テーブルトークRPGの金字塔『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』の世界観において、宇宙は単一の世界ではなく、プレーン(次元平面)と呼ばれる多様な領域が重なり合う「多元宇宙(マルチバース)」として構成されています。これらの領域は、物理的な法則や道徳的な属性、さらには構成元素によって異なり、冒険者たちは魔法や特殊な手段を用いてこれらの境界を越えて旅をします。
D&Dのコスモロジー(宇宙論)は、ゲームの版を重ねるごとに進化し、時には大胆な再構築が行われてきました。初期の断片的なアイデアから、体系化された「グレート・ホイール」モデル、そして実験的な「ワールド・アクシス」モデルへと変遷し、現在の第5版ではそれらのエッセンスを統合した形へと回帰しています。
Key Facts
- グレート・ホイール:D&Dの伝統的な宇宙モデルで、物質面を中心に内側平面と外側平面が配置される構造。
- ワールド・アクシス:第4版で導入された簡略化されたモデルで、世界軸を中心に平行平面などが配置される。
- 内側平面:元素(火、水、土、風)や正・負のエネルギーで構成される領域。
- 外側平面:神々や悪魔が住まい、秩序・混沌、善・悪といった属性(アライメント)に基づいた領域。
- 平行平面:物質面の鏡合わせのような存在である「フェイワイルド」と「シャドウフェル」。
プレーン概念の歴史的変遷
D&Dにおける次元の概念が初めて提示されたのは1977年の雑誌『The Dragon』でした。創始者のゲイリー・ガイギャックスは、ここで16の外側平面について言及しています。その後、1978年の『Player's Handbook』や1980年の『Deities & Demigods』を通じて、これらの概念は徐々に洗練されていきました。
初期の段階では、全体を統括する厳格な設計図はなく、断片的な図解や設定が追加される形式でした。しかし、1987年の『Manual of the Planes』において、ジェフ・グラブらによって「物質面」「エーテル面」「アストラル面」「内側平面」「外側平面」という5つの基本領域に体系化されました。この構造は、現代の第5版に至るまで、基本骨格として受け継がれています。

1990年代には、設定の拡張が進みました。『Spelljammer』の導入により、異なるキャンペーン設定(世界)間の移動が可能になり、さらに1994年には『Planescape』設定が登場します。ここでは「シギル」という都市が多元宇宙のハブとなり、より複雑で洗練された次元間移動の枠組みが提供されました。

大きな転換点は第4版での「ワールド・アクシス(世界軸)」モデルの採用です。ここでは従来の複雑な構造が簡略化され、6つの主要なプレーンに再編されました。しかし、第5版では再び伝統的な「グレート・ホイール」モデルへと回帰しつつ、第4版で人気を博した平行平面の概念を組み込むという折衷案が採られています。
![The "World Axis" model of the planes, as described in the 4th edition Manual of the Planes[41]](/images/16/13/1613d433e735fe27ede477f3d76732606a6686567ecde2ff7efc88f26387c754.jpg)
主要なプレーンの構造と特徴
内側平面と物質面
物質面(Material Plane)は、多くの物語の舞台となる物理的な世界です。これに付随して、物質面を透過して移動できるエーテル面(Ethereal Plane)が存在します。また、元素の純粋なエネルギーが渦巻く内側平面があり、そこには火、水、土、風の各領域が含まれます。
外側平面と属性
外側平面は、宇宙の道徳的・哲学的な極端さを体現した場所です。例えば、至高の善が支配する「マウント・セレスティア」や、底なしの悪意が渦巻く「アビス(深淵)」などが存在します。これらの平面は、秩序(Lawful)から混沌(Chaotic)、善(Good)から悪(Evil)という軸に沿って配置されています。
平行平面:フェイワイルドとシャドウフェル
第4版で導入され、第5版でも重要な役割を果たすのが平行平面です。フェイワイルド(Feywild)は、自然と魔法が極限まで強調された幻想的な鏡像世界であり、強力なアーチフェイたちが独自の領地(ドメイン)を支配しています。対照的に、シャドウフェル(Shadowfell)は、絶望と衰退が支配する暗い鏡像世界です。
多元宇宙の要約テーブル
| 分類 | 代表的なプレーン | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 物質面 | 各種キャンペーン世界 | 物理法則が支配する冒険の主舞台 |
| 内側平面 | 火・水・土・風の平面 | 純粋な元素エネルギーで構成される |
| 外側平面 | アビス、ナイン・ヘルズ | 神々や悪魔の住処であり、属性が物理的に影響する |
| 平行平面 | フェイワイルド、シャドウフェル | 物質面の魔法的・精神的な反射世界 |
| 遷移平面 | アストラル面、エーテル面 | 他のプレーンへ移動するための通路となる領域 |
次元間移動の手段
多元宇宙を旅する方法は多岐にわたります。魔法のポータルを利用するほか、特定の川を辿る方法もあります。特にステュクス川(River Styx)は、下層平面を繋ぐ重要な水路であり、この川に触れた者は過去の記憶を失うという危険を伴います。安全な航行には、渡し守カロンの船を利用することが推奨されます。
Frequently Asked Questions
グレート・ホイールとワールド・アクシスの違いは何ですか?
グレート・ホイールは、物質面を中心に内側・外側平面が円環状に配置される伝統的な構造です。一方、ワールド・アクシスは第4版で導入されたモデルで、より少数の主要プレーンに整理され、世界軸を中心とした垂直的な構造に近い設計になっています。
フェイワイルドにはどのような場所がありますか?
星明かりの街アストラザリアンや、秋の街ミスレンダインなど、幻想的な都市や地域が存在します。また、地下世界である「フェイダーク」という領域も含まれています。
アストラル平面とはどのような場所ですか?
多元宇宙のあらゆる場所を繋ぐ銀色の海のような領域です。物理的な身体よりも精神的な存在が重要となる場所であり、他のプレーンへの旅の経路として利用されます。
ステュクス川を渡るリスクは何ですか?
最大のリスクは記憶喪失です。川の水に触れると、その者の過去の人生に関する記憶が即座に消去されてしまいます。そのため、多くの旅人はカロンなどの渡し守に料金を支払って船で移動します。
第5版ではどのコスモロジーが採用されていますか?
基本的には伝統的な「グレート・ホイール」モデルに戻っていますが、第4版の「フェイワイルド」や「シャドウフェル」といった平行平面の概念を統合し、より豊かな世界観を構築しています。
References
- Lord Winfield (September–October 1997). "Planescape – un bon plan". (in French). 5: 46–47. Retrieved December 30, 2021.
- Carbonell, Curtis D. (2019). Dread Trident: Tabletop Role-Playing Games and the Modern Fantastic. Liverpool. . 1129971339.
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- (July 1977). "Planes: The Concepts of Spatial, Temporal and Physical Relationships in D&D". . Vol. I, no. 8. . p. 4.
- (1978). Players Handbook (1st ed.). TSR. .
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- "Planescape Torment Preview". August 6, 2003. Archived from the original on August 6, 2003.
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![The "World Axis" model of the planes, as described in the 4th edition Manual of the Planes[41]](/images/16/13/1613d433e735fe27ede477f3d76732606a6686567ecde2ff7efc88f26387c754.jpg)