群発地震のメカニズムと世界的な発生事例:その特徴と原因を解説

通常、大きな地震(本震)の後に規模の小さい地震(余震)が続くパターンが一般的ですが、それとは異なる挙動を示すのが群発地震(Earthquake Swarm)です。群発地震とは、明確な本震がなく、似たような規模の地震が特定の地域で集中的に、かつ断続的に発生する現象を指します。

この言葉は19世紀末、オーストリアの地質学者ヨゼフ・クネットが、チェコとドイツの国境付近で観測された現象に「Schwarmbeben(群れのような地震)」という名称を与えたことに由来します。震源分布を地図や3Dモデルで可視化すると、まるでミツバチの群れのように密集して見えることから、この名がつきました。

Key Facts

  • 定義: 本震と余震の区別がなく、同程度の規模の地震が群れのように発生する現象。
  • 主な原因: マグマの移動(貫入)、地下深部の流体の移動、断層の滑りなどが挙げられる。
  • 期間: 数週間から数ヶ月、場合によっては数年にわたって継続することがある。
  • 特徴: 震源が非常に浅い場合、規模が小さくても強い衝撃や爆発音として感じられることがある。

群発地震の発生メカニズムと要因

群発地震を引き起こす要因は多岐にわたります。代表的なのがマグマの貫入です。地下でマグマが上昇し、周囲の岩盤を押し広げることで応力が変化し、連続的な地震が発生します。また、地下の流体(水やガス)が圧力を持って断層に注入されることで、摩擦が軽減され、小規模な破壊が連鎖的に起こるケースも確認されています。

例えば、アメリカ・カリフォルニア州のカフイラで2016年から2019年にかけて発生した群発地震では、地下の流体貯留層から断層帯へ流体が注入されたことが原因であると分析されました。これにより、震源が深部から浅部へと移動しながら地震が継続したことが判明しています。

世界各地で観測された主要な事例

日本における事例

日本で最も詳細に記録された事例の一つが、長野県松代町で1965年から1967年にかけて発生した松代群発地震です。この期間に約100万回の地震が記録され、ピーク時には2分半に1回の割合で揺れを感じるほど激しい活動となりました。この現象は、前年の新潟地震の影響で誘発されたマグマの上昇が原因と考えられています。

また、能登半島などでも長期的な群発地震活動が観測されており、地殻内部の複雑な変動を示しています。

Noto earthquake swarm (2020–2024)

欧州における事例

アイスランドのレイキャネス半島では、2023年10月からマグマの貫入による激しい群発地震が発生しました。2万回を超える地震が記録され、最大マグニチュードは5.2に達しました。この活動に伴い、地表に大きな亀裂が生じ、最終的に2023年12月からは噴火へと発展しました。

フランスのユバイ渓谷では、2003年から2015年にかけて断続的に群発地震が発生しています。特に2003年から2004年にかけては1万6,000回以上のイベントが検出されました。

Chronology of the 2003–2004 Ubaye earthquake swarm Complete caption Each red bar shows the number of earthquakes daily detected (left-handside scale). More than 16,000 earthquakes were detected within 2 years. White circles show the magnitude of ~1,400 earthquakes which could be located (right-handside magnitude scale). Sismalp (the local monitoring network) was not able to locate all events below magnitude 1, which explains why very-small-magnitude events are seemingly lacking. (According to the Gutenberg–Richter law, M0 events are approximately 10 times more numerous than M1 events.)[1]
Ubaye earthquake swarmsComplete caption White: 2003–2004 swarm; pink: 2012–2015 swarm up to 2014-04-06; red: earthquakes as of 2014-04-07; pink and red lined up in white: epicentres of 2012-02-26 earthquake (M=4.3) and 2014-04-07 earthquake (M=4.8); brown: latest 20 earthquakes in July 2015, just before the map was drawn. Symbol size directly proportional to magnitude. Blue triangles show the 3 nearest seismic stations.[6]

その他の地域での事例

フィリピンのミンダナオ島やバタンガス州、インドのダハヌなどでも群発地震が報告されています。特にダハヌの事例では、マグニチュードが小さくても震源が極めて浅かったため、致命的な被害が出たことが記録されています。

北米のイエローストーンカルデラでは、頻繁に「速射砲」のような急激な群発地震が発生します。米国地質調査所(USGS)によれば、これらはマグマの移動よりも、既存の断層の滑りに起因する可能性が高いとされています。

Guy-Greenbrier earthquake swarm: map of epicentres for the period 2010-08-06 to 2011-03-01.[30]

群発地震のまとめ

群発地震は、単一の巨大地震とは異なるリスクと特性を持っています。以下に主要な事例の特性をまとめます。

世界的な群発地震の事例比較
地域・事例 主な原因 特徴的な現象
松代(日本) マグマの上昇 短期間に極めて多数(約100万回)の発生
レイキャネス(アイスランド) マグマ貫入 大規模な地盤沈下と噴火への移行
カフイラ(米国) 流体注入 震源が深部から浅部へ移動する挙動
ユバイ(フランス) 地殻変動 数年にわたる断続的な活動サイクル
トリカスタン(フランス) 超浅層の破壊 震源深さ200mという極めて浅い活動

Frequently Asked Questions

群発地震の後に大きな地震が来ることはありますか?

多くの場合、群発地震は小規模な地震の繰り返しで終わりますが、稀に巨大地震の前兆(前震)となるケースや、活動の過程で大きな地震を誘発することがあります。例えば、2013年のソロモン諸島地震では、大規模な群発地震が最終的にマグニチュード8.0の巨大地震へと発展しました。

マグニチュードが小さくても被害が出ることがあるのはなぜですか?

震源が地表に非常に近い「超浅層地震」の場合、エネルギーの絶対量は少なくても、地表付近で強い衝撃として伝わります。フランスのトリカスタンでは、震源深さ200mという極めて浅い場所で発生したため、低マグニチュードでも爆発音のような衝撃として感じられた事例があります。

群発地震と余震の違いは何ですか?

余震は、明確に定義できる「本震」の後に発生し、時間の経過とともに回数と規模が減少していく傾向があります。一方、群発地震には圧倒的な本震が存在せず、同程度の規模の地震が不規則に、あるいは増加しながら発生するのが特徴です。

火山活動がない場所でも群発地震は起こりますか?

はい、起こります。マグマ以外の要因、例えば地下深部の水やガスの移動(流体注入)や、プレート内部の断層の動きによっても群発地震は発生します。米国ネバダ州やフランスのアルプス地域などで、火山活動とは無関係な群発地震が観測されています。