Gemstone PublishingDark Horseなどの出版社を通じて、現代的な形式でのアーカイブ化が進んでいる。

主要な再版プロジェクトの詳細

The Complete EC Library(完全版ライブラリー)

1978年から1996年にかけて刊行されたこのプロジェクトは、17のスリップケースに収められた全66巻のハードカバー本で構成されています。最大の特徴は、当時のハウス広告や読者からの手紙、テキストストーリーに至るまで、誌面の内容を完全に再現した点にあります。

基本的にはモノクロで構成されていますが、『Mad』のみはモノクロ版とカラー版の両方が用意されました。また、多くのコミック史家による注釈や解説が加えられており、学術的な価値も高い資料となっています。ただし、1954年に発行された3D版の描き直し作品の一部は、このライブラリーには含まれておらず、一部のファンジンや後のFantagraphics版でしか確認できない希少な作品となっています。

ECポートフォリオとECクラシックス

1971年から1977年にかけては、大判サイズの「ECポートフォリオ」が6冊発行されました。また、1985年から1989年にかけては、雑誌サイズの「ECクラシックス」が全12号刊行されました。後者は、初期の6号までは作品集形式でしたが、7号以降は1冊につき2つのオリジナル号を収録する形式へと変更されました。

多様な出版社による再版展開

コクラン氏は、Gladstone PublishingやGemstone Publishingとも提携し、より手軽な形式での再版を行いました。Gladstone版(1990-1991年)は、異なるタイトルの号を組み合わせた64ページの構成となっており、特定のシリーズを完結させたいコレクターには不向きな側面がありました。

その後、Gemstone Publishingへと移行し、1992年からは「New Trend」や「New Direction」の各タイトルを単巻形式で再発行しました。さらに、複数の号をまとめた「EC Annuals(年鑑)」や、フルカラーのハードカバーである「EC Archives(アーカイブ)」も展開。このアーカイブシリーズは2013年以降、Dark Horseのインプリント下で継続されています。

再版作品の分類まとめ

ECコミックス再版シリーズ一覧
シリーズ名 期間/形態 主な特徴
The Complete EC Library 1978-1996 / ハードカバー ほぼ全作品を網羅。モノクロ構成(Madはカラー有)。
EC Classics 1985-1989 / 雑誌サイズ 全12号。後半は1冊に2号分を収録。
Gladstone / RCP / Gemstone 1990年代 / ソフトカバー 単巻再版やミックス再版など、多様な形式で展開。
EC Archives 2006- / フルカラー本 1冊に6号分を収録。現在はDark Horseが担当。
The Sunday Funnies 2011- / 新聞形式 ヴィンテージな日曜版コミックストリップを復刻。

Frequently Asked Questions

The Complete EC Libraryで全ての作品を読めますか?

ほぼ全ての作品が収録されていますが、1954年の3D版(Three Dimensional E.C. Classics)のために描き直された12のストーリーは含まれていません。これらは一部のファンジンや、2013年のFantagraphics版などで個別に確認する必要があります。

Gladstone版の再版はコレクションに向いていますか?

Gladstone版は1冊に異なるタイトルの号が混在して収録されているため、特定のシリーズ(New Trendラインなど)を順番に揃えたいと考えているコレクターにはあまり推奨されません。

EC Archivesと他の再版の違いは何ですか?

EC Archivesはフルカラーのハードカバー形式で、1冊に6つの号がまとめられている点が特徴です。視覚的な再現度が高く、現代的なアーカイブ形式となっています。

ラス・コクラン氏はどのような役割を果たしましたか?

彼は単なる編集者ではなく、発行人のウィリアム・ゲインズ氏との信頼関係を通じて、オリジナル原画の管理や再版の企画・運営を主導した人物です。彼の尽力により、EC社の膨大な作品群が体系的に保存されました。

Picto-Fiction作品はどこで読めますか?

2006年にCochran/Gemstoneから発売された「The Complete Picto-Fiction collection」に収録されています。ここには、未発表だった4つのタイトル(Confessions, Crime, Shock, Terror Illustrated)から18の未公開ストーリーも含まれています。