地震が発生した際、ニュースで必ず耳にするのが「マグニチュード(M)」と「震度」という言葉です。多くの人が混同しがちですが、この二つは全く異なる概念を指しています。マグニチュードが地震そのもののエネルギー量を示す絶対的な指標であるのに対し、震度はある地点で実際にどの程度の揺れが観測されたかという相対的な強さを表します。
同じマグニチュードの地震であっても、場所によって揺れ方が異なるのはなぜでしょうか。そこには地質学的な要因や地震波の性質が深く関わっています。
Key Facts
- マグニチュードは地震の規模(エネルギー)を数値化したもので、1つの地震に対して1つの値が決まります。
- 震度は地点ごとの揺れの強さであり、地盤の柔らかさや震源からの距離によって変動します。
- 柔らかい地盤(埋立地など)では地震波が増幅され、震源から遠くても激しい揺れが発生することがあります。
- 地震波には、速度の速いP波、揺れの大きいS波、そして地表を伝わる表面波があり、それぞれ被害への影響が異なります。
- 現代の地震学では、目的や観測データに応じて多様なマグニチュード・スケール(リヒター、モーメント、体積波など)が使い分けられています。
揺れの強さを左右する地質学的要因
地震の被害規模は、単にマグニチュードの大きさだけで決まるわけではありません。特に重要なのが土壌条件です。例えば、厚い軟弱地盤や埋立地では、伝わってきた地震波が増幅される傾向にあります。また、堆積盆地のような構造では地震波が共振し、揺れが長時間続くことがあります。
1989年のロマ・プリータ地震では、震源から約100km離れていたサンフランシスコのマリーナ地区で甚大な被害が出ました。これは地盤の特性に加え、地殻の底で反射した地震波が特定の地域に集中したためと考えられています。

また、地殻の構造的な違いも影響します。北米のロッキー山脈以東のように地殻の性質が異なる地域では、比較的規模の小さい地震でも広範囲に揺れが伝わりやすい特性があります。実際、1895年のニューマドリッド地震(M6程度)は米国中部の大部分で感知されましたが、より強力な1994年のノースリッジ地震(M6.7)の感知範囲は南カリフォルニアに限定されていました。

地震波のメカニズムと観測
地震が発生すると、エネルギーは「地震波」として伝播します。まず最初に到達するのは、岩石を通り抜ける音のような速いP波(縦波)です。その数秒後に、横揺れを伴うS波(横波)が届きます。このP波とS波の到達時間差(初期微動継続時間)を測定することで、震源までの距離を推定することが可能です。
さらに、地表付近を伝わる表面波(ラブ波やレイリー波)は、特に震源が浅い地震(概ね深さ60km未満)において顕著に現れます。表面波はエネルギーが大きく、数分間にわたって揺れを継続させるため、甚大な被害をもたらす主因となります。

多様なマグニチュード・スケールの分類
地震の規模を測る方法は一つではありません。観測される波の種類や、対象とする地震の規模に応じて、以下のようなスケールが使い分けられています。
局地的なスケール(Local Magnitude)
最も有名なのがリヒタースケール(ML)です。これは特定の地震計の振幅に基づいた定義ですが、遠方の地震や非常に巨大な地震では数値が飽和し、正確に測定できない限界があります。日本で用いられる気象庁マグニチュード(MJMA)も、主に震源距離600km以内の浅い地震を対象とした局地的スケールの一種です。
体積波および表面波スケール
リヒタースケールの限界を克服するため、P波やS波を利用した体積波マグニチュード(mb)や、地表の大きな揺れを測定する表面波マグニチュード(Ms)が開発されました。これらはより遠方の地震や、より大規模な地震の測定に適しています。
エネルギーとモーメントに基づくスケール
現代の地球物理学で標準的に使われるのがモーメントマグニチュード(Mw)です。これは断層のズレの面積や岩石の硬さから直接エネルギーを算出するため、巨大地震でも数値が飽和せず、物理的に正確な規模を把握できます。また、旧ソ連圏で開発されたエネルギークラス(K-class)のように、放出エネルギーを対数で表す手法も存在します。
| スケール名称 | 主な測定対象・根拠 | 特徴 |
|---|---|---|
| リヒタースケール (ML) | 局地的な地震計の最大振幅 | 小〜中規模の近距離地震向け。巨大地震では飽和する。 |
| 体積波マグニチュード (mb) | P波・S波の振幅 | 遠方や深い震源の地震に適している。 |
| 表面波マグニチュード (Ms) | 地表を伝わる表面波の振幅 | 浅い震源の強力な地震の測定に有効。 |
| モーメントマグニチュード (Mw) | 断層の滑り量・面積・剛性 | 物理的根拠に基づき、巨大地震でも正確に測定可能。 |
| 気象庁マグニチュード (MJMA) | 国内の地動最大振幅 | 日本近海・国内の浅い地震に最適化されている。 |
地震の規模と実際の被害の乖離
マグニチュードが近くても、実際の被害に大きな差が出ることがあります。1997年にチリ沖で発生した2つの地震が好例です。一方はMw 6.9でしたがほとんど感知されず、もう一方はMw 7.1で震源がより深く、断層の種類も異なっていましたが、広範囲で甚大な被害をもたらしました。
この事例は、モーメントマグニチュード(Mw)や表面波マグニチュード(Ms)だけでは、地表での揺れの強さや被害状況を完全には説明できないことを示しています。被害の予測には、体積波マグニチュード(mb)や放出エネルギー(Me)などの指標を組み合わせることが重要です。
Frequently Asked Questions
マグニチュードが同じなのに、場所によって震度が違うのはなぜですか?
震度は「その地点でどれだけ揺れたか」を示すため、震源からの距離や地盤の状態で変わります。特に柔らかい地盤では地震波が増幅されるため、震源から遠くても震度が大きくなることがあります。
リヒタースケールとモーメントマグニチュードは何が違いますか?
リヒタースケールは地震計の振幅から計算する簡易的な手法で、非常に大きな地震では数値が頭打ちになる性質があります。一方、モーメントマグニチュードは断層の物理的なズレに基づいているため、巨大地震の規模を正確に測定できます。
P波とS波のどちらが危険ですか?
一般的にS波の方が危険です。P波は速度が速く最初に届きますが、揺れは小さい傾向にあります。後から届くS波は速度こそ遅いものの、大きな横揺れを伴い、建物へのダメージが大きくなります。
表面波とは何ですか?
地球の内部ではなく、地表付近のみを伝わる地震波のことです。震源が浅い地震で強く現れ、周期が長く大きな振幅を持つため、激しい揺れと長い継続時間を引き起こします。
気象庁マグニチュード(MJMA)は世界共通の指標ですか?
いいえ、MJMAは日本国内の観測網と地質条件に合わせて調整された局地的なスケールです。世界的に共通して使われる物理的な指標としては、モーメントマグニチュード(Mw)が主流となっています。
References
- , p. 37. The relationship between magnitude and the energy released is complicated. See §3.1.2.5 and §3.3.3 for details.
- , §3.1.2.1.
- , p. 164 et seq..
- , pp. 170–171.
- , p. 170.
- See , Chapters 2 and 3, for a very readable explanation of these waves and their interpretation. J. R. Kayal's description of seismic waves can be found here.
- See , §1.4, pp. 20–21, for a short explanation, or MNSOP-2 for a technical description.
- , p. 1.
- , p. 18.
- IASPEI , pp. 2–3.
📸 フォトギャラリー


