テーブルトークRPGの金字塔であるダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)の最大の魅力は、プレイヤーが冒険を繰り広げる「舞台」となるキャンペーン設定の豊富さにあります。単なるルールの枠組みを超え、独自の歴史、神話、地理を持つこれらの世界は、ファンタジーの定義を広げ続けてきました。
初期のシンプルな設定から、ビデオゲームやカードゲームとのクロスオーバー、さらには現代的な価値観を反映した再構築まで、D&Dが歩んできた世界構築の軌跡を辿ります。
Key Facts
- 最古の設定: デイヴ・アーネソンが1971年に作成した「ブラックムーア」が、D&D誕生以前から存在していた最古の舞台である。
- ジャンルの多様性: 王道ファンタジーだけでなく、ゴシックホラー(レイヴンロフト)やポスト・アポカリプス(ダークサン)など多岐にわたる。
- メディア展開: 『マジック:ザ・ギャザリング』の次元や、『ディアブロII』などのビデオゲーム世界が公式に導入されている。
- 現代的アプローチ: 近年の設定(エグザンドリアなど)では、従来のファンタジーの定石を打破する設計が取り入れられている。
D&D世界構築の原点と古典的設定
D&Dの物語の舞台は、ゲームの誕生とほぼ同時に始まりました。特筆すべきはブラックムーアです。これは1971年にデイヴ・アーネソンが「チェインメイル」のルールを用いて個人的なゲームのために作成したもので、後のグレイホークやD&D本体よりも先に存在していました。その後、1975年にサプリメントとして出版され、さらにはMMRPG(大規模多人数参加型ロールプレイングゲーム)としての展開も見せました。
また、1980年代に入ると、より特化したテーマを持つ世界が登場します。その代表格がレイヴンロフトです。トレイシー&ローラ・ヒックマン夫妻によって生み出されたこの世界は、ゴシックホラーをテーマにしており、1983年にモジュールとして初登場しました。その後、2ndエディションでは「恐怖の領域」として拡張され、小説化もされるなど、D&Dにおけるホラー要素の象徴となりました。
2016年の第5版における『ストラードの呪い』や、2021年の『ヴァン・リヒテンのレイヴンロフトガイド』では、単なるゴシックホラーに留まらず、多様なホラージャンルを取り入れるとともに、過去の差別的な表現を排除するなどの現代的なアップデートが行われています。
クロスオーバーと外部IPの導入
ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社は、自社が展開する他の知的財産(IP)をD&Dの世界に融合させる試みを積極的に行っています。その筆頭がマジック:ザ・ギャザリング(MtG)の次元です。ジェームズ・ワイアット主導の「Plane Shift」シリーズを通じて、アモンケットやゼニカーなどの次元がPDF形式で提供されました。
特にラヴニカは高い人気を博し、2018年にはハードカバーの設定ガイド本が刊行されました。ラヴニカは惑星全体を一つの都市が覆い、10のギルドが支配するという極めてユニークな高魔術世界であり、スラヴ的な雰囲気も取り入れられています。他にもテロスやストリクスヘイヴンといったMtGの世界がD&D向けに最適化されて提供されています。
また、ビデオゲームとの連携も見られ、ディアブロIIの世界がAD&D 2ndおよび3rdエディション向けにアダプテーションされました。これらはボックスセットやアドベンチャー、ミニチュアとして展開され、デジタルゲームの体験をテーブルトップへ持ち込む試みとなりました。
現代のトレンドと革新的な世界観
近年のD&Dでは、コミュニティ主導の物語が公式設定に昇華される事例が現れています。その象徴がエグザンドリアです。人気配信番組『Critical Role』の舞台であるこの世界は、2019年に初めて公式出版物で言及され、2020年には『ワイルドマウント探索ガイド』の発売により正式にD&Dの世界となりました。
特にワイルドマウント地方は、15世紀のロシアやプロイセン、13世紀のルーマニアといった東欧の歴史的影響を受けて設計されており、時間と空間を操る「デュナマンシー」という独自の魔法体系が導入されています。こうしたアプローチは、従来のファンタジーの型を打ち破るものとして高く評価されています。
一方で、ロクガンのように、外部ライセンス(Legend of the Five Rings)との提携により提供された設定もありますが、権利関係の変化に伴い、現在は公式サポートが終了しているケースもあります。
キャンペーン設定の変遷まとめ
| 設定名 | 主な特徴・テーマ | 特記事項 |
|---|---|---|
| ブラックムーア | D&Dの原点 | 1971年に作成された最古の設定 |
| レイヴンロフト | ゴシックホラー | 恐怖の領域と不滅の監獄 |
| ラヴニカ | 都市惑星・ギルド政治 | MtGからのクロスオーバー |
| エグザンドリア | 東欧風ファンタジー | Critical Roleから公式化 |
| フォーゴトン・レルム | 王道ハイファンタジー | 最も普及している設定の一つ |
Frequently Asked Questions
D&Dで最も古いキャンペーン設定は何ですか?
デイヴ・アーネソンが1971年に作成した「ブラックムーア」です。これはD&Dというゲーム自体が成立する前から、チェインメイルのルールを用いて運用されていました。
マジック:ザ・ギャザリングの世界で遊ぶことはできますか?
はい、可能です。「Plane Shift」シリーズや『ギルドマスターズ・ガイド・トゥ・ラヴニカ』などの書籍を通じて、MtGの次元をD&Dの舞台として利用するためのルールと設定が提供されています。
エグザンドリア設定のユニークな点はどこにありますか?
東欧の歴史(ロシアやプロイセンなど)から強い影響を受けている点や、「デュナマンシー」という時空操作魔法が存在する点など、伝統的なファンタジーの枠にとらわれない設計が特徴です。
レイヴンロフトの設定は時代とともに変わりましたか?
はい。初期のゴシックホラー中心の構成から、最新の『ヴァン・リヒテンのレイヴンロフトガイド』では、より多様なホラージャンルを取り入れ、差別的な要素を排除するなど、現代的な価値観に合わせて再構築されています。
ロクガンの設定は現在も利用可能ですか?
かつては公式のサンプル設定として提供されていましたが、現在はライセンス権を持つAEG社が独自のシステムに集中しているため、D&Dとしての公式サポートは終了しています。
References
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