Discoverer 36:冷戦期を象徴する光学偵察衛星の成功例
冷戦時代の宇宙開発において、機密情報の収集は国家安全保障の要でした。その中心的な役割を担ったのが、アメリカ合衆国が運用した光学偵察衛星プログラムです。中でもDiscoverer 36(別名:Corona 9029)は、KH-3 Coronaシリーズの中でも特筆すべき成果を上げたミッションとして知られています。
この衛星は、KH-3シリーズにおいて最後から2番目に打ち上げられた機体であり、同シリーズにおける最終的な成功例にして、プログラム全体を通じて最も優れた成果を収めたミッションとなりました。
主要な事実(Key Facts)
- ミッション目的: 光学的な偵察による情報収集。
- 運用主体: 米国空軍および国家偵察局(NRO)。
- 打ち上げ日: 1961年12月12日。
- 最大解像度: 地上の物体を最大7.6メートルの精度で識別可能。
- 特筆事項: 世界初の業アマチュア無線衛星「OSCAR 1」を同時に搭載して打ち上げられた。
打ち上げと軌道投入の経緯
1961年12月12日20時40分(UTC)、ヴァンデンバーグ空軍基地の第75-3-4発射複合施設から、Thor DM-21 Agena-BロケットによってDiscoverer 36が宇宙へと送り出されました。

軌道投入に成功したこの衛星には、ハーバード指定番号「1961 Alpha Kappa 1」が割り当てられました。また、この打ち上げは軍事目的だけでなく、民間への貢献も含まれており、史上初の業アマチュア無線衛星であるOSCAR 1が同ロケットに搭載されていたことも歴史的なポイントです。
技術仕様と偵察メカニズム
Discoverer 36は、ロッキード社が製造したKH-3 Corona型の衛星で、バス部分にAgena-Bを採用していました。機体重量は1,150kgに及び、低地球軌道(LEO)を周回するように設計されていました。
偵察の核心となるのは、焦点距離61cmのパノラマカメラです。撮影された画像は70mmのフィルムに記録され、最大7.6メートルの解像度を実現しました。撮影後のフィルム回収には「衛星回収機(SRV)」という特殊なカプセルが用いられ、本ミッションではSRV-525が使用されました。打ち上げから4日後、このカプセルが地球に帰還したことで、貴重な偵察データの回収に成功しました。
軌道パラメータの詳細
衛星は地球中心の座標系に基づき、以下の軌道特性を持って運用されました。
- 近地点高度: 223km
- 遠地点高度: 445km
- 軌道傾斜角: 81.1度
- 公転周期: 91.2分
ミッションの終焉
フィルムの回収という主目的を完遂した後、Discoverer 36はそのまま軌道上に留まりました。その後、大気圏への再突入を経て、1962年3月8日に完全に消滅(デケイ)しました。
Discoverer 36 仕様まとめ
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 衛星タイプ | KH-3 Corona |
| 製造元 | ロッキード |
| 打ち上げ重量 | 1,150 kg |
| 使用ロケット | Thor DM-21 Agena-B 325 |
| ミッション期間 | 4日間(フィルム回収まで) |
| 解像度 | 最大 7.6 m |
Frequently Asked Questions
Discoverer 36の主な目的は何でしたか?
米空軍と国家偵察局(NRO)による光学偵察であり、高解像度カメラを用いて地上の情報を撮影し、フィルムとして回収することが目的でした。
撮影した画像はどのようにして地球に戻されたのですか?
撮影に使用した70mmフィルムを「衛星回収機(SRV-525)」という専用のカプセルに格納し、宇宙から地球へ投下して回収する方式が採られました。
このミッションの技術的な成功点はどこにありますか?
KH-3 Coronaシリーズの中で最も成功したミッションとされており、最大7.6メートルという高い解像度での撮影を実現した点にあります。
OSCAR 1との関係は何ですか?
OSCAR 1は世界初の業アマチュア無線衛星であり、Discoverer 36と同じThor DM-21 Agena-Bロケットに搭載されて同時に打ち上げられました。
衛星はいつまで宇宙に存在していましたか?
1961年12月に打ち上げられた後、軌道を周回し続け、1962年3月8日に大気圏に再突入して消滅しました。